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2.帯状疱疹の検査


    監修:
    • まりこの皮フ科 院長/東京慈恵会医科大学皮膚科 客員教授 本田 まりこ 先生

    帯状疱疹は、典型例では臨床症状から比較的容易に診断できます。しかし、小水疱の発現範囲が限定されていたり、紅斑が帯状に分布していても小水疱の形成が認められない場合など、鑑別に迷うケースもあります。
    ここでは、臨床所見だけでは帯状疱疹と他疾患との区別が困難な場合に、鑑別診断として行う検査についてご紹介します。
    帯状疱疹の検査は、ウイルスに感染した細胞あるいはウイルスを検出する検査と、血清抗体を測定する検査の2種類に分けられます。
    それぞれの検査の特徴について解説します。

    ウイルスに感染した細胞あるいはウイルスを検出する検査

    概要 特徴
    病理学的検査 Tzanck試験
    • ウイルス性疾患と非ウイルス性疾患との鑑別に有用である。
    • 綿棒や鑷子せっしを用いて小水疱の水疱蓋、水疱底およびびらん面などから採取した細胞をスライド上に塗抹し、メタノール固定後にギムザ染色する。顕微鏡で球状に変性した角化細胞や、それらが癒合した巨細胞を確認する(図1)。
    図1:ギムザ染色:ウイルス性巨細胞
    記事/インライン画像
    図 ギムザ染色:ウイルス性巨細胞
    写真提供: まりこの皮フ科 院長/東京慈恵会医科大学皮膚科 客員教授 本田 まりこ 先生
    • 保険適用がある。
    • 簡便で、数十分程度の所要時間で結果判定が可能であるため、外来での迅速診断に適している。
    • 水疱を形成する接触皮膚炎との鑑別に有用。
    • 単純ヘルペスとの鑑別はできない。
    ウイルス抗原検査 蛍光抗体法(FA法)
    • 蛍光色素で標識した特異抗体を用いて蛍光顕微鏡下で観察する方法。
    • Tzanck試験と同様に、採取した細胞をスライド上に塗抹し、アセトン固定後に各ヘルペスウイルス(HSV-1、HSV-2、VZV)に特異的なモノクローナル抗体を用いて各ウイルス感染細胞を検出する(図2)。
    図2:蛍光抗体法:ウイルス性巨細胞
    記事/インライン画像
    図 蛍光抗体法:ウイルス性巨細胞
    写真提供: まりこの皮フ科 院長/東京慈恵会医科大学皮膚科 客員教授 本田 まりこ 先生
    FA:fluorescent antibody
    • 保険適用がある。
    • 蛍光顕微鏡があれば短時間(30分程度)で判定可能。ただし、外部委託の場合は数日を要する。
    • 単純ヘルペスとの鑑別に適している。
    • 検体の採取量が少ないと偽陰性になることがある。
    イムノクロマト法
    • 抗原抗体反応を利用した迅速検査法。
    • 検体に含まれるVZV、HSV抗原が標識された抗体(標識抗体)と結合して複合体(標識抗体-抗原)を形成し、さらに判定部にライン状に固定された抗体(捕捉抗体)と結合してサンドイッチ複合体(標識抗体-抗原-捕捉抗体)を形成する。これにより、判定ラインが赤~赤紫色を呈し、検体中のVZV、HSV抗原の有無が判定できる。
    • 保険適用(帯状疱疹のVZV抗原検出、角膜ヘルペス、性器ヘルペスのHSV抗原検出)がある。
    • キットが普及しており、操作が簡便で手間を要さない。
    • 短時間(約10~15分)で判定できる。
    • 特殊な機器などを必要とせず、いつでもどこでも検査可能であり、目視で判定できる。
    • 検査コストの負担が比較的少ない。
    ウイルスDNA検査 PCR法
    • 皮膚や水疱液、血液、髄液などから抽出したDNAからVZVのDNAを検出する方法。
    • 目的のDNA領域を挟む1対のプライマーを用いたDNAポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、目的のDNA領域を増幅する。
    • リアルタイムPCR法は、PCRによる増幅量を経時的に測定することができる。
    PCR:polymerase chain reaction
    • 抗ヘルペスウイルス薬による治療効果などを経時的にモニタリングする際に有用。
    • 診断的有用性は高いが、保険適用はない※1
    • 大学病院など施行できる施設が限られる。
    • 検出感度が高いため、コンタミネーションによる偽陽性に注意が必要である。
    • ※1 免疫不全状態であってHSV感染症またはVZV感染症が強く疑われる患者を対象としてリアルタイムPCR法により測定した場合に、一連として1回のみ算定できる
    LAMP法
    • 皮膚や水疱液、血液、髄液などから抽出したDNAからVZVのDNAを検出する方法。
    • 目的のDNA領域の6つの領域に対して4種類のプライマーを設計し、鎖置換反応を利用して目的のDNA領域を増幅する。
    • PCR法では段階に応じて温度変更が必要であるのに対して、LAMP法は一定温度で反応が進むため、特別な装置を要さない。
    • 迅速にウイルスを検出できるとともに、ウイルスDNA量を定量できる。
    LAMP:loop-mediated isothermal amplification

    血清抗体を測定する検査

    概要 特徴
    抗体価測定※2 補体結合反応(CF法)
    • 免疫複合体(抗原と抗体の複合体)に補体が結合する性質を利用して血清中の抗VZV抗体を測定する方法。
    • 補体結合性抗体は比較的早期に消失するため、感染から数年経つと判定できないことが多い。
    • 感度:低い
    • 特異度:低い
    CF:complement fixation
    • 以下の検査法は保険適用がある。
      • CF法
      • NT法
      • EIA法
    • 測定結果が得られるまでに2週間以上かかる。
    • 治療方針の決定には適さず、VZV感染歴の確認に用いられることが多い。
    中和反応(NT法)
    • ウイルスがその抗体と反応すると感染性が失われる(中和)ことを利用した抗体測定法。
    • 感染後長期間検出される。
    • 組織培養が必要なため、手技に熟練を要するとともに、測定に時間がかかる。
    • 感度:高い
    • 特異度:高い
    NT:neutralization test
    蛍光抗体法(FA法)
    • ウイルス(抗原)と蛍光標識した抗体を用い、蛍光顕微鏡で観察する方法。
    • IgMとIgG抗体を分けて測定することができる。
    • タンパク質レベルで相同性の高いウイルス間の交差反応や非特異的な反応に注意が必要。
    • 感度:低い(ある程度の細胞量を確保しなければ偽陰性となる場合がある)
    • 特異度:低い
    酵素免疫測定法(EIA法、ELISA法)
    • ウイルス(抗原)と酵素で標識した抗体を用い、酵素反応によりウイルス抗体を測定する方法。
    • IgMとIgG抗体を分けて測定することができる。
    • 測定結果が吸光度で表されるため、抗体価の有意上昇の解釈が難しい。
    • 感度:高い
    • 特異度:高い
    • ELISA法は固相化したEIA法。
    EIA:enzyme immunoassay
    ELISA:enzyme-linked immunosorbent assay
    • ※2 血清中の抗VZV抗体価を測定する方法。急性期(発病後5日以内)と回復期(2週間後)の抗体価を測定し、比較する。急性期に陰性であった抗VZV抗体が、回復期に陽性化(抗体陽転)または急性期から回復期にかけて抗体価が有意に上昇(4倍以上)した場合、皮膚および神経症状は帯状疱疹に伴うものと考えられる。
    (2019年3月現在)

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