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maruho square リスクマネジメント:保険薬局における医薬品リスク管理計画(RMP:Risk Management Plan)に基づく服薬期間中の服薬管理の実践


  • 一般社団法人福岡市薬剤師会 福岡市薬剤師会薬局 七隈店 副薬局長 加藤 正久 先生

RMPの重要性

医薬品などは、医療上のリスクとベネフィットのバランスの上で使用されるものであり、医療関係者にはその適正な使用が常に求められ、薬剤師は、薬物療法の適正化を図るため信頼性の高い情報源を活用していく必要がある。PMDAは安全対策情報提供業務において、品質・有効性・安全性などに関する幅広い情報を提供している。医薬品リスク管理計画(RMP:Risk Management Plan)は、添付文書同様、PMDAから提供される安全対策に関する情報源の一つである。RMPは、厚生労働省・PMDAの指導のもと製造販売元である製薬企業により作成され、開発から市販後までの一連のリスク管理を一つにまとめた文書であり、製薬企業が、個々の製品ごとに重要なリスクを提示し、どう対策していくかを関係者で共有するために作成した文書といえる。

臨床におけるRMP利活用の現状

これまで、日本病院薬剤師会より審査報告書などとともにRMP利活用に関する提言がなされてきており、平成29年度のPMDAによる調査では、病院薬剤師のおよそ半数がRMPの内容をある程度理解しているとしている。一方、薬局薬剤師では内容をある程度理解しているとの回答は約17%であり、実際に薬局の業務に活用経験がある薬剤師は7%程度にとどまっている。一方で、令和2年度調剤報酬改定では、薬剤の服用に関する基本的な説明において、「必要に応じて、製造販売業者が作成する医薬品リスク管理計画(RMP:Risk Management Plan)に基づく患者向け資材を活用すること。」という表現が追加されており、RMP利活用が求められている。

RMPには何が書かれているか

RMPの記載内容は、RMP概要(図1)を参照すると把握しやすい。RMPは大きく、安全性検討事項、医薬品安全性監視計画、リスク最小化計画の3つに分かれている。添付文書では、報告された有害事象が重症度から分類され、網羅的に記載されるが、RMPの安全性検討事項には、その他の要素も総合的に加味し、重要と判断されたものが抽出され、重要な特定されたリスク、重要な潜在的リスク、重要な不足情報として記載されている。さらに、安全性検討事項に基づく、製薬企業の情報収集として医薬品安全性監視計画、情報提供としてリスク最小化計画が記載されている。

図1:RMP概要と項目の利活用方法
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図1. RMP概要と項目の利活用方法

RMPの利活用

実際に利活用できているのは安全性検討事項とリスク最小化計画である。安全性検討事項では、重要な特定されたリスクを、添付文書のリスク関連情報を読み取る際に重要なポイントに焦点を当てるツールとして使用している。重要な潜在的リスクや重要な不足情報は、薬局からの副作用報告を実施するための情報源として、使用方法を検討している。リスク最小化計画では、安全性検討事項に関する服薬指導を、患者さんにわかりやすく、より確実に実行するための情報源として、RMPに紐づけられた資材であるRMP資材(医療従事者向け・患者向け)が作成・公開されているため、追加のリスク最小化活動を参照し実際に使用した。製造販売業者より多くの患者指導用資材が作成される中、リスク管理上重要なものはどれで、どのような目的で作成されているかが明記された文書はRMPのみである。

ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌患者さんに対して処方された、アレクチニブ塩酸塩での利活用例を紹介する。RMP資材を確認し、安全性検討事項のうち重要な特定されたリスクである「間質性肺疾患」、「肝機能障害」、「好中球減少及び白血球減少」、の副作用に共通する初期症状が発熱であることに注目した。発熱を重点チェック項目とし(図2)、患者向けRMP資材を用いて毎日の体温測定を中心に服薬指導を行ったところ、対象患者さんから薬剤師へ発熱時の自発的な相談が得られた。外来がん化学療法は、入院環境下と異なり常に身近に医療従事者がいるわけではないため、RMPに基づく服薬指導により患者さん自身が重要なリスクに対する初期対応を理解できたことは、服薬期間中の服薬管理を行う上でとても重要といえる。また、同じ患者さんより胸の痛みについて聴取した際には、通常であればその適応症から原疾患由来の症状と考えてしまいがちだが、患者向けRMP資材の活用により、重要な潜在的リスクとして記載されている血栓塞栓症の可能性を検討し、日常生活における血栓症のリスクを上昇させないための生活指導を実施することもできた。

現在、当薬局では、セクキヌマブ(遺伝子組換え)など多くの自己注射製剤も在庫しているが、これらについての利活用を見据え、RMP・患者向けRMP資材の収集と整理(表1)を進めている。抗がん剤と比較して自己注射製剤は、患者向けRMP資材が副作用マネジメントよりも自己注射手技に関するものに集中している印象がある。追加のリスク最小化活動には安全性検討事項に設定された副作用のマネジメントに関しても記載されている。臨床現場での実行につなげるためにも、患者向けRMP資材の作成整備充実を期待している。

図2:アレクチニブ塩酸塩カプセル150mgの患者向けRMP資材から考える服薬指導計画
記事/インライン画像
図2. アレクチニブ塩酸塩カプセル150mgの患者向けRMP資材から考える服薬指導計画

表1:自己注射製剤のRMP資材一覧(一部抜粋)

名称 医療従事者向けRMP資材 患者向けRMP資材
アダリムマブ皮下注40mg
シリンジ
  • 適正使用ガイド
  • ガイドブック
アダリムマブ皮下注40mg
ペン
  • 適正使用ガイド
  • ガイドブック
アダリムマブ皮下注80mg
シリンジ
  • 適正使用ガイド
  • ガイドブック
アダリムマブ皮下注80mg
ペン
  • 適正使用ガイド
  • ガイドブック
アバタセプト皮下注125mg
オートインジェクター
  • 適正使用ガイド
  • 関節リウマチの治療を受ける方へ
  • 若年性特発性関節炎の治療を受ける方へ
  • 自己注射ガイドブック オートインジェクター
アバタセプト皮下注125mg
シリンジ
  • 適正使用ガイド
  • 関節リウマチの治療を受ける方へ
  • 若年性特発性関節炎の治療を受ける方へ
  • 自己注射ガイドブック(シリンジ)
イキセキズマブ皮下注80mg
オートインジェクター
  • 適正使用ガイド
  • 使い方クイックガイド
グラチラマー酢酸塩皮下注20mg
シリンジ
  • 自己注射指導者向けQ&A
  • 製品情報概要
  • 企業ホームページにおける副作用発現状況の公表(PDF以外の医療従事者向け資材一覧リンク)
  • 自己注射ガイド(自己注射指導者向け)
  • 患者さん向けQ&A
  • 自己注射ガイドDVD(の入手先案内文書)
  • 患者手帳
  • 自己注射ガイドブック
ゴリムマブ皮下注50mg
オートインジェクター
  • 適正使用ガイド
  • 自己注射のためのガイドブック(潰瘍性大腸炎)
  • 治療を始められる患者さんへ(潰瘍性大腸炎)
  • 自己注射のためのガイドブック(関節リウマチ)
  • 治療を始められる患者さんへ(関節リウマチ)
サリルマブ皮下注200mg
オートインジェクター
  • 適正使用ガイド
  • 自己注射ガイドブック(オートインジェクター)
セクキヌマブ皮下注150mg
シリンジ
  • 適正使用ガイド
  • ご自身で注射される方へ
  • ご自身で注射される方へ
  • 自己注射ガイドブック
セクキヌマブ皮下注150mg
ペン
  • 適正使用ガイド
  • ご自身で注射される方へ
  • ご自身で注射される方へ
  • 自己注射ガイドブック
デュピルマブ皮下注300mg
シリンジ
  • 適正使用ガイド
  • 自己注射のためのガイドブック
トシリズマブ皮下注162mg
オートインジェクター
  • 適正使用ガイド「関節リウマチ、多関節型若年性特発性関節炎」編
  • 適正使用ガイド「高安動脈炎、巨細胞性動脈炎」編
  • 自己注射/患者指導のための手引き
  • 治療を行っている患者さんへ「関節リウマチ、多関節型若年性特発性関節炎」
  • 治療を行っている患者さんへ「高安動脈炎、巨細胞性動脈炎」
  • 体調チェック表
  • 自己注射ガイドブック
ブロダルマブ皮下注210mg
シリンジ
  • 適正使用ガイド
  • 自己注射を行う患者さんとご家族の方々へ
  • 自己注射ガイドブック
  • 治療を受ける方へ
べリムマブ皮下注200mg
オートインジェクター
  • 適正使用ガイド
  • 安全に使用していただくために
  • 使い方皮下注射用(オートインジェクター)
  • 投与される患者さんとご家族の方へ
  • うつ病の症状について

RMPの利活用を進めていくために

RMPおよびRMP資材は、PMDAの情報検索ページにて公開されており、添付文書、インタビューフォーム、審査報告書などと同様に入手可能となっている。また、PMDAメディナビでも受動的にRMP関連情報が入手可能であるため、配信情報を逐次確認することで、RMPが作成されている品目を把握できる。さらに、マイ医薬品集作成サービスを利用すれば、登録医薬品の中でRMPが公開されているものが一覧できる。調剤において必要に応じて適切に活用できるようにその対象範囲を広げて準備を進めていきたい。

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