経皮吸収型製剤の皮膚症状対策
- 監修:
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- 東京女子医科大学 名誉教授 川島 眞 先生
スキンケア
経皮吸収型製剤を使用する際には、まず皮膚の状態を評価することが大切です。皮膚が乾燥していると、紅斑などの皮膚症状が生じやすくなるため、乾燥がみられるときには保湿剤を用いてできるだけ正常な皮膚に補正することがより効果的な治療につながります。特に高齢者は加齢により皮膚が乾燥しやすい状態になっているため注意が必要です。
スキンケアのポイント
- 保湿剤は乾燥している部位に、やさしくのばすように塗布します。
- 保湿剤を朝と夜(入浴後)の1日2回塗布すると効果的です。入浴後はできるだけ早く塗布すると効果的に保湿効果が得られます。


経皮吸収型製剤使用時の注意
- 1.経皮吸収型製剤の貼付や剥脱に伴う皮膚バリア機能の低下を防ぐため、同一部位に続けて貼らず、貼付部位をその都度変更し、剥がす時もやさしくゆっくり剥がすようにします。
記事/インライン画像
皮膚バリア機能は角層の層数に比例するため、同じ部位に経皮吸収型製剤を繰り返し貼ったり剥がしたりすると角層が剥がれて薄くなり、皮膚バリア機能が低下する。
- 2.皮膚症状のある部位に貼付すると、皮膚症状が悪化したり、薬物吸収に影響が出やすいため、避けるようにします。
- 3.高齢者の多くでは、乾燥皮膚を呈しており、皮膚バリア機能が低下しているため、経皮吸収型製剤を使用する場合は、皮膚の保湿対策などのスキンケアが大切です。
塩原 哲夫 ら:臨床に役立つ 経皮吸収型製剤を使いこなすためのQ&A, アルタ出版, 2012
治療
経皮吸収型製剤による紅斑などの皮膚症状の大半が刺激性接触皮膚炎と考えられ、一過性に生じるものがほとんどですが、皮膚症状が持続する場合には、ステロイド外用薬による治療が基本となります。アレルギー性接触皮膚炎の場合は、使用を中止する必要があります。

塩原 哲夫 ら:臨床に役立つ 経皮吸収型製剤を使いこなすためのQ&A, アルタ出版, 2012 より一部改変
皮脂欠乏症を伴う認知症患者に治療薬剤貼付1週間前から保湿剤を塗布する有用性の検討
保湿剤の塗布がリバスチグミン貼付剤使用時の皮膚症状軽減に有用であったことが報告されています。
試験概要
- 目的
- 皮脂欠乏症を伴う認知症患者への保湿剤塗布によるリバスチグミン貼付剤使用時の皮膚症状軽減への有用性を確認する。
- 対象
- 皮脂欠乏症を伴うアルツハイマー型認知症患者66例(男性17例、女性49例)
(平均年齢78.9歳、平均MMSE*15.0点) *MMSE:ミニメンタルステート検査 - 方法
- リバスチグミン貼付剤を使い始める最低1週間前から連日、原則として入浴後に推奨部位である背部・前胸部もしくは両腕などに十分量のヘパリン類似物質含有クリームや軟膏を塗布した。
結果
66例中63例(95.5%)は、ステロイド外用薬などの追加治療を要する皮膚症状もなく、リバスチグミン貼付剤を18mgまで増量が可能であり、全例6ヵ月以上治療を継続できた。
副作用
3例(4.5%)でそう痒感を伴う紅斑がみられた。そのうち2例はステロイド外用薬の使用で比較的速やかに症状が軽減し、1例はステロイド外用薬で軽減せず、使用を中止した。
まとめ
皮脂欠乏症を伴う認知症患者に、貼付開始の1週間前からの保湿剤の使用は、リバスチグミン貼付剤の継続使用のために有益な方法であると考えられます。また、保湿剤の継続使用により、皮膚バリア機能を高め、経皮吸収型製剤使用時の刺激性接触皮膚炎の発現を減らす可能性があります。
ヒルドイドソフト軟膏0.3%の副作用:総投与症例119例中、本剤による副作用は認められなかった。(承認時)
ヒルドイドクリーム0.3%の副作用:総投与症例2471例中23例(0.93%)に認められ、主なものは皮膚炎9件(0.36%)、そう痒8件(0.32%)、発赤5件(0.20%)、発疹4件(0.16%)、潮紅3件(0.12%)等であった。(効能追加時)
ヒルドイドローション0.3%の副作用:総投与症例121例中、本剤による副作用は認められなかった。(承認時)
ヒルドイドフォーム0.3%の副作用:総投与症例60例中、1例(1.7%)2件に認められ、そう痒症及び紅斑が各1件(1.7%)であった。(承認時)
工藤 千秋 ら:日本早期認知症学会誌, 6(1), 98-102, 2013
- 経皮吸収型製剤とスキンケア
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- 経皮吸収型製剤で起こる皮膚症状
- 経皮吸収型製剤の皮膚症状対策