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maruho square 地域包括ケア時代の薬局経営:薬局の方向性の共有


    • HYUGA PRIMARY CARE株式会社(きらり薬局) 代表取締役社長 薬剤師 黒木 哲史 先生

    はじめに

    今回は、社会の変化に対応していくために、薬局の現場と経営陣が薬局の目指す方向性を擦り合わせるためにきらり薬局で行っていることについてお話しします。令和4年(2022年)4月の調剤報酬改定は大きな変化が伴う改定でした。オンライン服薬指導全面、リフィル処方全面解禁、特に大きな変化の1つは地域支援体制加算が4つに分類されたことです。地域支援体制加算2~4を算定する場合には9項目の要件を最低でも3項目満たしていかなければならなくなりました。項目をみてみると、今までの門前薬局ではあまり取り組んでいないような内容が殆どではないでしょうか?()。
    実際にこれらの項目に取り組むとなると経営陣としては現場の薬剤師の方、医療事務の方に新しい業務をスタートしてもらわなければなりません。現場側からすると今までやってきたことに加えて、単純に業務が増えるわけですから、それなりの負荷がかかります。少なからず反発や人員補充の要望が出ることがあると思います。しかしながら現場の負荷や反発を乗り越えて取り組んでもらわなければ、これからの薬局経営はままなりません。
    地域支援体制加算2の算定要件を細かくみると(夜間休日の対応、個人宅の在宅訪問の対応、外部との連携会議に出席)など多岐にわたります。薬局の経営陣はどの項目からクリアしようか?など悩まれていることだと思います。実際に弊社HYUGA PRIMARY CARE株式会社(きらり薬局 全38店舗)のうち8割以上が地域支援体制加算2の算定に成功しております。これは日頃から、新しい試みについても現場と目標を共有し実行した成果であると思います。

    表1.地域支援体制加算の概要順
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    表1.地域支援体制加算の概要順

    実際に行うに当たって前提として持っておくべき考え方

    そもそも薬剤師、医療事務は医療従事者という側面と同時に株式会社(有限会社)の従業員でもあります。会社として売上を上げることは社会のニーズに認められたということであり、また事業の継続には利益が必要で、赤字が続けば医療行為自体も継続ができないということを従業員に理解してもらいます。これは資本主義の世の中では当たり前のことですが、薬剤師の方でこのことが腹落ちしている方は、まだまだ少ないように感じています。一般的に大学卒業後殆どが企業に就職します。企業に入ると企業人として会社の数字や社会人としてのスキルやマナー教育を受けますが、医療提供施設で働く方は、他業界に比べて特にその部分の教育を受ける機会が少ないため、それが希薄であることが他業種の人より多いという印象を私自身持っています(一概にこのことを否定するつもりはありません。日本の質の高い医療は過去の考え方で成り立っている部分も多くあります。)。
    また、この20数年は薬剤師不足の売り手市場であったため、新卒就職活動時も含め就職できないというような苦労をした経験がありません(直近では都市部を中心に少しずつ余ってきているようですが)。そのようなバックボーンがあるので、まず日頃から、会社とは何か?事業の継続とは何か?というところから経営層が現場の薬剤師の方や医療事務の方に伝え続けることが重要になります。

    薬局の方向性の共有

    きらり薬局では

    入社時の研修(理念研修※1、クレド研修※2

    • 理念研修:会社が世の中に提供する未来についての話を行います。
    • クレド研修:きらり薬局ではクレド(行動指針を記したもの)があり、その行動指針の意味と理由を解説します。

    毎日の朝礼(Zoomを使って部長からの考え方、方針などを伝えます)

    月に1回の代表取締役からのWEB動画メッセージ朝礼

    その他、職位などに合わせた実務的な研修

    などを通じて、考え方を伝えます。ここで重要なのが伝え続けることです。
    経営陣が一度話しただけで、その内容を理解し実際に行動できるような従業員は滅多にいません。ですので、繰り返し伝え続ける必要があります。従業員から「社長しつこい」と言われるくらいまでやるのが丁度いいくらいです。この「会社、企業の考え方」の浸透は、ことあるごと(会社のイベント、クレーム対応、期末)に経営陣(管理職)から伝え続けます。更には経営陣自身も、その意識に基づいた行動を日常で行わなければなりません。従業員は経営陣の発言と行動の一言一句を聞いていますし、見ています。言っていることとやっていることが違うと、人はついてきません。「有言実行」が遂行されて初めて従業員の意識と行動が変わってきます。感覚的にはそれを2,3年くらい続けることで少しずつ雰囲気が変わり、皆で前向きに取り組んでいけるようになると思います。
    時には、考えを伝えると一部考え方が合わないような発言をする方も出てきます。この場合は擦り合わせの作業が必要になります。大体のケースでは、経営陣の考え方と現場の考え方が全て違うわけではありません。図1の真ん中の重なっている部分(共有する価値観)を広げていくために従業員と対話を重ねていきます。従業員からも現場状況に対しての考え方や時には不満も出てくると思いますが、解決できるかは別の問題として、一旦はその話を聞くことが大事です。そうすることで自ずと共有する価値観は広がっていきます。ご参考までに研修で使う資料の一部(例)をお示しします(図2)。

    図1. 考え方の共有イメージ
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    図1. 考え方の共有イメージ
    図2. 研修で使う資料
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    図2. 研修で使う資料

    さいごに

    私自身もきらりプライム加盟先の薬局経営陣と経営相談を受けるケースがあります。その時の話を聞いていて感じるのは、この作業(会社と個人の価値観や方向性の擦り合わせの機会)が不足している経営者がまだまだ多い印象です。本稿でお話しさせていただいた取り組みを開始して継続するだけで、従業員の意識、行動が新しいことに前向きに変わっていきます。

    きらり薬局では2か月1回定期的に調剤薬局の薬局経営について内容をもっと深掘りした無料参加も可能なWEBセミナーを開催しております。詳しくは「きらりプライム」ホームページの「セミナー/イベント」をご確認ください。

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