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maruho square 皮膚科クリニックの在宅医療奮闘記:在宅患者訪問診療料って?


  • 小川皮フ科医院 院長 小川 純己 先生

はじめに コロナ禍が過ぎて

新型コロナウイルス感染症が5類に移行して、日常生活が徐々に戻りつつあります。しかし、決して感染症が撲滅したわけではなく、往診している施設でも、いまだに新型コロナウイルス感染が再燃を繰り返しています。医師仲間でも、ついにコロナに罹患したという話が後を絶ちません。皮膚科の往診では、新型コロナウイルス感染症患者の初診に対面することはあまりありません。大抵の場合、他の医療従事者が先鞭を付けてくれているので、その施設の発熱患者対応に従っています。診察の際は視診と触診が皮膚科の主な武器なので、感染を仲介しないよう細心の注意を払うようにしています。
さて、今回は、個人的に最大の難関だと思っている在宅患者訪問診療料について解説します。

在宅医療の診療報酬:基本構造

医科診療報酬点数表において、在宅医療の項目は、①在宅患者診療・指導料、②在宅療養指導管理料、③薬剤料、④特定保険医療材料料、からなっています。その他、初・再診料、診療情報提供料、検査や注射、処置などの費用が算定可能です。
なかでも、基本の報酬となるのが、往診料、在宅患者訪問診療料、在宅時医学総合管理料(在総管)、施設入居時等医学総合管理料(施設総管)です。在総管および施設総管は、患者に24時間、365日対応できる医療機関の体制を評価したものですが、皮膚科単独でこの条件を満たすことは困難であるため、今回は説明を省略します。
皮膚科在宅医療においては、患家で診療をした際に算定する往診料、在宅患者訪問診療料の理解が最重要となります。

訪問診療と往診の違い

過去の連載でも取り上げましたが、『往診』とは患家の求めに応じて予定外に訪問して診療する形態であり、『訪問診療』とは訪問日をあらかじめ決めて定期的に訪問して行う診療形態です。
平成30年(2018年)の診療報酬改定により、往診料の算定基準として、①往診の依頼があったか、②誰からの依頼か、③どのような理由(症状)で往診が必要だったか、④速やかに往診したかどうか、をカルテに記載することが重要になりました。
同様に、在宅患者訪問診療料の算定要件として、①患者さんまたは家族などの署名つき同意書、②訪問診療の計画、診療内容の要点、③診療時間、診療場所、をカルテに添付、記載する必要があります。ネットで公開されている同意書を参考にして、皮膚科で訪問診療をする際の同意書の雛型を作成してみました()。今回のものは、かかりつけ医から依頼があった際の訪問診療(後述)を想定しています。署名入りの同意書が算定要件ですが、内容については特に規定はありません。個人情報保護指針や、連帯保証人の責務、あるいは支払が滞納となった際の対応など、手術同意書や入院同意書のように、どこまで詰めておくかが難しいところです。

図. 訪問診療同意書
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図. 訪問診療同意書

在宅患者訪問診療料(I)の2とは?

在宅患者訪問診療料は1人の患者さんに対して、1つの医療機関しか算定できないのが原則です。初・再診料は同時算定不可です。かかりつけ医制度を見据えた医療抑制政策の一環だったのかもしれません。病院で複数科を初診で受診すると、2つ目の初診料は減額となり、3つ目以降は初診料を算定できないのと似ています。
従来は、先に他科で在宅患者訪問診療料が算定されていると、後から参入した科は在宅患者訪問診療料を算定できず、再診料のみとせざるを得ませんでした。初回は依頼に応じてということで、往診料+初診料を算定できます。往診には同一月に算定できる医療機関数に制限はありません。しかし、再診が必要となると、往診料は定義上、算定不可となります。また、在宅患者訪問診療料は他科で算定済みなので、こちらも算定不可となります。そうすると患家に赴いた過程は全く反映されず、訪問診療したのに再診料のみ算定という不合理な状態が生じていました。
そこで、平成30年度の改定で、2つ以上の医療機関が在宅患者訪問診療料を算定できるようになりました。これが在宅患者訪問診療料(I)の2です。(I)の1はメインで診ている医療機関が算定します。メインの医療機関[在総管、施設総管、がん医総(在宅がん医療総合診療料)の算定条件を満たす]から依頼を受けた医療機関は、在宅患者訪問診療料(I)の2が算定可能になりました(表1)。

表1. 往診、在宅患者訪問診療料の点数
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表1. 往診、在宅患者訪問診療料の点数

初診、再診料は算定不可(往診は初診、再診料算定可)

在宅患者訪問診療料(Ⅰ)の2の算定時のポイント

対応できない専門的な治療を求めて、かかりつけ医から依頼があるのがスタートになります。皮膚科、精神科、眼科、耳鼻科、泌尿器科疾患が想定されているようです。依頼の方法については、特に紹介状や診療情報提供書が必要などの要件は明示されていません。
一連の治療期間は、6カ月以内とされています。月に1回のみ算定可能です。褥瘡の悪化時などはこの回数では対応できません。現状では往診での対応もやむなしかもしれません。治療期間については、主治医と患者情報を共有し、以下のケースで医学的に必要と判断されれば、6カ月を超えて算定できるようになります。ア)その診療科の医師でなければ困難な場合、イ)既に診療した傷病やその関連疾患とは明らかに異なる傷病に対する診療をする場合。
往診と訪問診療(I)の1、(I)の2の違いを表にまとめてみました(表2)。

表2. 往診、在宅患者訪問診療料(Ⅰ)の違い

算定ポイント

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表2. 往診、在宅患者訪問診療料(Ⅰ)の違い

在宅患者訪問診療料(Ⅱ)とは?

在宅患者訪問診療料にはⅡという項目があり、名称的に(I)の2と勘違いしやすいです。Ⅱは老人ホームなどに併設された医療機関が、その施設の入居者に訪問診療を行った際に算定します。皮膚科開業医が算定する機会は少ないと思われます。
次回は同一建物居住者のルールについて取り上げます。

参考文献
  • 永井康徳, ほか: たんぽぽ先生から学ぶ在宅医療報酬算定ビギナーズ.改訂2版, 南山堂, 2022
  • 永井康徳: たんぽぽ先生の在宅報酬算定マニュアル, 第7版, 日経BP, 2022

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