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白癬の検査・診断


白癬の診断は、鏡検下での病原菌の検出により行います。
菌種を同定するには培養検査を行う必要がありますが、白癬では皮膚糸状菌のコロニー形成に2週間以上かかることが多く、診療現場では直接鏡検による迅速診断を行って治療を開始します1)
顔面白癬や体部白癬、股部白癬、手白癬などを診断した際は、自身の足白癬や爪白癬から感染したケースが多いことから足の診察も併せて行うことが重要です2)

  1. 望月隆ほか:日皮会誌. 2019;129(13):2647
  2. 落合慈之 監修, 五十嵐敦之 編集:新版 皮膚科疾患ビジュアルブック. 学研メディカル秀潤社, p331, 2012

直接顕微鏡検査(直接鏡検法)1, 3, 4)

直接鏡検法は、寄生形態が観察されれば原因菌を確定できる点で重要な検査です。
多くの場合、白癬とカンジダ症を区別することも可能です。

直接鏡検法には、主に水酸化カリウム(KOH)法が用いられます。
病巣から搔き取った鱗屑、水疱蓋などをスライドグラス上に載せて10~30%KOH液を滴下し、カバーグラスを被せます。これを70~80℃のホットプレートで5~10分ほど加温します。
KOHによって角層などの生体要素が加水分解されるため、真菌要素のみを観察することが可能です。

現在は、角質の溶解時間が短く、ホットプレートも不要なジメチルスルホキシド(DMSO)添加KOH液がよく用いられています。
KOH法の他、パーカーインク加KOH法やPAS染色法、墨汁法があります。

白癬菌 (KOH直接鏡検法)
記事/インライン画像
白癬菌 (KOH直接鏡検法)

4) 常深祐一郎 著:毎日診ている皮膚真菌症. 南山堂, p48, 2010 より転載

1) 望月隆ほか:日皮会誌. 2019;129(13):2647
3) 清水宏:あたらしい皮膚科学 第3版. 中山書店, p86, 2018

真菌培養法5)

通常の表在性皮膚真菌症の原因菌の多くはT. rubrumT. interdigitaleT. mentagrophytes )、C. albicans などです。
このような典型的な症例では、真菌培養法は必須ではありません。

真菌培養法は、以下の場合に実施を検討します。
・非典型的な皮膚症状を伴う場合
・類似の皮膚症状を呈する複数の原因菌が想定される場合
・頭部病変がみられる場合
・生毛部病変がみられる場合
・nondermatophyte onychomycosisが疑われる場合
・深在性皮膚真菌症の可能性がある場合(確定診断の際は必須)

真菌培養法に用いる培地には、サブローブドウ糖寒天培地(SDA)、シクロヘキシミド・クロラムフェニコールを添加したマイコセル斜面培地、ポテトデキストロース寒天培地(PDA)などがあります。
想定される菌種によって培地を追加します。

  1. 望月隆ほか:日皮会誌. 2019;129(13):2648-2649

イムノクロマト法6)

特異抗体が固相化されたセルロース膜上を試料がゆっくり流れる性質(毛細管現象)を応用した免疫測定法です。試料中に検出される抗原が含まれているかどうかが迅速に判定できます。爪白癬菌の検出に本法を応用した白癬菌抗原キット「デルマクイック爪白癬」があります。

  1. 岩月啓氏 監修, 照井正, 石河晃 編集:標準皮膚科学. 医学書院, p58, 2020

その他の検査法7)

診療現場では直接鏡検法、真菌培養法に加えて、いくつもの補助的検査方法が実施されています。
補助的検査方法のうち、代表的なものを解説します。

  • 皮内反応
    炎症性白癬や白癬疹の診断に有用な皮内反応として、トリコフィチン反応があります。
  • 血清診断
    真菌症の血清診断法としては、免疫学的検出法(菌体成分を抗原として検出する、または真菌に対する特異抗体を検出する)と生化学的検出法(菌体成分や真菌代謝物を酵素反応によって検出する)があります。本法には、感度と特異性のバランス、迅速性、簡便性が求められます。
  • Wood灯検査
    暗所で365nmの長波長紫外線を病巣に照射し、照射部位の蛍光を観察します。
    頭部白癬のうちM. canisM. ferrugineum によるもの、M. gypseum によるものの一部では、侵された毛包の開口部で点々とした緑黄色の蛍光が観察でき、病変範囲の確定や治療判定の一助となります。
    足白癬、股部白癬の鑑別疾患として重要である紅色陰癬は、病巣部で鮮やかなピンク色の蛍光がみられます。
  • 病理組織学的検査
    組織中の菌要素は見つけにくい場合が多いため、PAS染色、Grocott染色、ファンギフローラY®などの特殊染色を行います。
    病理組織学的検査は、一般的な表在性皮膚真菌症で行うことはほとんどありません。
  1. 望月隆ほか:日皮会誌. 2019;129(13):2649-2650

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