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白癬の疫学・病態


白癬の疫学1)

日本臨床皮膚科医会が2007年に行った疫学調査では、足の疾患以外で皮膚科を受診した患者の足の検診結果に基づいて足白癬および爪白癬の患者数を調べました。その結果、本邦の足白癬の患者数は約2,500万人(有病率21.6%)、爪白癬の患者数は約1,200万人(有病率10.0%)と推計されました。
また、日本医真菌学会が2016年に行った疫学調査の結果、表在性皮膚真菌症の内訳は白癬が85.2%、皮膚・粘膜カンジダ症が11.2%、マラセチア症が3.5%、白癬全症例数に対する病型別の内訳は足白癬が57.4%、爪白癬が28.3%、体部白癬が7.3%、股部白癬が5.4%でした。

  1. 望月隆ほか:日皮会誌. 2019;129(13), 2641

白癬の病態2)

白癬は、白癬菌が角層や角層の特殊な形態である爪や毛髪に感染してそこで増殖することで発症する、皮膚科の日常診療で頻繁に遭遇する疾患の1つです。
感染源にはヒト、動物、土壌があり、各々を好む白癬菌が存在します。

病変の部位により、足白癬、爪白癬、頭部白癬、顔面白癬、体部白癬、股部白癬、手白癬などの病型に分けられます。
足白癬では趾間の浸軟や鱗屑、足底の水疱や鱗屑、角化、手白癬では鱗屑、小水疱、爪白癬では爪甲の混濁や爪甲下の角質増殖をきたします。
頭部白癬では鱗屑や黒点、膿疱、腫脹、顔面や体部、股部の白癬では鱗屑や小水疱が周囲に環状に配列する紅斑が生じる症例が多くみられます。

  1. 落合慈之 監修, 五十嵐敦之 編集:新版 皮膚科疾患ビジュアルブック. 学研メディカル秀潤社, p331, 2012

足白癬の病態3, 4)

足白癬の俗称は「水虫」で、白癬で最も多くみられる病型です。
原因菌はTrichophyton rubrumT. rubrum )が最も多く、T. mentagrophytes が次いで多くなっています。
足白癬は臨床形態により、趾間型、小水疱型、角質増殖型の3病型に分けられます。
いずれも足背に病変が広がると、体部白癬に類似した環状病変を形成します。

  • 趾間型
    足白癬で最も多くみられる病型で、第4趾間に好発します。
    趾間に紅斑と小水疱が生じ、鱗屑を形成します。汗などで白く浸軟すると、びらんがみられます。
    そう痒を伴い、びらんから細菌が二次感染すると疼痛や蜂窩織炎を発症することもあります。
    とくに糖尿病患者では、難治性潰瘍、蜂窩織炎、リンパ管炎や壊死性筋膜炎の母地になりえます。
    足白癬(趾間型)
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    足白癬(趾間型)

    趾間が浸軟(ふやけること)し、鱗屑も伴っている

  • 小水疱型
    土踏まず、足趾基部、足縁に好発します。
    小水疱が多発し、乾燥すると鱗屑を形成します。
    梅雨の時期に起こり、秋に軽快する傾向があります。
    足白癬(小水疱鱗屑型)
    記事/インライン画像
    足白癬(小水疱鱗屑型)

    小水疱が多数みられ、鱗屑を伴っている

  • 角質増殖型
    原因菌はT. rubrum で、足底や踵部に好発します。
    びまん性の過角化、皮膚表面の粗糙化がみられ、亀裂を形成すると疼痛が生じます。
    多くの場合、そう痒はありません。
    足白癬(角化型)
    記事/インライン画像
    足白癬(角化型)

    踵部を中心に過角化している

  1. 落合慈之 監修, 五十嵐敦之 編集:新版 皮膚科疾患ビジュアルブック. 学研メディカル秀潤社, p332, 2012
  2. 清水宏:あたらしい皮膚科学 第3版. 中山書店, pp533-534, 2018

爪白癬の病態5-7)

爪白癬は第1趾爪に好発します。
多くは足白癬に続発して生じ、爪の先端から白濁して徐々に爪母側に進行します。
爪甲が脆くなり、粉末状に崩れることもあります。
自覚症状がなく、未治療のまま放置される場合が少なくありません。
足白癬などに菌を供給していることが多く、自家感染や家庭内感染の原因となります。

爪白癬の病型は以下の5つに分類されます。
・遠位側縁爪甲下真菌症(Distal and lateral subungual onychomycosis:DLSO)
・表在性白色爪真菌症(Superficial white onychomycosis:SWO)
・近位爪甲下爪真菌症(Proximal subungual onychomycosis:PSO)
・endonyx onychomycosis(EO)
・全異栄養性爪真菌症(Total dystrophic onychomycosis:TDO)

主にみられる病型はDLSOで、爪甲の遠位部または側縁部より爪甲下に菌が侵入して生じます。
爪甲全体に病変が広がると、最終的にはTDOに至ります。

爪白癬(DLSO型)
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爪白癬(DLSO型)
爪白癬(PSO型)
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爪白癬(PSO型)
  1. 落合慈之 監修, 五十嵐敦之 編集:新版 皮膚科疾患ビジュアルブック. 学研メディカル秀潤社, p333, 2012
  2. 清水宏:あたらしい皮膚科学 第3版. 中山書店, p534, 2018
  3. 望月隆ほか:日皮会誌. 2019;129(13), 2642

手白癬の病態6, 8)

手白癬では、足白癬の角質増殖型や小水疱型に似た病変が片手のみにあらわれることが多いとされています。
また、大多数は足白癬を合併します。

手白癬
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手白癬

6) 清水宏:あたらしい皮膚科学 第3版. 中山書店, p534, 2018
8) 落合慈之 監修, 五十嵐敦之 編集:新版 皮膚科疾患ビジュアルブック. 学研メディカル秀潤社, p335, 2012

体部白癬の病態9, 10)

体部白癬の俗称は「たむし」で、主な原因菌はT. rubrum です。
体幹や四肢に紅色小丘疹が生じ、遠心性に広がります。
病変が広がるにつれ、中心部では炎症が軽快し、軽度の色素沈着を残して軽快します(中心治癒傾向)。
その周辺は堤防状に隆起して丘疹や小水疱、鱗屑などが生じます。そのため、全体として環状の病変がみられます。
体部白癬は一般にそう痒を伴います。

体部白癬
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体部白癬
  1. 清水宏:あたらしい皮膚科学 第3版. 中山書店, p535, 2018
  2. 落合慈之 監修, 五十嵐敦之 編集:新版 皮膚科疾患ビジュアルブック. 学研メディカル秀潤社, p334, 2012

股部白癬の病態10, 11)

股部白癬の俗称は「いんきんたむし」です。
成人男性に好発し、多くは足白癬を合併します。
年余にわたって放置された難治例が少なくありません。
陰股部や殿部に環状紅斑が対称性に生じ、強いそう痒を伴います。
紅斑が陰嚢に及ぶことは稀です。

股部白癬
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股部白癬
  1. 落合慈之 監修, 五十嵐敦之 編集:新版 皮膚科疾患ビジュアルブック. 学研メディカル秀潤社, p334, 2012
  2. 清水宏:あたらしい皮膚科学 第3版. 中山書店, p536, 2018

頭部白癬の病態5, 11, 12, 13)

頭部白癬の俗称は「しらくも」で、主に小児にみられます。
頭部白癬は、白癬の中でも比較的稀な病型です。

本邦では、頭部白癬はケルスス禿瘡とそれ以外の頭部(浅在性)白癬に分類されます。
一方、国際的には頭部に生じた皮膚糸状菌症を全てtinea capitisとしてまとめ、さらに原因菌で区別する考え方が主流となっています。

  • ケルスス禿瘡
    化膿性炎症が強く、侵された毛包からの排膿、抜毛がみられます。
    疼痛、所属リンパ節の腫大を伴います。
  • 頭部(浅在性)白癬
    落屑を伴う脱毛斑、または脱毛後の毛包に黒点(ブラックドット)がみられます。
    毛包に一致した膿疱、軽度のそう痒を伴うこともあります。
頭部白癬
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頭部白癬

5)落合慈之 監修, 五十嵐敦之 編集:新版 皮膚科疾患ビジュアルブック. 学研メディカル秀潤社, p333, 2012
11)清水宏:あたらしい皮膚科学 第3版. 中山書店, p536, 2018
12)望月隆ほか:日皮会誌. 2019;129(13), 2643
13)牛上敢(宮地良樹, 渡辺大輔, 常深祐一郎 編集):エビデンスに基づく Q&Aでわかる皮膚感染症治療. 中山書店, p109, 2020

白癬菌性肉芽腫の病態14)

下腿の体部白癬などに対してステロイド外用薬を誤用または乱用した際に生じることがあります。
皮内、皮下に結節が生じ、扁平隆起した湿潤性局面や大きな腫瘤状局面を形成することもあります。

  1. 清水宏:あたらしい皮膚科学 第3版. 中山書店, p537, 2018

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