メインコンテンツに移動

maruho square 薬薬連携特集:かかりつけ薬剤師の立場から~地域連携・薬薬連携にお薬手帳の活用を推進しよう~


超高齢化社会が加速する中、医療圏ごとに、医療・看護・介護を担う多職種連携を推進するため、『医療・介護連携シート(連携シート)』の活用が図られている。また、介護を必要とする入院患者が、疾患を問わず、必要な相談や介護サービスを受け、安心して在宅や施設に戻れるよう、医療と介護の連携強化をめざした『医療・介護の入退院ルール(入退院ルール)』が策定されている。総合メディカル株式会社(本社:福岡県福岡市)そうごう薬局新倉敷店が位置する岡山県南西部倉敷地域(倉敷・総社・早島)でも連携シートや入退院ルールが稼働している。しかし、「いずれにも薬局薬剤師が明確に示されておらず、医療・介護の情報連携にうまく参入できていない」と指摘する同店(薬剤師)の岡野泰子先生。その現状と問題点、解決策や今後の展望などを伺った。

記事/インライン画像
総合メディカル株式会社 そうごう薬局 新倉敷店薬剤師 岡野 泰子 先生
  • 総合メディカル株式会社 そうごう薬局 新倉敷店 薬剤師 岡野 泰子 先生

介護認定を受けている外来通院患者が増加 薬局薬剤師とケアマネの連携が必須に

岡山県南西部倉敷地域の連携シートや入退院ルールについて、薬局薬剤師からみた問題点は何ですか。
【岡野】在宅医療を受けている患者さんは、多職種で構成された在宅ケアチームが介入しており、入退院があっても医療・介護の情報が共有され、必要なサポートが円滑に提供されます。一方、外来通院の患者さんの場合、入退院があっても、基本的には在宅ケアチームのような介入はありません。しかし、最近は、退院後に介護が必要になったり、既に介護認定を受けられている方が増えており、地域の医療・介護スタッフが連携・情報共有し、入退院時を含めたシームレスな支援が求められるようになりました。
当店が位置する医療圏でも、医療・介護連携の情報司令塔であるケアマネジャー(ケアマネ)が、入院時には病院担当者に連携シートを提出し、入院中や退院後のサービスの調整をしています。また、退院に向けてカンファレンスが実施されたりと入退院支援ルールができています(図1)。このような中、薬局薬剤師は、居宅療養管理指導を行うほどではないが、ケアマネと情報共有し、地域の医療・介護スタッフ、特に病院薬剤師と連携しながら、入退院時やその後の薬物療法が安全かつ効果的、効率的に行われるようにサポートする役割を担っています。
図1:入退院支援ルールの概要
記事/インライン画像
図1. 入退院支援ルールの概要

福井県入退院ルール 情報共有の基本的な流れ より

ところが、現実的には、薬局薬剤師は担当ケアマネの把握ができておらず、ケアマネから患者さんの入退院時の情報を入手できていないことが少なくありません。また、ケアマネからは、「患者さんの『お薬手帳』を見ても、複数の薬局が記載されており、どの薬局に連絡・相談すればよいのか分からない」という声が挙がっています。したがって、病院薬剤師や医療ソーシャルワーカーは、入院前の服薬履歴や退院後の薬剤管理をどこの薬局にお願いすればよいか分からないという状況です。
これは、当医療圏の連携シートにかかりつけ薬局/薬剤師の記入欄がなく、ケアマネが薬局/薬剤師を認識しづらいからだと思います。実際、連携シートにかかりつけ薬局/薬剤師の記入欄がある医療圏では、地域・薬薬連携が進んでいると聞いています。当医療圏でも、まずは連携シートにかかりつけ薬局/薬剤師の記入欄を設けることが大切だと思います。
そうごう薬局 新倉敷店(岡山県倉敷市玉島上成539-7)
記事/インライン画像
そうごう薬局 新倉敷店(岡山県倉敷市玉島上成539-7)

『お薬手帳』を薬局薬剤師とケアマネ、病院薬剤師の情報連携に活用

連携シートにかかりつけ薬局/薬剤師の記入欄がない現状で、どうされていますか。

【岡野】普及はしていませんが、「もしもの入院に備えて」というリーフレットを医療圏が作成しており、その中に「受診・入院時セット」があります。その一覧に『お薬手帳』も入っています。私は、この、『お薬手帳』を活用し、ケアマネや病院薬剤師などの他職種との情報連携に活用すべく、取り組むことにしました。
ケアマネとの場合、「薬のことで悩んでいるが、相談先が分からない」ことがあります。そのため、ケアマネが気軽に薬局に連絡をとれる関係を構築しておく必要があります。私は、患者さんに「ケアマネに私がかかりつけ薬剤師であることを伝え、ケアマネの名刺をもらって『お薬手帳』に挟んでおいてください」とお願いしています。その上で、私からケアマネに挨拶の連絡を入れ、薬から予測される体調変化(例:利尿剤追加により排泄失敗の可能性、降圧剤開始により脈拍変化の可能性など)を通所介護施設に伝えたり、通所介護施設から血圧や脈拍の情報提供をお願いしたりしています。ケアマネとの距離が縮まることにより、薬学管理に必要な患者さんの生活背景や院内処方薬などの情報を頂けるようになってきています。
病院薬剤師との場合は、入退院時の薬剤情報提供に手段や内容の基準がないことで連携しづらいのではと思います。患者さんに「入院の際には必ず『お薬手帳』を病院薬剤師に見せてください」とお願いします。『お薬手帳』の最初のページに歯科・眼科の定期検診の有無や骨粗鬆症の注射、治療の追跡が必要なことなどのサマリーをご本人やご家族と一緒に確認しながら記載するとともに、5年ごとに実施する肺炎球菌ワクチンの接種有無を『お薬手帳』の表紙に貼ることにしました(図2)。これにより、病院薬剤師が『お薬手帳』に退院時処方を貼ってくれたり、患者さんの持参薬の情報や入院中の薬剤中止理由などを記載してくれたりするようになりました。この連携により、得られた薬剤中止理由などの情報から、かかりつけ医に的確な疑義照会が可能となり、シームレスな薬物療法を提供できるようになったと感じています。
今、薬剤師ができることとして、『お薬手帳』の活用があります。『お薬手帳』にケアマネやかかりつけ薬局/薬剤師や医師および患者さんの薬物療法に必要な情報を記載し、『お薬手帳』が更新されれば、新しい『お薬手帳』にその情報のコピーや、添付したシールを引き継ぐことにより、有用なツールになると思っています。

図2:記載例
記事/インライン画像
図2. 記載例

患者さん自身が『お薬手帳』を人生の記録のように使うことで自助力の向上に

最後に今後の展望をお聞かせください。
【岡野】地域包括ケアシステムは「自分の住みたい地域に住み続ける」ことの自立支援ですが、災害やいろいろな事情で移住しなければならない時があります。その時に引き継がれる情報として主治医意見書はありますが、3院、4院と複数医院を利用している場合漏れる情報があります。それを補完できるのが『お薬手帳』だと思っています。人生、お薬無くしては生きていけないので、患者さんには「『お薬手帳』は人生の記録ですから、行った先でも役立ちますよ」と大切なツールであることをお伝えしています。
そして、例えば、薬を服用して『口が乾いた、便秘をした』などの情報も記載するように勧めています。患者さん自身の自助力も高められるようにアプローチしていければと思っています。また、この自助力を育めるのは薬局薬剤師であると思っています。

お問い合わせ

お問い合わせの内容ごとに
専用の窓口を設けております。

各種お問い合わせ

Dermado デルマド 皮膚科学領域のお役立ち会員サイト

医学賞 マルホ研究賞 | Master of Dermatology(Maruho)

マルホLink

Web会員サービス

ページトップへ