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maruho square 薬薬連携特集:抗癌剤治療の薬薬連携における、Grade評価に基づいた情報提供実施への取り組み


  • 日本調剤株式会社 日本調剤 船井薬局 薬剤師 本田 賢 先生

はじめに

薬剤師の対人業務の重要性が議論される昨今、調剤薬局における業務の中、薬薬連携の重要性が浸透し、疑義照会に留まらず服薬情報等提供書(情報提供書)や在宅訪問における居宅療養管理指導報告書など、外部の医療従事者への情報提供の機会は増している。
情報提供を行うにあたり、有害事象の有無や患者の訴えを伝達しただけでは、そこに薬剤師が関与している必要性が問われるだろう。従って、薬剤師としての専門性・知識に基づいた情報提供が求められている。
有害事象の報告であれば、症状の有無だけでなく、その程度の判断が求められ、その評価にはCTCAEに基づいたGrade評価が適していると考える。また、患者の訴えをまとめ、副作用がQOLに大きな影響を与えていないか、それを緩和するための処方提案が必要かどうかを判断する必要があるだろう。

CTCAE(Common Terminology Criteria for Adverse Events):有害事象共通用語規準。米国主導の世界共通で使用される有害事象に関する評価基準。日本語版はJCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)がインターネット上で公開。一例として、嘔吐であれば24時間以内の嘔吐回数によってGrade判別を行う。日本臨床腫瘍研究グループ「有害事象共通用語規準v5.0日本語訳JCOG版」
http://www.jcog.jp/doctor/tool/ctcaev5.html

Grade評価補助資料の導入

当薬局では門前病院の薬剤部と連携し、医師の求めの下、抗癌剤の服薬指導後に情報提供書を提出している。そこでは各有害事象のGrade評価に加え、服薬指導の内容、支持療法として用いる薬剤の有効性や使用状況、処方提案など、薬局薬剤師としての意見を添えてFAXで情報提供し、追って病院薬剤部から返答を受け取る形となっている。
理想は全薬剤師が各有害事象のGrade評価基準を熟知し、服薬指導に臨むことだが、まず有害事象の種類が多く、CTCAEで公表されている判断基準の正確な暗記は敷居が高い。また、調剤薬局は職員の流動性が高く、新卒薬剤師や他業種からの転職者はもとより、経験を積んだ薬剤師でも勤務先の変更で応需する処方箋が変わることで服薬指導に難儀することがある。故にまずはGrade評価というものを理解し、その判断の容易化を目的とし、頻度の高い有害事象10個に絞り、CTCAEの基準を簡易化したGrade評価補助資料(補助資料)を導入した(図1)。

図1:Grade評価補助資料
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図1. Grade評価補助資料

導入後の結果

補助資料の導入前後2ヶ月で比較したところ、情報提供書におけるGrade評価の記載割合は増加し、意見欄では有害事象の度合いに触れているものや、対症療法薬の使用状況などの記載が増え、一定の効果を示したと思われる。(図2、図3
図2:取り組み前後での比較
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図2. 取り組み前後での比較
図3:コメントの変化
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図3. コメントの変化

Grade評価補助資料の改良

一方で、薬剤ごとに生じやすい有害事象は異なり、その把握は容易ではないこと、患者に各有害事象すべてを確認することは体調・待ち時間によっては難しいことなど、薬局職員からは現状の補助資料では不充分とする意見も得られた。また、先述の通り、病院薬剤部から支持療法薬の使用状況を確認するよう求められていることも考慮し、現在では処方頻度の高い薬剤に関し、有害事象を発生率順にリストアップし、各有害事象に対し優先して確認すべきポイントを加えた、改訂版の補助資料を用いている(図4)。情報提供書の蓄積、そこから問題点を抽出し、そのつど改良を重ねていくことで、服薬指導の質を保つ助けになることが期待できる。

図4:改訂版 補助資料

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図4. 改訂版 補助資料
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図4. 改訂版 補助資料

病院薬剤部との更なる連携

現在では病院薬剤部と連携し、手足症候群の発症リスクが高いカペシタビン処方時に、保湿剤やステロイド剤の処方歴が無いことが確認された場合、疑義照会を待たず規定の外用剤セットを調剤・交付し、服薬指導後に病院薬剤部にFAXで報告するというプロトコルを策定中である。現時点で選択されている保湿剤はヘパリン類似物質油性クリームだが、季節や患者の要望に応じて同ローションへの変更を、薬局薬剤師の判断で可能とする。ステロイドはstrongクラスのベタメタゾン吉草酸エステルで、Grade2以上の発症で塗布開始するよう指導する取り決めである。塗布してもなお改善しない場合にはステロイドの切り替えが必要と判断し、受診勧奨・処方提案を行う。その確認を行うにあたり、昨今話題となっているテレフォンフォローを有効活用するにはまたとない場面となる。
上記は患者だけでなく主治医の負担をも軽減できる取り決めであり、薬薬連携を続けて信頼関係を構築したことで、チーム医療の連携が強化された事例であろう。有害事象の相談に対し、プロトコルによる処方対応という新たな一手を得た。これを活用し、広げていくことが今後の目標となる。

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