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maruho square:在宅医療現場でよく遭遇する爪疾患(後編)


  • 医療法人社団 はやぶさ みずじゅんクリニック院長 水上 潤哉 先生

はじめに

前編ではまず足をみることの重要性を述べました。爪の変化が足の痛みの原因となり、在宅生活の質の低下につながってしまいます。後編では、よくみられる爪に関わる疾患とその治療について述べていきたいと思います。

爪囲炎

90歳代女性。自宅で足の指が赤くなっていることに息子さんが気づき、訪問診療医から当院へ紹介されました。左足母趾の爪甲の変形と周囲に暗赤色調の変化を認めます(図1)。少し触れるだけでも飛び上がるように痛がりました。爪囲炎は、通常黄色ブドウ球菌や連鎖球菌が原因となる皮膚の感染症で、怪我または慢性的な刺激などにより表面から感染が生じると考えられています。また、しばしば陥入爪を伴うことが多くあります。この症例では陥入爪を認め、その部位からの感染が考えられました。治療は、抗菌薬の内服や外用を行います。また明らかな膿を認める場合は、排膿処置を行います。

図1. 爪囲炎
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図1. 爪囲炎

皮膚真菌症と爪甲鉤彎症

加齢とともに、足白癬、爪白癬が増加することが知られています。在宅医療の現場では、内科を中心としたさまざまな診療科出身の医師が診療されていると思われますが、爪の変形は必ずしも爪白癬に特徴的な所見ではありません。図2のように母趾の爪甲が厚くなり、前方に鉤のように彎曲している状態の爪甲鉤彎症に対して、抗真菌薬を処方しても改善しないことが多くあります。皮膚科医は、爪の一部を切ることや削ることで検体を採取し、直接顕微鏡検査で糸状菌を確認することで、爪白癬の確定診断を行います。顕微鏡検査ができない先生には、採取した爪の一部を真菌培養同定検査に提出することで確定診断を行うことができます。治療前に検査をしっかりと行い、確定診断を行った上で、爪白癬の治療を行うことが重要です。また、同時に指の間の皮むけ(図3)がないかを調べることや、オムツなどを使用していて、臀部や陰部などに環状紅斑がみられる場合には、足白癬、股部白癬、体部白癬が疑われますので、足の爪や趾間を同時にみる習慣をつけるとよいでしょう。

図2. 爪白癬と爪甲鉤彎症
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図2. 爪白癬と爪甲鉤彎症
図3. 足白癬の合併
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図3. 足白癬の合併

陥入爪

80歳代女性。足が床につくと痛いとのことで往診依頼がありました。ワイヤー治療を行った後の画像ですが、母趾爪甲縁が食い込んでいるのが分かります(図4)。陥入爪の原因としては、きつい靴や歩き方の異常、深爪などがあります。軽度であれば、爪と皮膚の間に綿を入れることで痛みが軽減する場合があります。当院では、ワイヤー法を用いて走行の変形を矯正する治療を行っています(図5)。処置内容はとても簡便で出血なども伴いにくいため、慣れれば数分でできるようになります。陥入爪は、時に周囲に炎症を起こすことがあるので、陥入爪を繰り返している場合には、このような治療をした方がよいでしょう。

図4. 陥入爪
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図4. 陥入爪
図5. 陥入爪の治療具
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図5. 陥入爪の治療具

おわりに

足や爪の変化は目立たないため、在宅や介護現場ではあまり確認されていないことが多いようです。しかしながら、爪の小さな変化で、在宅生活の質の低下などが容易に起こります。簡便な器具を用いて、切除、削るなどの適切な処置を行うことで、さまざまな状態変化を予防・治療することが可能です(図6)。まず一度は爪をみてみることから始めましょう。発見した後に改善がない場合には、皮膚科への相談も重要となりますが、皮膚科医の往診はまだまだ少ないと思われます。各地域において、皮膚科医の往診だけではなく、オンライン診療や訪問看護との連携によるフットケアなど、今後は多様な診療のあり方が期待されます。

図6. フットケア処置器具
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図6. フットケア処置器具

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