ぬり薬の蘊蓄 第4章 ぬり薬を評価するために:生物学的同等性試験について
外用剤の生物学的同等性試験には、皮膚薬物動態学的試験、薬理学的試験、残存量試験、薬物動態学的試験、臨床試験、in vitro 効力試験、動物試験の7つが示されています。
生物学的同等性の評価は、薬物および製剤の特性にあわせて、科学的妥当性が担保できる方法を選択して実施します。ガイドラインでは、角質層内または角質層より深部で薬理作用を発揮する製剤において皮膚薬物動態学的試験を基本的な試験とし、薬理学的試験、残存量試験、薬物動態学的試験を代替試験として位置づけています。
1. 皮膚薬物動態学的試験
外用剤を皮膚に適用後、定常状態において、角質層内に存在する薬物量から生物学的同等性を評価する試験であり、アメリカ食品医薬品局(FDA)が『皮膚薬物動態学的試験の結論と臨床試験の結論が一致している』と、その有用性を認めた試験です。基剤によって吸収性が異なると想定される場合でも、薬物の皮膚へのバイオアベイラビリティ*を客観的に正確に評価することができます。
*:ガイドラインにおける用語の意味:未変化体または活性代謝物が作用部位に到達する速度と量
2. 薬理学的試験
外用剤を適用することにより生じる薬理学的反応を測定して、生物学的同等性を評価する試験です。
コルチコステロイドの場合は、血管収縮作用による皮膚の蒼白化反応*の強度を指標にして生物学的同等性を評価できます。ただし、作用の弱いコルチコステロイドでは蒼白化反応が弱く、指標にできないことがあります。
蒼白化反応の測定方法には、製剤を適用した部分の色と適用していない周辺部分の色との差を4または5段階にスコア化して、熟練した測定者が蒼白化の程度を判定する視覚的方法と、クロマメーターという機器によって蒼白化の程度を色調変化で判定する方法があります。
*:ステロイドには血管を収縮させる作用があり、この作用により皮膚が蒼白化する反応が生じる
3. 残存量試験
皮膚に適用された後の製剤中に残存する薬物量から、皮膚に分布した薬物量を推定する試験です。極端に経皮吸収性が低い製剤などでは、皮膚に残存する薬物量から分布量を推定し、製剤間の差を正確に評価することが難しいため、この試験は適していません。
4. 薬物動態学的試験
製剤を適用した後の薬物の血中濃度を測定し、薬物動態パラメータから生物学的同等性を評価する試験です。薬物の作用部位が角質層内または角質層より下部あるいはその両方にあり、薬効または作用部位濃度と薬物動態が良い相関を示す場合に有効な方法です。
5. 臨床試験
臨床効果を指標として生物学的同等性を評価する試験です。薬物に応じて治療効果に関連する適切な評価項目を選択し、統計学的に同等性を評価し得る被験者数で試験を行う必要があります。薬物毎に適切な同等性の許容域を設定し、標準製剤と試験製剤の臨床効果の同等性を判定します。
6. In vitro 効力試験
In vitro における効力を指標として生物学的同等性を評価する試験です。作用部位が皮膚表面にあるか、または患部が表面に表れている場合に使用する殺菌・消毒剤などで、薬効を発揮するために薬物が角質層を透過する必要がない場合に実施します。薬物毎に適切な同等性の許容域を設定し、標準製剤と試験製剤の効力の同等性を判定します。
7. 動物試験
製剤を適用することにより動物の皮膚表面に生じる薬理学的反応を指標として、生物学的同等性を評価する試験です。止血剤、殺菌・消毒剤、創傷治癒促進剤など、薬物の作用部位が皮膚表面にあり、薬効を発揮するために薬物が角質層を透過する必要がない場合に実施します。薬物毎に適切な同等性の許容域を設定し、標準製剤と試験製剤の効力の同等性を判定します。
以上、7つの生物学的同等性試験を概説しました。次に、これら試験の中で基本的な試験と位置づけられている皮膚薬物動態学的試験の詳細について紹介します。