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ぬり薬の蘊蓄 第4章 ぬり薬を評価するために:皮膚薬物動態学的試験について


    代表的な皮膚薬物動態学的試験の方法

    前述のように、この試験は基本的に作用部位が角質層内または角質層より深部にある製剤に用いられます。角質層内に存在する薬物量から、生物学的同等性を評価します。具体的には、粘着性のテープで角質層を剥がし(テープストリッピング)、角質層に存在する薬物量を測定して、薬物の皮膚に対するバイオアベイラビリティ、すなわち投与量に対する皮膚中透過量を評価します。本試験における製剤の適用時間は、角質層中の薬物濃度が一定に達する時間またはそれより長い時間とします。
    角質層の厚さには個体差がありますが、この個体差を考慮しない方法と考慮する方法の2つの試験方法があります。

    1. 角質層の厚さの個体差を考慮しない場合

    10~20回の一定回数または経表皮水分喪失量(TEWL)(図1)が被験者間で同程度(例えば50g/m2h)となる時点まで粘着テープを用いた角質層の剥離を行い、角質層中の薬物量を測定します。この方法では、角質層の剥離量に個体差があることから、データにバラつきが生じるおそれがあります。

    図1:エバポリメーターによるTEWLの測定
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    図1:エバポリメーターによるTEWLの測定

    2. 角質層の厚さの個体差を考慮する場合

    TEWL、水の拡散定数、分配係数などを指標としたモデル式により、角質層の厚さの違いを推定し、20回または角質層が約80%除去される時点まで粘着テープを用いた角質層の剥離を行い、角質層全体の薬物濃度を算出する方法です。角質層の剥がれ度合いの違いによるデータのバラつきが小さいため、検出力は高くなると考えられますが、試験操作が煩雑という欠点もあります。

    皮膚薬物動態学的試験の一例

    ここでは皮膚薬物動態学的試験の一例として、活性型ビタミンD3外用剤であるマキサカルシトールローションとマキサカルシトール軟膏の試験を紹介します35)
    この試験では健康成人を対象とし、角質層の厚さの個体差を考慮しない方法を用いてローションと軟膏の角質層内薬物濃度を測定しています。
    この方法では、まず健康成人の左前腕に薬剤を塗布し、塗布した薬剤を一定時間経過後に拭き取っています。その後、粘着テープを用いて角質層を剥離し、角質層内の薬物濃度を測定しました(図2)。

    図2:マキサカルシトールローション・軟膏におけるヒト角質層内マキサカルシトール濃度の測定方法
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    図2:マキサカルシトールローション・軟膏におけるヒト角質層内マキサカルシトール濃度の測定方法

    < 予試験 >

    ガイドラインには「定常状態(角質層内の薬物濃度が一定)となる条件下で薬物量を測定し、生物学的同等性を評価すること」と記載されています。予試験を行った結果、ローションは塗布6時間以降、軟膏は塗布4時間以降に角質層内のマキサカルシトール濃度が一定となることが確認されました。

    < 本試験 >

    予試験の結果より、本試験ではローションと軟膏の角質層内薬物濃度が一定になっていると考えられる、塗布8時間後の角質層内マキサカルシトール濃度を比較検討しています(表1)。

    表1:角質層内マキサカルシトール濃度(塗布8時間後)(出典35より作表)
    薬剤 角質層内マキサカルシトール濃度
    平均値±標準偏差(μg/g)
    マキサカルシトールローション 11.2±3.1
    マキサカルシトール軟膏 11.1±3.4

    対象:健康成人男性12例

    塗布8時間後の両薬剤の濃度はローションが11.2±3.1μg/g、軟膏が11.1±3.4μg/gであり、平均値の差の90%信頼区間(−0.0511-0.0593)が許容域(log(0.8)-log(1.25))の範囲内であったことから、ローションと軟膏の生物学的同等性が確認されました。
    このように、マキサカルシトールローションは皮膚薬物動態学的試験を用いて、マキサカルシトール軟膏との生物学的同等性を確認しています。

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