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表在性皮膚感染症の疫学・病態


    表在性皮膚感染症

    皮膚一般細菌感染症の疾患分類1)

    皮膚一般細菌感染症は、病変の深達度、皮膚付属器との関係、一次性の感染症か二次性の感染症かなどに基づき、以下のように分類されます。

    • 単純性皮膚細菌感染症(uncomplicated skin infections):抗菌薬だけで治癒できることが多いです。
    • 複雑性皮膚・軟部組織感染症(complicated skin and soft tissue infections):抗菌薬に加えて外科的処置などの治療も要します。

    単純性皮膚感染症の疾患分類1)

    単純性皮膚感染症は表1に示すように病巣の深達度により表在性、深在性、二次感染に分類され、さらに付属器関連かびまん性かで細分類されます。

    表1:単純性皮膚感染症の疾患分類
    表在性皮膚感染症

    付属器関連感染症:毛包炎、化膿性汗孔周囲炎

    びまん性感染症:伝染性膿痂疹、手部(足部)水疱性膿皮症、尋常性膿瘡

    深在性皮膚感染症

    付属器関連感染症:癤(せつ)、癤腫症、癰(よう)、尋常性毛瘡(表在性のものも含む)、乳児多発性汗腺膿瘍、急性化膿性爪囲炎・瘭疽

    びまん性感染症:丹毒、蜂巣炎、リンパ管炎、リンパ節炎

    二次感染

    表在性感染症:浅達性Ⅱ度熱傷の二次感染、術創感染症、外傷の二次感染

    深在性感染症:深達性Ⅱ度熱傷の二次感染、術創感染症、外傷の二次感染

    本項では、表在性皮膚感染症のうち、毛包炎、伝染性膿痂疹について解説します。

    1. 宮地 良樹, 渡辺 大輔, 常深 祐一郎 編:エビデンスに基づく Q&Aでわかる皮膚感染症治療. 中山書店, pp2-3, 2020 より一部抜粋

    毛包炎(毛嚢炎)

    毛包炎の病態 2, 3)

    毛包炎(図1)は、単一の毛包(嚢)浅層に限局した周囲に炎症を伴う細菌感染症で、にきび(尋常性ざ瘡)も毛包炎の1つです。
    男性の須毛部(口ひげ、顎ひげ、頬ひげ)に生じたものは尋常性毛瘡といい、痂皮を伴う紅斑が融合して局面を形成することがあります。

    毛孔に一致した紅斑、紅色丘疹や膿疱が生じ、その周囲に発赤がみられます。
    熱感、圧痛があり、痒みを伴う頻度も高いです。発熱などの全身症状はありません。
    毛包炎の深達度によって表在性、深在性の2つに分類されます。

    • 表在性毛包炎:表皮レベル内に限局した炎症です。膿疱は数日で乾燥または破れて痂皮化し、治癒します(瘢痕は確認されません)。
      浅在性毛包炎、毛包漏斗部毛包炎ともよばれます。

    図1:毛包炎
    記事/インライン画像
    毛包炎の臨床症状

    毛包炎の病因 2, 3)

    毛包炎の主な原因菌は、黄色ブドウ球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(表皮ブドウ球菌 Staphylococcus epidermidis など)です。摩擦などによる毛孔の微小外傷や閉塞、ステロイド剤外用や発汗、密封包帯法による皮膚の浸軟が誘因となり、毛孔に感染します。

    1. 清水宏:あたらしい皮膚科学 第3版. 中山書店, pp518-519, 2018
    2. 落合慈之 監修, 五十嵐敦之 編集:新版 皮膚科疾患ビジュアルブック. 学研メディカル秀潤社, p313, 2012

    伝染性膿痂疹

    伝染性膿痂疹は皮膚付属器に関係なく発症する表在性皮膚感染症の代表的な疾患で、「とびひ」ともよばれます。
    本疾患は乳幼児から学童期でよくみられ、アトピー性皮膚炎などの基礎疾患をもつ人は発症しやすい傾向にあります。
    伝染性膿痂疹はその臨床像から、水疱性膿痂疹痂皮性膿痂疹に分類されます。

    水疱性膿痂疹の疫学・病態 4, 5)

    水疱性膿痂疹(図2)は乳幼児にみられることが多く、夏季に保育園などで集団発生が起こりやすい疾患です。
    始めは小外傷部や湿疹、アトピー性皮膚炎などの掻破部位に紅斑が生じます。その疱膜は薄いため容易に破れてびらんとなり、細菌を含む水疱内容物が周囲に飛び火して広がっていきます。
    発熱やリンパ節腫脹などの全身症状はみられません。
    治癒後、瘢痕は残りません。

    水疱性膿痂疹の病因 4, 5)

    水疱性膿痂疹の病因は、角層で増殖したコアグラーゼⅠ型およびⅤ型の黄色ブドウ球菌の感染です。
    菌が産生する表皮剝脱毒素により、表皮のデスモグレインⅠが切断されます。すると角層下ないし顆粒層に表皮細胞間解離が生じ、表皮内水疱が形成されます。
    近年、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の検出頻度が高くなっています。

    図2:水疱性膿痂疹
    記事/インライン画像
    水疱性膿痂疹の臨床症状
    1. 清水宏:あたらしい皮膚科学 第3版. 中山書店, pp514-515, 2018
    2. 落合慈之 監修, 五十嵐敦之 編集:新版 皮膚科疾患ビジュアルブック. 学研メディカル秀潤社, p315, 2012

    痂皮性膿痂疹の疫学・病態 6, 7)

    痂皮性膿痂疹(図3)は年齢や季節を問わず、突然発症します。近年はアトピー性皮膚炎患者にも合併することが多いです。
    始めは小紅斑が生じ、進行すると多発性の膿疱や黄褐色の痂皮を形成します。
    痂皮は厚く、固着性があります。圧迫すると膿汁が排出されます。
    発熱、痛みを伴うリンパ節の腫脹、咽頭痛などの全身症状を伴う場合があります。

    痂皮性膿痂疹の病因 6, 7)

    痂皮性膿痂疹の病因は、A群β溶血性レンサ球菌 Streptococcus pyogenesや黄色ブドウ球菌の角層下への感染です。
    最近では両者の混合感染が多くみられ、レンサ球菌が単独で分離されることはほとんどありません。

    図3:痂皮性膿痂疹
    記事/インライン画像
    痂皮性膿痂疹の臨床症状
    1. 清水宏:あたらしい皮膚科学 第3版. 中山書店, p515, 2018
    2. 落合慈之 監修, 五十嵐敦之 編集:新版 皮膚科疾患ビジュアルブック. 学研メディカル秀潤社, p316, 2012

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