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静脈留置針穿刺時を含めた透析時の疼痛緩和のコツ:第2回 保冷剤を用いた疼痛緩和のコツ


    静脈留置針穿刺時を含めた透析時の疼痛緩和のコツ

    透析患者さんへの穿刺を行っている医療従事者の方にインタビューを実施し、各施設で透析患者さんの疼痛緩和のために行っている工夫やコツを紹介します。

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    進藤 良子

    透析を1日おきに行わなければならない患者さんの苦痛を考え、
    できる限り痛みを軽減し、苦痛のない透析治療が行えるよう、
    対応していきたいと考えています。

    JA長野厚生連 篠ノ井総合病院
    泌尿器科 看護部(元人工腎センター看護部主任)
    進藤 良子 氏

    善光寺平と呼ばれる長野盆地の南に立地するJA長野厚生連篠ノ井総合病院の人工腎センターは、同時透析84床の長野県でも屈指の規模を誇る透析施設です。
    今回は、長年透析治療にあたってこられた元人工腎センター看護部主任(現、泌尿器科)の進藤良子氏に、透析中に起こる痛みの特徴や保冷剤を用いた疼痛緩和法などについて伺いました。

    長年にわたり地域の透析治療に貢献

    人工腎センターの特徴を教えてください。

    篠ノ井総合病院の人工腎センターは、1971年に開設された歴史のある透析施設です。透析施設の数が限られていた頃は遠方からの患者さんも受け入れ、長年にわたり近隣地域の透析医療に貢献してきました。
    また、近年の透析患者の急増に伴って増床を重ねた結果、84床を擁する県内でも有数の大規模透析施設へと成長し、血液透析を中心に内シャントの手術や詰まりかけた血管の造影などを行っています。さらに、腹膜透析(CAPD)室も備えており、CAPDの導入や定期外来を開設しています。
    患者数は血液透析約230名、CAPD約40名で、1日に111~121名の患者さんが血液透析に通院しています。また、スタッフは常勤医師3名、臨床工学技士13名、看護師23名より構成され、2サイクル(午前と夜)で透析診療を行っています。

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    篠ノ井総合病院は、長野市南部にある地域密着型の総合病院。
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    西棟にある人工腎センター。広々とした血液透析室の他、腹膜透析室も備える。

    透析アミロイドーシスには温罨法(おんあんぽう)、穿刺に伴う痛みにはリドカインテープを使用

    透析中、シャント肢痛を訴える患者さんはどの程度おられますか?

    経験上、透析中にシャント肢痛を訴える患者さんは2割弱程度と感じています。シャント肢痛の原因として、除水に伴う血圧低下による血管の攣縮や、シャント肢を長時間動かさないことによる血行不良などが挙げられます。また、透析期間が長くなると透析アミロイドーシス(線維状の異常蛋白であるアミロイドが神経や関節などに沈着し、麻痺や関節炎などを起こす合併症)が起こりやすくなり、肩関節痛などの症状を訴える患者さんが多くみられるようになります。
    穿刺による疼痛には、穿刺に伴う痛みと、針が血管にうまく入らずに針先が血管壁に当たることにより持続的な痛みが起こる血管痛があります。穿刺に伴う痛みは、痛みに対する感受性に左右されやすく、個人差があります。血管痛は血管の形状や穿刺針の微妙な位置や向きに左右されるので、同じ患者さんであっても日によって状態が異なるなど予測が立てにくく、また、誰にでも起こりうる痛みです。

    これらの痛みを緩和するために、どのようなことを行っていますか?

    透析アミロイドーシスなどによる痛みに対し、温めると痛みが軽減するという患者さんには温罨法を行っています。また、穿刺に伴う痛みを訴える患者さんに対しては、リドカインテープなどの貼付用局所麻酔剤を用いています。

    保冷剤による冷却も穿刺痛に有効

    穿刺時の疼痛緩和に保冷剤を用いているとお聞きしましたが、この方法を導入したきっかけは?

    普段からリドカインテープを使用している患者さんに、たまたまリドカインテープを貼り忘れたことがありました。このような患者さんの穿刺の痛みを軽減する方法が他にないかと考えたところ、皮膚を氷で冷やすと感覚が鈍くなることを思い出し、保冷剤の使用を考案しました。

    保冷剤を用いた冷却の方法は?

    冷凍した保冷剤(ケーキなどの保冷に用いる8×9cm前後のもの)を2つ用意し、シャント肢の脱血を行う動脈側の穿刺部位と、返血を行う静脈側の穿刺部位の2ヵ所を冷やします。保冷剤が落ちそうな場合は、伸縮性のある止血バンドなどで固定します。
    十分な効果を得るためには、皮膚の表面を触って冷たいと感じるまで十分に皮膚温を下げる必要があります。皮膚温は気温が上がると高くなるため、夏場は冬に比べ冷却に要する時間は長くなります。
    また、動脈側であるシャント肢の血管がよく発達し、ミミズ腫れのように盛り上がっているような場合は皮膚温も高くなっているので、皮膚の表面温度を下げるために5分から長ければ10分近くの冷却時間を要することがあります。一方、静脈側は普通の静脈血管に穿刺するので動脈側ほど長い冷却時間は必要なく、冬場であれば30秒で効果が得られることもあります。このように動脈側と静脈側では冷却時間に差があるので、手順としては、まず動脈側から冷やし、皮膚温の低下がある程度認められてから静脈側の冷却を開始するのがよいと思われます。
    なお、シャントの手術後などでむくみが出ている場合は、冷やすと血行をさらに悪化させたり皮膚に刺激を与えたりする可能性があるので、この方法は避けた方がよいでしょう。

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    第2回 保冷剤を用いた疼痛緩和のコツ
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    冷却法のポイント

    保冷剤を用いた冷却法で、どのような効果が期待できますか?

    患者さんに10段階のペインスケール(0:全く痛みがない~10:かなり痛い)による痛みの調査を行ったところ、保冷剤による冷却を行わない時は7~8あったスコアが保冷剤の使用により0~1にまで低下し、穿刺の痛みを軽減することができました。
    保冷剤による冷却法はリドカインテープを貼り忘れた時の臨時的な使い方の他に、かぶれなどが原因でリドカインテープを貼れない患者さん、局所麻酔剤で効果が得られない患者さんへの疼痛緩和法のひとつとしても有効です。

    患者さんを緊張させないよう精神面にも配慮

    その他に疼痛緩和のために工夫していることはありますか?

    当センターの血液透析室は5つのブロックに分けられ、ブロックごとに臨床工学技士と看護師で構成されたチームがあります。さらにチーム内でペアを組み、一人が穿刺を行い、もう一人は機械操作や穿刺の介助を行うよう役割分担しています。患者さんと初対面のスタッフが穿刺を行うと、お互いに緊張しているため穿刺の痛みが強く感じられることがあります。

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    血液透析室の1ブロック。このようなブロックが横に5つ並ぶ。

    このような精神面への影響に配慮し、ペアを組む際、患者さんと面識のないスタッフは必ず患者さんのことをよく知っているスタッフとペアを組んで、しばらくの間は穿刺の介助にまわり、顔なじみになってから穿刺を行うようにしています。ペアを組む体制を取るようになったのは、穿刺を行う人と機械操作を行う人を分けた方が穿刺を清潔に行え、感染予防につながると考えたことと、透析操作をダブルチェックできるのでミスを防止できると考えたことが発端ですが、患者さんに安心感を与えるという意味で、疼痛緩和にも少なからず貢献しているのではないかと思います。
    その他にも精神面への気配りとして、穿刺を行う前に軽く会話を持ち、リラックスさせてから穿刺を始めるなどの工夫もしています。また、持ち物や行動に関する制限を設けず、3~5時間にわたる透析中、患者さんがゆったりとした気分で思い思いの時間が過ごせるよう心がけています。

    今後の展望を教えてください。

    当センターはブロックごとにチーム分けされているため、他のブロックのことは把握しにくい状態です。しかし、合併症やトラブルが起きたときにはブロックに関係なく、どのスタッフもすぐに対応できなければいけないため、患者さんの情報をスタッフ間で共有しておく必要があります。現在、個々の患者さんの穿刺部、シャントの状態や使用している薬剤などの情報を記録に残し、ファイルで管理して、必要な情報を誰が見ても一目でわかる状態にしています。しかし、患者数が多く共有化が徹底されていないところもあるので、情報交換をさらに密に行い、共有化を向上させていきたいと考えています。

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    今後の展開
    Clinic Data

    JA長野厚生連 篠ノ井総合病院
    〒388-8004
    長野県長野市篠ノ井会666-1
    TEL:026-292-2261

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