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maruho square 地域包括ケア時代の薬局経営:地域包括ケアの本質とは?(医科、介護との連携) 


  • HYUGA PRIMARY CARE株式会社(きらり薬局) 代表取締役社長/薬剤師 黒木 哲史 先生

はじめに

今回は保険調剤薬局の大きな課題の一つである、多職種(ケアマネジャー、在宅医、介護事業者)との連携について私なりの意見をお伝えします。まず初めに前提として、経営者(事業所管理者)と現場の方で考え方が若干違うということです。経営者は事業を持続させるために経営や運営を考える傾向にあります。一方、現場の方(特に介護事業者)は利用者サービスを考える傾向にあります。勿論どちらの立場の方も両方を考えていますが、相手によって話す内容が少し変わってきますので、あくまで心構えの部分での参考にしていただければ幸いです。

利用者サービスの視点

介護事業者の中でも特にケアマネジャーは介護保険のプランを作成するに当たり、サービスの妥当性や利用者さんに寄り添ったケアプランが書けているかをいつも悩んでいます。地域の研修会に参加したり、良いプランを書くために日々研鑽に励んでいます。
例を挙げると、自分の持っている利用者Aさんは認知症の症状が進んできている。飲み忘れの回数も増えてきたが、家族の服薬介助や息子さん夫婦の関わりも、仕事などの関係で希薄になってきている。そろそろ薬剤師の居宅療養管理指導導入を検討したほうがよいのではという具合です。
また一方で、薬剤師の居宅療養管理指導が、利用者さんに本当に必要かどうかを常に自問自答しています。薬剤師の居宅療養管理指導は利用者さんの金銭負担が施設で300円程度、個人宅だと500円程度に上がります。介護だけでなく利用者さんのお財布の状況も考え、自己負担額が増える分とサービスの内容が、つり合いがとれているかを常にチェックしています。家族が足りない分を補填してくれるのか?年金の支給額はどれくらいか?現在受けている介護サービスは本当に適切か?(過剰なサービスになっていないか?逆にQOL向上のために新しいサービスを入れるべきか?)病名、症状はどういうものか?受診または訪問してくれる医師はどんな先生か?(専門はどんな科目か?)など、利用者さんに関わる生活全体からその利用者さんを考えています。なので、私達薬剤師もまずはその視点(利用者さんに関わる全体感)を持たなければ、知識以前の問題で彼らと対等に話ができません。私は薬剤師なので薬以外は関係ないというスタンスで話をすると拒絶されてしまいます。薬の話の前に、その患者さんの生い立ち、生活、家族、経済状態そして病名について興味を持つことが円滑にコミュニケーションをとる秘訣です。

地域包括ケアシステムの視点

現在、国は地域包括ケアシステムの構築(図1)を介護保険、医療保険の両方の側面から推し進めています。病院から地域へという流れです。以前は病院で看取っていた患者さんを在宅で看取りをするという流れを作ろうとしています。また、患者さん本人も自宅で療養して最後を迎えたいというニーズが近年高まっています(図2)。

図1:地域包括ケアシステム
記事/インライン画像
図1:地域包括ケアシステム
地域包括ケアシステム(厚生労働省ホームページより)
図2:終末期の療養場所
記事/インライン画像
図2:終末期の療養場所
中央社会保険医療協議会・医療と介護の連携に関する意見交換(2017年3月22日)

多職種と連携するという視点

一つの「違い」を話させていただきますと、病院は同じ法人内で多職種とのコミュニケーションをとることになります。部署間の連携は大変な場合もあるとは思いますが、基本的には同一法人内です。地域(在宅の場合)は、基本的には別法人で、経済的にも独立しています。在宅クリニック、訪問看護ステーション、調剤薬局、ケアプランセンター、訪問介護事業所、デイサービスセンターなど、利用者さんが、利用している法人、事業所全てがバラバラということも少なくはありません。コミュニケーションスキルは前者より少し高いレベルを求められるケースが多くなります。地域(在宅の場合)は各法人、各事業所全てが独自でコンプライアンスを守りながら経営を成り立たせ、利用者サービスの継続や質を担保しなければなりません。必要なコミュニケーションレベルは高くなるのは必然です。

多職種連携の解決策

多職種の方の考え方、日常を知ることがまず第一歩です。具体的には彼らが実際にサービスを行い算定している、医療介護保険点数などを知り、それを実際に行っている現場を見てイメージすることです。座学も大事ですが、できるなら在宅医、ケアマネジャー、訪問看護、介護の方々と一緒に食事に行ったりしてコミュニケーションをとることをお薦めします。その際には、提供しているサービス内容についてインターネットなどで事前に調べておくと良いと思います。特に在宅医療を行っている医師とコミュニケーションをとる場合は「在宅時医学総合管理料」や「訪問診療」、「往診」の点数と医師が診療報酬上行わなければならないこと(24時間365日対応など)の知識や「在宅支援診療所」「単独型機能強化型在宅支援診療所」「連携型機能強化型在宅支援診療所」の仕組みを知っておくことなどは必須だと思います(在宅医療の医科点数については今後の連載の中でご紹介しようと考えています)。
例えば「往診」と「訪問診療」は意味が違うことはご存知ですか?「訪問診療」とは、計画的・継続的な医療サービスを行うことです。何月何日に医師が訪問することを予定して診療を行います。また、24時間365日の対応を基本としています。一方、「往診」は、患者さんまたはそのご家族の要請を受けて、その都度、医師が診察に伺うものです。基本的に、突然の病状の変化に対応して臨時で行います。たまに「訪問診療」のことをひっくるめて「往診」と言っている方もあります。細かいことかもしれませんが、そのあたりのニュアンスを理解していることも訪問薬剤師と在宅医療を行っている医師の距離を近づける一つの要素だと思います。
弊社では約10年前にケアプランセンターに薬局を併設して開設しており、現在400のケアプランを15人のケアマネジャーが作成し、同法人内での連携を行ってきました。私自身は薬剤師であり、ケアマネジャーではありませんので、最初はケアマネジャーとの文化の違いなどに戸惑うことも多々ありましたし、医療と介護の間に大きな壁があることにも気づきました。
例えば、医療では「患者さん」と呼びますが、介護事業者の方は「利用者さん」と呼びます。また、介護事業者の方からみても医療に対しての知識不足や風習の違い、大学や専門学校での教育の違いからくる「壁」を感じているようです。しかし、私の経験上、この「壁」というのは弊社のようにケアプランセンターを自社で持たずとも、ある程度の年月を重ねてお互いの考え方、医療介護の仕組みなどを粘り強くすり合わせることで解決してきました。
介護従事者も根底にある一番の「目的」は利用者さんが自宅(施設)で穏やかに過ごすことをサポートすることですので医療従事者と「目的」は同じです。その前提を自分自身も心の中に持ちながら話をしていくことが大事だと私は考えています。

おわりに

ここまで、患者さんについて、医療介護のステークホルダーの考え方や日常を勉強する重要性を述べてきましたが、弊社HYUGA PRAIMARY CARE(きらり薬局)では勉強についての定義がクレド(行動指針)の中にあります。
抜粋して紹介しますと「勉強とは物事を丸暗記することではなく、目的を持って社会の仕組みを広く知ることです。」とあります。地域包括ケアシステムにおいての「医療介護の仕組み」を広く知ることがまず薬剤師が在宅に出ていく第一歩だと考えております。

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