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maruho square 薬剤師がグングン楽しくなる医療コミュニケーション講座:人材育成のためのコミュニケーション(2)ー 能力開発ってどう考える? ー


  • 帝京平成大学薬学部 教授 博士(薬学) 井手口 直子 先生

薬剤師は自己学習の義務がある

こんにちは、前回は部下や後輩育成のためのコミュニケーション“コーチング”についてお話ししました。薬学生が就職先を選ぶとき、研修体制やキャリアパスを気にすることが多いです。しかし、いくら教育プログラムが充実していても“自ら学び、高める”意識なしには向上は難しいですね。今回は、一人ひとりが意識したい、能力開発のコツについて一緒に考えていきましょう。

能力開発とは行動変容

「性格」って変わると思いますか?「変わる!」という人と「変わらない」という人がいます。心理学者のアルフレッドアドラー(Alfred Adler)は「性格は死ぬ瞬間まで変わる」と述べていますが、でもそう簡単には変わらないものですよね。さてこの図1をみてください、この幾重にもなった層は、外側にいくほど変えやすいもの、内側にいくほど変えにくいものです。
仕事をしていると、相手に対して「もう性格変えて欲しい!」などと思うことはないですか?でも性格は変える必要などないのです。この図の一番外側にあるのは「役割行動」です。これは意識一つで変えられます。他人は相手の性格や性質など簡単には理解できません。他人が判断するのは「見た目と言動」です。だから、言動を変えれば良いのです。

図1:行動変容の概念図
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図1:行動変容の概念図

知っておきたい“コンピテンシー”→成果を出せる行動特性

ではどのように言動を変えれば良いのでしょうか?その時に役に立つのが“コンピテンシー”です。これは人間の能力開発の目的で、膨大な数の「仕事のできる人」の行動特性を調べ、それを分類して生まれたものです。つまり「仕事ができる人」の具体的行動例であり、この行動の発揮こそが「能力」として認知されるのです。
このコンピテンシーは、下の図2のように5つのエリア(リーダーシップ、業務管理、意思決定、コミュニケーション、個人特性)で構成されており、それぞれのエリア(領域)の中に、より具体的なコンピテンシーが属しています。この5つは世界共通のマネージャー(管理者)のコンピテンシーエリアと言われています。
筆者もかつて、薬剤師管理者のコンピテンシーモデルを構築する研究をしましたが、この5つのエリアは普遍でした。

図2:コンピテンシー5エリア構造
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図2:コンピテンシー5エリア構造

“デキる人”はどんな行動をとっていますか?

さて、あなたの周りの“デキる人”を思い浮かべてみてください。その人のことをどうして“デキる”と思うのでしょうか? つまりその人はどんな行動をとっていますか?
例えば、「Aさんはどんなに外来が混んだ時でもきちんと時間内に仕事を終わらせるし、周りの人の気持ちをくみ取りながら仕事をしていて、いろいろな困難があってもいつの間にかきちんと目標を達成しているのです。」と思い浮かんだとします。するとAさんの言動はすべて、コンピテンシーの発揮として以下のように説明できるのです。

仕事を時間内に終わらせる
業務管理力(業務管理エリア)の発揮
周りの人に思いやりをもって接する
対人感受性(コミュニケーションエリア)の発揮
目的に向かって粘り強く仕事をしている
目的志向性(個人特性エリア)の発揮
問題がおきても乗り越えていく
問題解決力(意思決定エリア)の発揮

常に発揮しているコンピテンシーが「強味」

コンピテンシーは、常に発揮しているものを「強味」と考え、発揮がみられないものを「ウイークポイント」あるいは「改善点」と考えます。その人の「強味」と「改善点」をプロファイルすることを「ヒューマンアセスメント」と言い、企業ですと2-3日程度をかけて様々な演習を通してアセッサーと言われる資格者が観察分析して判断します。このときコンピテンシーは明らかにされているものだけでも100以上もありますが、評価される人の職業、職位で求められる能力を、5エリアから選び、10-16程度のコンピテンシーに絞った「コンピテンシーモデル」を作成し、その基準で分析されることになります。
今回はコンピテンシーになじむために簡単な自己チェックをしてみましょう。次のの文章を読みながら、該当するところをチェックしてみてください。文章の横のカッコの中にコンピテンシーの名前とエリアが記載してあります。

表:クイックチェックシート *部下、後輩を一緒にして後輩とする

言動 あてはまる ややあてはまる あてはまらない
1 自分の役割や方向性を理解し、後輩へいつもそれを伝えようとしている(影響力:リーダーシップエリア) 2 1 0
2 指導しやすい後輩はもちろん、そうでない後輩であっても、良いところを見つけ伸ばしている(育成力:リーダーシップエリア) 2 1 0
3 後輩の能力を信じられるし、仕事を任せようとする(エンパワーメント:リーダーシップエリア) 2 1 0
4 相手の思うことに心を配りながら、自分も伝えようとしている(対人交流力:コミュニケーションエリア) 2 1 0
5 相手の話を気持ちもとらえながら、じっくりと真剣に聴き、対応するようにしている(傾聴力:コミュニケーションエリア) 2 1 0
6 業務や研究などで組織内外の人と積極的にコンタクトをとるようにしている(ネットワーキング:コミュニケーションエリア) 2 1 0
7 仕事を整理し、優先順位をつけて振り分けができる(計画組織力:業務管理エリア) 2 1 0
8 3年先、5年先に自分や自分の職場がどうなっているか具体的にイメージできる(ビジョニング:業務管理エリア) 2 1 0
9 自分と他のメンバーが効率的で質のいい仕事ができているか把握できる(業務管理力:業務管理エリア) 2 1 0
10 問題にぶつかったとき、よく情報を集め、考えて解決行動に移している(問題解決力:意思決定エリア) 2 1 0
11 新しいことを始めるときも、リスクを含み済みで一歩踏み出せる(決断力:意思決定エリア) 2 1 0
12 常に患者さんがどうすれば満足するか考えながら行動し、工夫している(顧客満足力:意思決定エリア) 2 1 0
13 困難があっても目的達成のためにはあきらめない(目的志向性:個人特性エリア) 2 1 0
14 仕事や人間関係において誠実を心がけ筋を通すほうだ(統合性:個人特性エリア) 2 1 0
15 常に自分を高め成長させることを意識している(自己開発力:個人特性エリア) 2 1 0

職位によって強く発揮すべきコンピテンシーがある

いかがでしたでしょうか?2点がついているところがいわば「強味」であり、今後もずっと発揮していきたい点ですね。
今回は、15のコンピテンシーでみてもらいましたが、実は職位によって強く発揮すべきコンピテンシーがあります。例えば、組織のビジョンやネットワーキング、決断力などは職位が上がる程しっかりと発揮すべきですし、傾聴力もそうです。私が多くの薬剤師のアセスメントを行った経験では、薬剤師は傾聴力、顧客志向性、業務管理力、問題分析力は優れていますが、実行を伴う問題解決力はやや弱く、リーダーシップは大きな個人差がありました。

「強味」は伸ばし、「改善点」は意識して行動する

今回の自己チェックをいかしつつ、能力開発の計画を立てられると良いですね。
そのためには、

  • 具体的な目標を(言動が変化した状態をイメージ、数値で測れたり、客観的に評価できるもの)期限付きで立てる。
    (期限は必要、最長6ヶ月で必ず見直す)
  • 目標設定にはロールモデル(あの人みたいになりたい)があるとよい。その人の言動をまねることが能力開発になる。
  • 支援者を見つけること。
が効果的とされています。

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