メインコンテンツに移動

ぬり薬の蘊蓄 Q & A

    本サイトに掲載されている内容や監修・出演の医療関係者の皆様のご所属などは公開当時のものとなります。現在と異なる場合もございますが、ご了承いただきますようお願いいたします。

    記事/インライン画像
    杉林 堅次先生

    城西大学薬学研究科薬粧品動態制御学講座

    教授 杉林 堅次 先生

    にご回答いただきました。

    Q.外用剤を混ぜて使用してもいいのですか?

    A.患者さんのコンプライアンスの向上などを目的として外用剤がしばしば混合されていますが、製剤学的な観点から考えると、外用剤は安易に混ぜて使用すべきではありません。混合する外用剤の組合せや混合後の保管条件は千差万別であり、一概にどのような組合せが混合に適しているか、適していないかは言いきれないのが現状です。以下に、混合する際の注意点をまとめました。

    混合による主薬の安定性や溶解性の変化に注意しましょう。

    混合することで基剤のpHや主薬の溶解度などが変化する可能性があります。ステロイドは塩基性、ビタミンD3は酸性条件下で不安定になるため、混合による基剤のpHの変化には注意が必要です。また、主薬として水溶性薬物を含有した基剤に脂溶性の高い基剤を混合すると、主薬の溶解性が低下し、結晶化することも考えられるため、溶解性の変化にも注意が必要です。

    混合する外用剤の剤形に注意しましょう。

    混合できるかどうかについて、油脂性基剤と水溶性基剤のように明らかに性状が異なるものでは判断できますが、水中油型と油中水型のように見た目では判断できない場合は特に注意が必要です。

    例えば、水中油型は油滴の周りを水性成分が囲んでいるような構造を持つため、油性基剤とは混ざりにくく、混ざったように見えても均一に混合したかどうかを判断できない場合が多々あります。また、水中油型と油中水型を混合すると乳化状態が壊れ、水と油が分離しやすくなります。

    水中油型と油中水型の外用剤を見分ける方法として、水の中に添加して混ざるものが水中油型、混ざらないものが油中水型となるので、参考にしてください。

    混合すると主薬の経皮吸収性が変化することがあるので注意しましょう。

    外用剤を混合すると主薬の濃度が低下するため、一般的に主薬の吸収速度(一定時間に吸収される薬物量)は低下します。しかしながら、混合する組合せによっては吸収速度が高まることが知られています。その理由は完全には明らかではありませんが、油脂性基剤と混合した場合に起こりやすいことから、基剤と皮膚との親和性の向上や、油脂性基剤の吸収促進機能が関与していることが考えられます。

    配合変化試験結果は参考程度にしましょう。

    メーカーによっては配合変化試験を実施しており、必要に応じて、その結果を参照できる場合があります。しかしながら、この結果は配合変化試験を行った条件のみにあてはまるものであり、混合する方法や比率、保管条件を変えた場合にどうなるかは予測できないことがあります。

    Q.外用剤の基剤(添加物)によるかぶれについて教えて下さい。

    A.外用剤によるかぶれの原因としては、主薬によるものと基剤(添加物)によるものがあります。今回は、基剤(添加物)によるかぶれについてお答えします。
    かぶれは、アレルギー性と非アレルギー性に分けられます。

    アレルギー性のかぶれ

    原因物質の皮膚への接触が過去にあること(感作されること)が発症の条件となります。

    *感作:原因物質が異物(抗原)として記憶されることです。記憶されるだけではアレルギー反応は生じませんが、感作(記憶)後に原因物質と接触するとアレルギー反応が生じます。

    アレルギー性接触皮膚炎:
    感作後に外用剤が接触した部位に痒みを伴う紅斑、浮腫、しょう液性丘疹が出現します。これが全身に拡大すると、接触性皮膚炎症候群と呼ばれる症状を呈します。
    光アレルギー性接触皮膚炎:
    皮膚に適用する物質(原因物質)が日光などにより化学変化し、その化学変化した物質に対して感作が成立します。よって、感作後に外用剤と接触し、かつ日光などにあたった部位のみに症状が出現するのが特徴です。
    アレルギー性接触蕁麻疹:
    感作後に外用剤が接触した部位に膨疹が出現します。重症例では接触部位を越えて全身に症状が拡大し、気道症状、消化器症状が出現します。最重症例ではショックを起こすこともあります。

    非アレルギー性のかぶれ

    原因物質との初回接触で症状が出現する点が、アレルギー性のかぶれと異なります。

    刺激性接触皮膚炎
    光毒性接触皮膚炎
    非アレルギー性接触蕁麻疹:
    臨床症状はそれぞれアレルギー性接触皮膚炎・光アレルギー性接触皮膚炎・アレルギー性接触蕁麻疹と変わりません。
    刺激性接触皮膚炎
    光毒性接触皮膚炎
    非アレルギー性接触蕁麻疹
    臨床症状はそれぞれアレルギー性接触皮膚炎・光アレルギー性接触皮膚炎・アレルギー性接触蕁麻疹と変わりません。

    なお、外用剤の添加物によって光毒性接触皮膚炎が引き起こされたという報告はほとんどありません。
    以下に、かぶれの原因となりうる添加物の代表例を示します。

    疾患名 原因となりうる主な添加物
    アレルギー性接触皮膚炎 ラノリンアルコール、プロピレングリコール、亜硫酸塩、クロタミトン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、メントール
    光アレルギー性接触皮膚炎 オキシベンゾン
    アレルギー性接触蕁麻疹 安息香酸、エタノール、パラベン、プロピレングリコール、ゼラチン、メントール
    刺激性接触皮膚炎 FAPG 基剤*
    非アレルギー性接触蕁麻疹 安息香酸、エタノール、ソルビン酸、ベンジルアルコール、メントール

    *FAPG基剤:Fatty alcoholとPropylene glycolを主体とする基剤

    かぶれを起こしやすい添加物でも、配合濃度がきわめて低い場合にはかぶれを起こしにくくなります。また逆に、かぶれを起こしにくい添加物でも、高濃度に配合されるとかぶれを起こす場合があります。パラベンなど健康皮膚では経皮吸収されて感作が成立するのはまれであると報告されている物質でも、バリア機能が低下した皮膚では長期間継続して塗布することで感作が成立し、かぶれを引き起こすものもあります。このようなことを踏まえてメーカーでは、基剤を決定するにあたり、使用前例から添加物の配合濃度を設定するとともに、動物試験やパッチテストなどの臨床試験でその製品の安全性を確認しています。

    本来、外用剤の基剤(添加物)は主薬の安定性や経皮吸収性を確保し、使用感を高めるためなどに用いられますが、皮膚に対しては異物であり、疾患によって皮膚のバリア機能が低下している場合や、使用法を誤ったりすれば、治療目的で用いているにもかかわらず、かえって皮膚を刺激し、かぶれを引き起こす場合があります。そのため、外用剤の選択には主薬だけでなく基剤(添加物)についても十分に配慮することが大切です。

    Q.サンスクリーンについて教えて下さい。

    A.サンスクリーンを塗る目的は、紫外線(UVA・UVB)によるサンバーン(皮膚が赤くなる日焼け)とサンタン(皮膚が黒くなる日焼け)を避けるためです。UVAは波長が長く、サンタンを起こし、その半分近くが真皮まで到達し、慢性的に浴びるとシワやたるみなど、皮膚の老化を引き起こす原因となります。UVBは波長が短いため、そのほとんどが真皮まで到達せず、主に表皮で急激に作用してサンバーンを起こし、シミやソバカスなど、皮膚の乾燥の原因となります。

    記事/インライン画像
    太陽光線のスペクトル

    サンスクリーンは、基本的に紫外線吸収剤と紫外線散乱剤**から構成されています。皮膚が敏感な方には、低刺激性でできるだけ配合成分が少なく、有機化合物である紫外線吸収剤が含まれていないタイプのものがよいと思われます。

    *紫外線吸収剤:ケイ皮酸系やベンゾフェノン系などの有機化合物が用いられ、それらが一度紫外線を吸収し、熱エネルギーに変えて放出(光化学反応)して紫外線の皮膚への浸透を防ぎます。

    **紫外線散乱剤:酸化チタンや酸化亜鉛などの白色の無機粉体がよく用いられ、それが紫外線を物理的に散乱、反射させて防御します。

    サンスクリーンで、UVBを防御する指標となるのがSPF(Sun Protection Factor)です。例えば、30分で日焼けする人に塗って、300分まで日焼けしなければSPF10となります。UVAを防御する指標はPA(Protection grade of UVA)と呼ばれ、UVAの防止効果の高い順に「+++」「++」「+」と表示されます。
    SPFやPAの測定では、サンスクリーンを皮膚1cm2あたり2mg(液体の場合2μL)を塗っています。塗る量がこの量よりも少なければ、表示どおりの効果が得られません。しかしながら、一般的に人が1回に使用するサンスクリーンの塗布量は0.5mg/cm2程度という報告があります1)。したがって、SPFやPAの値をそのまま信じてしまうと思わぬ日焼けをしてしまうことが考えられます。サンスクリーンを正しく使うには、適量をしっかりと塗ることと、こまめに塗り直すことが大切です。
    以下にサンスクリーンの正しい使い方について紹介します。

    〈使用法〉

    クリームタイプのサンスクリーンでは、顔全体、片腕でそれぞれパール粒(0.7cm大)2個分(計約0.6g)が適量です(ローションタイプでは一円玉2枚分)。この量を目安に、擦り過ぎないように指の腹でやさしく全体に塗りのばします。プールや海水浴、汗などでサンスクリーンが流れ落ちたり、顔を触ることでとれてしまうケースもよくありますので、2~3時間ごとに塗り直すようにしましょう。

    また、塗る場所として首筋、首、耳のうしろ、肩、手の甲などは忘れやすい部位なので注意が必要です。

    〈落とし方〉

    ウォータープルーフタイプではないサンスクリーンでも、最近の製品には落ちにくいものもあります。その場合、夜にはきちんと低刺激性の石けん(液体洗浄料)やクレンジング剤などでしっかりと洗い落とすことが大切です。また、洗い落とす際に、ゴシゴシと擦り過ぎないように気をつけることも重要です。

    引用文献:
    1. Bodekaer M, et.al., Photodermatol. Photoimmunol. Photomed., 24, 296-300, 2008

    Q.機能性化粧品とは? また、その機能を評価する基準はあるのですか?

    A.一般的に、通常の化粧品や医薬部外品より、シワ・シミなどの改善効果に優れているなどの機能性に優れたものを機能性化粧品と呼んでいます。しかし、その機能評価方法は各社それぞれであり、消費者のみならず業界からも評価基準を統一する必要性が指摘されていました。

    これを受けて、日本香粧品学会では皮膚科医、薬学研究者、行政出身者、化粧品研究者からなる化粧品機能評価法検討委員会を設置し、この委員会から化粧品機能評価法ガイドライン2)が2006年12月に公表されています。このガイドラインは「新規効能取得のための抗シワ製品評価試験ガイドライン」、「新規効能取得のための医薬部外品美白機能評価試験ガイドライン」、「サンスクリーン製品の新規効能表現に関するガイドライン」、「安全性評価ガイドライン」の4つから構成されています。

    以下に各々のガイドラインの概要について紹介します。

    新規効能取得のための抗シワ製品評価試験ガイドライン

    このガイドラインは、化粧品と医薬部外品に分けて作成されています。シワグレード標準(0~7の8段階)を示す写真を用い、目視評価および写真評価を実施し、機器測定によるシワ計測の結果と合わせて有効性の判定を実施します。この評価試験の対象となる化粧品は、「乾燥によるシワを目立たなくする」製品であり、医薬部外品は「シワを改善する」ことを目的とした製品です。

    シワグレード標準

    • グレード0:シワはない
    • グレード1:不明瞭な浅いシワがわずかに認められる
    • グレード2:明瞭な浅いシワがわずかに認められる
    • グレード3:明瞭な浅いシワが認められる
    • グレード4:明瞭な浅いシワの中に、やや深いシワがわずかに認められる
    • グレード5:やや深いシワが認められる
    • グレード6:明瞭な深いシワが認められる
    • グレード7:著しく深いシワが認められる

    新規効能取得のための医薬部外品美白機能評価試験ガイドライン

    このガイドラインによる有効性判定は、有効成分配合製剤塗布群とプラセボ塗布群との二重遮蔽法を用いています。この比較法において、目視または写真評価において有意差があり、かつ機器測定の結果が目視評価または写真評価と矛盾しない場合を「有効性あり」と判定することとしています。この試験の対象とする製品は、「色素沈着をおだやかに改善していく」ことを目的とした医薬部外品です。

    サンスクリーン製品の新規効能表現に関するガイドライン

    このガイドラインは他のガイドラインと異なり測定法を示すものではありません。測定は既に制定されているSPF測定法基準、UVA防止効果測定基準を用いています。十分な紫外線防御効果を持つサンスクリーン製品において、表記されるべき効能表現は「日常的に使用することで、長期間の紫外線暴露によって生じるシワやしみ(光老化)を抑える」としています。また、「毎日、紫外線対策を行いましょう」、「2~3時間おきに塗りなおしましょう」、「タオルなどで肌を強く拭いた後は塗りなおしましょう」などの注意表示も効能表現と同時に表記することが望ましいとしています。

    安全性評価ガイドライン

    このガイドラインでは、今回の上記各ガイドラインを用いて評価される新規および既存成分(機能性成分)の安全性担保における基本的な考え方に加え、安全性の最終確認に位置づけられるヒトの安全性評価試験についての方向性を示しています。

    引用文献:
    1. 化粧品機能評価法検討委員会,日本香粧品学会誌, 30, 311-348, 2006

    お問い合わせ

    お問い合わせの内容ごとに
    専用の窓口を設けております。

    各種お問い合わせ

    Dermado デルマド 皮膚科学領域のお役立ち会員サイト

    医学賞 マルホ研究賞 | Master of Dermatology(Maruho)

    マルホLink

    Web会員サービス

    ページトップへ