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第2回 貼付剤の歴史~誕生から今日にいたるまで


    監修:
    • 鈴鹿医療科学大学薬学部 病態・治療学分野 臨床薬理学研究室 教授 大井 一弥 先生

    貼付剤と皮膚

    皮膚という観点から、貼付剤や貼付剤と皮膚の関係などについて、読んで楽しく、役立つ情報を紹介します。

    古代~中世

    貼付剤の歴史は紀元前までさかのぼります。紀元前1000年頃のバビロニアの時代、医学的な治療は呪術的宗教儀式とともに行われていました。当時の記録には、現在の英語でパップ剤を意味する「poultice」との記載が残されています。食用植物をすりつぶして、水やシナモンの汁、牛乳などを加えてペースト状にしたものを皮膚に貼り付けて使用していました。
    “医学の父”“医聖”と称された古代ギリシャの医師ヒポクラテス(紀元前460~377年)が活躍した古代ギリシャ文明の時代には、当時最大級の競技会である古代オリンピックが開催されるなどスポーツが盛んに行われており、負傷に対する治療として、痛みや腫れの治療に塗り薬や貼付剤などの外用剤が使用されるようになりました。外用剤には主に水・酢・酒・油などが用いられていました。
    「パップ剤」「プラスター剤」という言葉もこの頃生まれたとされています。パップ剤とプラスター剤の違いは水分の有無で、パップは泥もしくは泥状、プラスターは石膏を意味します。
    我が国では、平安時代に著された現存するわが国最古の医学書である「医心方」に、“生薬を細かく割り、竹簡で覆ったものを患部に貼ると傷が癒える”との記載が残されており、これが貼付剤に該当すると考えられます。
    戦国時代になると、武将が戦で負った傷の治療に、数種類の生薬とごま油を混ぜ合わせたものを和紙に塗り、患部にあてて使用するようになりました。この薬には血行促進、消炎、鎮痛などの効果があったようで、現在でも使用されています。

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    貼付剤の歴史 古代~中世

    近代~現代

    20世紀初頭に入ると貼付剤に大きな変化が起こり、昭和初期には水分を多く含んだ泥状のパップ剤が誕生しました。1934年には米国で開発された「白陶土巴布剤(カオリンパップ)」が日本薬局方に収載されました。カオリンパップとは、吸着性の高いカオリンを主成分とした泥状のもので、布に塗りのばして患部に貼付していたため、大変手間のかかるものでした。
    1970年代に入り、布と薬剤が一体化して簡単に使用できるように成形されたパップ剤が誕生しました。サリチル酸製剤が配合され、貼付時の感覚によって温感タイプと冷感タイプに分類されています。
    さらに、1980年代に入ると非ステロイド性抗炎症薬の貼付剤が承認されました。以後、全身作用型、局所作用型のさまざまな貼付剤が開発され、その簡便さから目的に応じて広く治療に使用されるようになっています。
    今後も、患者さんのQOL向上を目指した貼付剤の開発が期待されます。

    記事/インライン画像
    貼付剤の歴史 近代~現代

    なお、第15改正日本薬局方からは、「貼付剤」の名称は「局所作用型外用剤」に限定され、全身血流によって標的器官に薬物が送達され、薬効を発揮する外用剤は「経皮吸収型製剤」として分類されています。

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