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薬局経営者に聞く:全店で電子処方箋の応需態勢完了、先行者利益獲得へ(3/4)


投資は先行者利益の獲得か最後尾追走かの二者択一

開発面では医療モールに力を入れておられます。

【田中】そうですね。ビレッジ型のモールです。今後は人口減が一層進み、2100年頃には日本の人口は江戸時代末期から明治維新の頃の3,000~4,000万人くらいになるとの推計があるほどです。従って長いレンジで将来を見通した場合、これまで経営が成り立っていた保険薬局の採算が、危うくなっていくことが想定されます。一方、人口が減るのですから当然、働き手も減少していきます。働き手の数の問題からも、保険薬局を運営していくのは難しくなるのではないかと考えています。

薬剤師1人で運営する小規模の薬局は、これからも経営を持続できる可能性が高いと見ています。当社の場合、薬剤師の育成という側面を考慮し、一人薬剤師の保険薬局は新設しないようにしています。相談する人がいない環境で仕事をするよりも、相談できる人がいる職場で仕事に向き合うほうが遥かに早く成長できると考えられるからです。上司でもライバルでも良いのですが、誰かと一緒に仕事ができる環境のほうが習熟性は高まるはずですし、患者さんにも安心を提供できます。今後は、モールのような形態でないと教育面を考えると成り立たなくなると思っています。

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医療モール
医療モール
これまで御社は、行政の動きを慎重に見極めてきたようにお見受けします。国の情報を意識的に入手するようにしているのでしょうか。

【田中】意識的に行政の動きをキャッチしているわけではありません。ただ結果として、最近の例では確かに、HPKIカードの取得は他社さんに比べると早かった様ですし、電子処方箋応需態勢も整えました。だからと言って、国の方針に全て合わせているわけではなく、私自身が「今後の正しい方向だな」と納得したものについては、素早く対応するように心掛けています。電子処方箋など医療DXの推進は間違いなく進めなければなりませんから、迷うことなく先行者利益を狙うようにしました。気を付けていることは、集団の真ん中にいて、身動き取れないような立場に追い込まれることです。これは厳に避けるようにしています。集団に埋もれてしまうと利益も薄くなりますし、集団を外から眺めることができず、大局を見失う恐れがあります。

企業にとって新しい分野への投資は二者択一しかないと、私は考えています。先行者利益を取るか、最後尾を歩いて他人が掘り起こしたものを最後に拾っていくかの二者択一です。例えば、集団の先頭を歩いていた人は、落ちているお金(チャンス)を先に見つけて拾うことができますが、集団の真ん中にいる人はお金が落ちていたとしても、拾うために立ち止まることもできない。しかし、最後尾を歩く人は前方を行く集団が掘り起こして、土の中から出てきたお金を拾える。

私は、日本という国の体質自体が、最後尾を歩くことに慣れ親しんできたのではないかと考えています。ですから、事柄によっては最後尾を歩くことを当社は厭いません。最近の例で言えば、最後尾に付いて行って良かったのは電子薬歴だったと思います。先発組にだいぶ遅れて参入したメーカーは、クオリティーの高い製品を安価に提供してくれました。こうした製品を導入した薬局は、有形無形の利益を得られたはずです。

「地域住民の相談ニーズを更に満たしていく」

先ほど、栃木県内の薬局事情について触れられましたが、今後を、どのように見通しておられますか。

【田中】保険薬局数だけを見て「飽和かどうか」を考えた場合、確かに飽和状態にあると思います。ただし、地域住民の相談ニーズを更に満たしていくなど、取り組み方次第によっては店舗を増やすことができると考えています。2024年度からスタートする第8期医療計画においては小児在宅を含む在宅医療の推進、高度薬学管理、24時間対応など保険薬局は新たな対応を迫られることになります。例えば当社も、現在の倍くらいの薬局数、つまり100店舗ぐらいの規模になっていれば365日・24時間営業の薬局を開設できたかもしれませんが、現状では薬局数・薬剤師数ともに十分ではないため、残念ながら実現できていません。ただ、現状を受け入れてばかりでは未来を変えることはできないので、率先して新しい取り組みには挑戦していきたいと考えています。先ほど、いずれ県内で20%とか30%のシェアを取りたいと申し上げましたが、そうした未来が来た時、365日・24時間営業する薬局を開設するなど新たなサービスを地域に提供していかない限り、いくらシェアを高めても企業の存在価値は上がらないように思います。

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株式会社ピノキオ薬局(栃木県) 代表取締役 田中 友和 氏
薬局の新規開設や撤退は難しいと思います。特に、撤退の判断は難しいのではないでしょうか。

【田中】そうですね。純粋に利益が得られなくなってきたという理由で、閉店することは難しいですね。大抵は当該薬局の将来像から逆算して検討するようにしています。「10年後、この店舗は存続できるのだろうか」という思考に始まり、利益は今後厳しくなるかもしれないものの、地域にとっては不可欠だから頑張って継続しなければならない、と判断するケースもあります。一方で、調剤を主体とする薬局は、近隣の医療機関の環境変化によって経営が大きく左右される側面のあることも事実です。先ほど、ドラッグストアに勤めていた頃の話をしましたが、個々のドラッグストアの力量は、立地と品揃えと売価の3要件でほぼ決まります。それをベースに推奨力とか接遇などの付加価値が加わり店舗全体の力量が決定されていく。一方で、調剤主体の保険薬局はどうしても、近隣の医療機関の盛衰に影響される傾向がある。明日、環境がどう変わるかわからないので、保険薬局は撤退の時期を判断することが極めて難しいのが実際です。

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