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maruho square 保険薬局マネジメント:老人介護施設における薬局薬剤師の役割


本人あるいは家族や介護者などによる個人宅での薬剤管理とは異なり、老人介護施設では一人の介護者が複数の入居者の薬剤管理を行うという点で特別な注意が必要となる。株式会社メディカル一光 久居センター薬局(本社:三重県津市、2019年10月現在、中部・関西地域を中心に調剤薬局を95店舗展開)では、老人介護施設における薬剤管理の問題点や特性を整理・検証し、安全性、有効性、効率性、経済性の高い薬学的管理をめざしている。その実際とメリット、今後の展望について、久居センター薬局で老人介護施設の薬剤管理を担当されている薬剤師の多田先生に伺った。

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株式会社メディカル一光 久居センター薬局 薬剤師 多田 洋平 先生
  • 株式会社メディカル一光 久居センター薬局 薬剤師 多田 洋平 先生

約10年前から老人介護施設の薬剤管理を開始

株式会社メディカル一光は、1985年に三重県津市に調剤薬局1号店を開設して以来、中部・関西地域を中心に調剤薬局事業を展開してきた。また2005年からはグループ会社(株式会社ハピネライフ一光など)がヘルスケア事業を立ち上げ、有料老人ホームやグループホームなどの居住系介護施設のほか訪問介護事業所やデイサービスなどの在宅系介護事業所を運営している。
このような中、久居センター薬局では、約10年前から、近隣に開設されたグループ会社の住宅型有料老人ホーム(定員:35名)の薬剤管理を行ってきた。そのきっかけは、「開設当初は、看護師一人で薬剤を管理し、看護ヘルパーが入居者に薬を飲ませるという状況で、誤薬に繋がるケースも危惧されたことから、当薬局で薬剤管理を行うことにしたようです」と話す。その後、久居センター薬局は、新たに開設された介護付き有料老人ホーム(定員:60名)の薬剤管理も担うようになり、医師の訪問診療の同行をはじめ、安全性、有効性、効率性、経済性の面から様々な取り組みを行い、薬剤管理の質向上に努めてきた。

久居センター薬局(津市久居明神町風早2091-1)
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久居センター薬局(津市久居明神町風早2091-1)

複数医療機関の併用薬の一元管理や分包紙の使い方の工夫で安全性を向上

現在、久居センター薬局には、常勤・非常勤を含めて12名の薬剤師が在籍しており、近隣に開設されたグループ会社の住宅型有料老人ホーム、介護付き有料老人ホームの入居者全員の薬剤管理を行っている。担当者が増えれば情報がばらつくことが危惧されるため、基本的に多田先生1人で担当し、バックアップとしての薬剤師1名で両施設の管理を完結されている。その中で居宅療養管理指導を行っているのは、訪問診療医の指示や施設側の希望、あるいは多田先生ら薬剤師側からの提案をきっかけに、特に体調管理や薬の指導が必要な方で同意を得られた一部の入居者に絞っている。薬局内の他の業務と施設在宅の両立を行うために、必要な方に限定しているとのこと。居宅療養管理指導料を算定しているか否かの違いは、契約者を直接訪問して体調確認を行い、患者訪問計画書及び訪問薬剤管理指導報告書の作成を行うかどうかで、薬剤管理そのものはほぼ同じだと話された。

老人介護施設の薬剤管理にあたって、集合住宅という点で効率的である反面、介護ヘルパーが多くの入居者の服薬介助にあたるため、安全性の面で特別な注意が必要になる。そのため、介護ヘルパーによる飲ませ間違い・飲ませ忘れに繋がらないように、分包紙を駆使して、同じ服用時間の薬剤は、複数医療機関から処方されている場合でも、全てまとめてテープのりで貼り合わせて、「この方には、この時間に、これだけの薬を飲ませればよい」(図1)という状態まで薬剤を1つにまとめているそうだ。

具体的には、

  • 分包紙に氏名、用法、服用日、医療機関名を印字し、その際、同じ名字の入居者がいれば、例えば「松本、マツモト、まつもと」といった具合に漢字、カタカナ、ひらがなを使い分ける。
  • 分包紙に朝は赤、昼は青、夜は緑、就寝前は黄のラインを引き、服用時間を視覚的に分かるようにする。
  • 一包化できない貼付薬や外用薬などは「空包」に氏名、用法(例:朝に貼り替えるなど)、使用日、医療機関名を印字し、漢方薬や吸湿性のある薬剤はシートのまま、同じ服用時点の薬剤とともに分包紙にテープのりで貼り合わせる。
  • 例えば、下痢などの時に中止して欲しい酸化マグネシウムは他の薬剤と一包化せず、別の分包紙に入れ、「下痢の時は中止」の注意書きを入れる(図1)。

また、処方日数が異なる薬剤は、薬局側では調剤室にある『日付管理表』で、施設側では分包紙に直接記載したり、カレンダーに付箋を貼り、「A病院のB薬は○月○日までセットされている」ことが分かるように管理されている。
その上で、飲ませ間違い・飲ませ忘れを防ぐために、服薬介護者及び入居者の方に、服用前に「誰々さんですね。何月何日、朝の薬ですよ」と印字を見ながら確認をとってもらうことで、より安全性の向上をめざされている。

図1:服用時ごとの分包紙と「日付管理表」
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図1:服用時ごとの分包紙と「日付管理表」

施設の看護師と連携、訪問診療の同行により薬剤管理の有効性、効率性を向上

医師の訪問診療前に、施設の看護師から『体調表』(図2)を受け取り、それをもとに看護師と打ち合わせをし、入居者1人ひとりの体調や薬の効果や副作用などを把握されている。医師の訪問診療時には、『体調表』及び薬がどのような理由で変更されたかなど、これまでの薬歴が分かる『シール帳』を持参し、医師に対して的確な情報提供と処方提案が行えるようにされている。
訪問診療の同行後には、医師とのやりとりや、今回の変更を含めた処方内容を医師に提出し(図2)、医師が間違いなく処方箋を発行できるように支援されている。また、施設の看護師へ入居者ごとに処方された薬剤についての注意点や指導の要点をまとめた『指導表』(図2)を渡すことにより、薬物療法の有効性、安全性が高まるとともに、情報提供の効率化をはかられている。薬局としても、一部の入居者に対する居宅療養管理指導料しか得られず、収益性においてマイナス面が大きかったが、居宅療養管理指導料算定者以外の入居者全員の薬剤服用歴管理指導料を算定することができるようにした。

図2:「体調表」「処方メモ」「指導表」
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図2:「体調表」「処方メモ」「指導表」

薬剤師としてのやりがいを医療や薬局の経済性にも繋げる

薬剤管理の安全性、有効性、効率性の向上をめざしながら業務改善を行ってきた結果、「医師の処方箋をそのまま受け取るのではなく、看護師との連携により入居者の体調を把握し、訪問診療の同行により医師の処方意図を理解した上で、医師と薬物療法について話し合い、薬剤師として入居者にベストな薬を提案できるような関係を構築できたことに、薬剤師として職能を活かせていると実感し、やりがいを感じています」と話す。こうした医師・看護師-薬剤師の信頼関係を基盤に、6剤以上の薬剤をDo処方で継続されている入居者の処方内容を看護師とともに見直し、医師に対して書面にて減薬も提案されている。後発品への変更についても医師と打ち合わせを行った上で、入居者に対して説明を行い、医療費削減にも貢献されている。
多田先生は、老人介護施設における薬剤管理は、「薬剤師の職能を活用し、医療連携を行いながら取り組むことが医療の安全性、有効性、効率性に貢献できる」ことを強調した上で、今後も、減薬提案や後発品への変更などを介して医療費の削減をめざし、国の経済性に貢献するとともに、居宅療養管理指導料、服用薬剤調整支援料をしっかり算定していくことで薬局の経済性にも貢献していきたいと抱負を語った。

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