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maruho square リスクマネジメント:薬剤師としてCOVID-19に立ち向かう 


  • 公立陶生病院 薬剤部 主任 梅村 拓巳 先生

COVID-19における薬剤師の役割

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)において薬剤師は薬の専門家としてはもちろんのこと、医療者として果たすべき役割も大きい。表1には国際薬剤師・薬学連合(International Pharmaceutical Federation;FIP)が提唱している「COVID-19 : GUIDELINES FOR PHARMACISTS AND THE PHARMACY WORKFORCE」よりCOVID-19パンデミック時における薬局薬剤師および病院薬剤師の責任と役割を示す。
病院薬剤師は主に施設内における他職種を含めた院内感染制御を推進するためのサポート、入院患者さんへの治療に関する支援なども役割とされている。一方で、薬局薬剤師は従来の薬物治療を継続している患者さんへのサポート、一般市民への情報提供や啓発活動などが役割とされており、ケアすべき人数だけで考えると薬局薬剤師のほうが重要な役割を担っていると考えられる。また、パンデミック時には医薬品の供給や薬学的ケアといった観点から病院薬剤師と薬局薬剤師は連携して各地域の課題に取り組むことが必要と考える。

表1:COVID-19パンデミック時における薬局薬剤師および病院薬剤師の責任と役割
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表1:COVID-19パンデミック時における薬局薬剤師および病院薬剤師の責任と役割
FIP
COVID-19 : GUIDELINES FOR PHARMACISTS AND THE PHARMACY WORKFORCEより一部翻訳、抜粋

COVID-19における薬物治療

図1には2021年1月10日時点においてCOVID-19の治療に対して使用される主な薬剤を示す(適応未承認薬も含める)。COVID-19に対してはさまざまな薬剤がin vitro での効果やスクリーニングにおいて候補薬剤として挙がっているが、我が国においてCOVID-19に対して承認された治療薬はレムデシビル、デキサメタゾンのみである。レムデシビルは主な副作用に肝機能障害、下痢、皮疹、腎機能障害などがあり、デキサメタゾンは高血糖や消化性潰瘍などに注意が必要である。さらにCOVID-19においては合併症として血栓塞栓症に関する報告もあり、未分画ヘパリンや直接作用型経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant;DOAC)などの治療薬も使用されることがある。また、COVID-19に対して適応承認はされていないものの、シクレソニドなどの吸入薬が使用されることもあることから適切な吸入手技の確認も必要となる。また、COVID-19に対して使用する薬剤、特に経口薬や吸入薬に関しては漫然とした長期使用とならないよう処方された薬剤に対して使用目的をきちんと把握して適正使用状況を確認することは非常に重要と考える。

図1:COVID-19治療に使用されることのある主な薬剤(適応未承認含む)
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図1:COVID-19治療に使用されることのある主な薬剤(適応未承認含む)

COVID-19における感染対策

COVID-19は主に接触感染や飛沫感染による伝播に注意が必要とされている。さらに換気の悪い密閉空間においてはマイクロ飛沫による伝播も起こることがあるため3つの密(密閉、密集、密接)を避けることが奨められている。
公立陶生病院(当院)では担当の薬剤師がCOVID-19患者に対して必要に応じてガウン、N95マスク、キャップ、ゴーグル(またはアイシールドなど)、手袋を装着して服薬指導を行っている(図2)。レムデシビルのような緊急で承認される薬剤においては日本人に対する副作用情報などが十分でない場合が多い。薬剤師による患者モニタリング時の気づきにより副作用が発見される症例もあることから、COVID-19患者においても適切な感染対策の下、薬剤が安全に継続使用できるようモニタリングすることが望ましいと考える。

図2:COVID-19入院患者に対する防護具着用と服薬指導の様子
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図2:COVID-19入院患者に対する防護具着用と服薬指導の様子

近隣調剤薬局への感染対策相談窓口の設置

病院などの医療施設においては感染防止対策加算などの算定があることから感染対策の専門知識を有する薬剤師が従事していることが多い。しかしながら、調剤薬局においてはそのような制度もなく適切な感染対策が行われているか筆者は疑問に思った。そこで当院では感染制御に従事している薬剤師が近隣の調剤薬局への感染対策相談窓口を設置して感染対策に関する質問に応対するとともに、必要に応じて直接訪問による指導を行っている。図3には窓口の設置における当院と近隣調剤薬局の関係を図式化したものおよび実際の対応例を示す。病院などにおいてはサイトビジットなど病院同士で感染対策について確認・指摘を定期的に行うことがある。実際に薬局に訪問指導を行うと、いくつか指摘点が挙がっていることから、病院-調剤薬局間または調剤薬局同士による感染対策の相互確認を行うことは感染対策の質を維持、向上させるうえでは重要な取り組みと考える。

図3:感染対策相談窓口設置における対応図と実際の対応事例
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図3. 感染対策相談窓口設置における対応図と実際の対応事例

さいごに

新型コロナウイルスに対するワクチンの動向も気になるが、ワクチンによる集団免疫の効果も一定の期間が必要といわれており、引き続き感染対策の徹底は必要である。薬剤師は医療人として常に最新の情報を取り入れ、患者さんや一般市民に正しい知見が得られるよう努めるべきである。

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