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疼痛の検査・診断


疼痛の評価

疼痛の強さの評価1, 2)

視覚アナログスケール(VAS)、数値評価スケール(NRS)、段階的スケール(VRS)、表情スケール(FRS)や、簡易疼痛質問票(BPI)を用いて評価します。痛みの感じ方は患者さんごとに異なるため、これらの指標を用いても他者と比較することはできませんが、1人の患者さんの疼痛の推移を追跡することで治療効果の判定に役立てることができます。

<VAS、NRS、VRS、FRS>
急性痛や術後痛など、臨床上、さまざまな状況下で最も使用される疼痛の強度尺度です。
VAS:100mmのスケールを用いて、左端(0mm)を「痛みがない」、右端(100mm)を「想像し得る最大の痛み」とし、患者さんの痛みの程度をあらわすところに印をつけてもらい、左端からの長さで評価します。
NRS:0~10までの11段階の整数値を用いて、現在の痛みがどの程度かを指し示す疼痛の評価法です。
VRS:「0:痛みなし」「1:軽度の痛み」「2:中等度の痛み」「3:重度の痛み」の4段階の中から痛みの程度を選ぶ評価法です。
FRS:3歳以上の小児や認知機能の衰えた方などに用いられます。平穏な表情から苦悶の表情までを簡略化した図でスケール化し、疼痛の強さを指し示す評価法です。
<BPI>
慢性疼痛の痛みの強度(24時間を通しての最大、最小、平均のNRS)や生活や気分の支障度を数値化するものです。0~10までの11段階の整数値を用いて、数値化して評価します。
疼痛の強さの指標
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疼痛の強さの指標

1983 Wong-Baker FACES Foundation.
www.WongBakerFACES.org. Used with permission.

疼痛の性質の評価1, 2)

侵害受容性疼痛は「脈打つような」「ズキズキするような」と表現されることが多く、神経障害性疼痛は「電気が走るような」「しびれるような」などと表現されます。また、「恐ろしい」「気分が悪くなるような」などと表現される痛みには、身体的要因以外の関与が疑われます。
このように、痛みの性質を評価することで、痛みの種類がわかり、適切な治療選択につながると考えられます。

<短縮版マギル疼痛質問票>
痛みの感覚的・情動的側面の尺度です。
それぞれの痛みの感覚的・感情的表現について、その強さを段階的に表し、合計点を評価します。

78項目の疼痛に関する質問数を22項目に減らしました(22項目のうち7項目は神経障害性疼痛に関する項目です)。質問数を減らしましたが、信頼性と妥当性は維持されています3)

<神経障害性評価ツール>
神経障害性疼痛の可能性を評価する目的で使用されるスクリーニングツ―ルです。
painDETECT、LANSS、神経障害疼痛スクリーニング質問票などがあります。
短縮版マギル疼痛質問票
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日本語 短縮版マギル質問票

疼痛による機能障害の評価1, 2)

疼痛によりさまざまな機能が障害されると、日常生活や生活の質に影響を及ぼします。こうした機能障害や生活の質の評価には、疼痛生活障害評価スケール(PDAS)、SF-36、EQ-5D、Nantes Criteriaが用いられています。評価ツールを用いることで通常の問診よりも詳細な聞き取りが可能となり、元の生活に戻ることを目指した治療や支援を検討するうえで有用な情報を得ることができます。なお、痛みの強さと日常生活の支障度は必ずしも一致しない場合があります。

<PDAS>
日常生活のさまざまな活動に、痛みがどの程度影響しているかを評価する20項目の質問からなります。
<SF-36>
健康関連生活の質(QOL)の質問票です。身体的側面のQOLと精神的側面のQOLの2つを評価するもので、身体機能、痛み、日常社会役割機能、活力など、8つの下位尺度から構成されます。
<EQ-5D>
健康関連QOLの質問票です。移動・身の回りの管理・活動・痛み(不快感)・不安の5項目で構成されます。
<Nantes Criteria>
会陰部痛の診断に使用が推奨されます。
疼痛生活障害評価スケール(PDAS)
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疼痛生活障害評価スケール(PDAS)

疼痛の心理的評価1, 2)

痛みは患者さんの不安や抑うつの原因となりえます。また、不安や抑うつは痛みに悪影響を及ぼします。特に、痛みに対して過度な恐怖心、無力感、注意のとらわれなどが強いと悪循環を繰り返すおそれがあります。
心理面の評価を行い、痛みに対する向き合い方などを患者さんと医療者が共に考えていくことが重要です。

<不安の評価>
常に不安になりやすい性質(特性不安)や一時的な状態での不安(状態不安)を定量的に評価します。
顕在性不安スケール(MAS)、状態-特性不安尺度(STAI)、抑うつ・不安スケール(HADS)があります。
<抑うつの評価>
うつ病のスクリーニングや重症度を評価する自己記入式質問票として、ベック抑うつ調査票(BDI)、ツンク式自己抑うつスケール(Zing's SDS)、HADS、GHQなどが一般的に用いられます。
<痛みの破局化思考>
痛みにとらわれて繰り返し考えたり(反芻)、痛みを必要以上に強い脅威ととらえたり(拡大視)、痛みに対してできることが何もない(無力感)といった思考をいいます。一般的に、破局的思考スケール(PCS)が用いられます。
<恐怖回避思考>
恐怖感から、痛みにつながる行動を自ら回避し、やがてそれが身体・精神の機能障害を引き起こし、痛みを遷延化する悪循環が生じます。恐怖回避信念質問票(FABQ)や運動恐怖のタンパスケールなどの評価表が用いられます。
<自己効力感>
自分の置かれた状況の中で、期待された結果を出すための必要な行動をうまく遂行できるという自信の程度を示します。慢性疼痛では、「痛みを自分自身で制御しようとする自信」と解釈され、痛み自己効力感質問票(PESO)を用いて評価します。
<その他の心理的評価>
ミネソタ多面人格調査票(MMPI)(550項目):パーソナリティの傾向(心気症、抑うつ、ヒステリー、精神病質的偏奇性、男子性・女子性、統合失調症、軽躁病、社会的内向性)の評価票です。
BS-POP:腰痛などの整形外科疾患の精神医学的問題を簡易的に評価します。MMPIとの相関が強いといわれています。
  1. 日本ペインクリニック学会 治療指針検討委員会 編:ペインクリニック治療指針 改訂第6版. 真興交易(株)医書出版部, pp3-5, 2019
  2. 日本ペインクリニック学会HP:痛みの基礎知識 https://www.jspc.gr.jp/igakusei/igakusei_hyouka.html (2022年8月閲覧)
  3. Maruo T et al: Pain Research. 28, 43-53, 2013

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