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アトピー性皮膚炎の検査・診断


    アトピー性皮膚炎の診断

    アトピー性皮膚炎の診断基準

    日本皮膚科学会の定義・診断基準では、症状の軽重によらず、1. 瘙痒、2. 特徴的皮疹と分布、3. 慢性・反復性経過の3基本項目を満たすものをアトピー性皮膚炎と診断します1)。除外すべき疾患を十分鑑別することが大切とされています(表11)

    表1:アトピー性皮膚炎の診断基準1)(文献1の表1からアトピー性皮膚炎の診断基準を抜粋)
    記事/インライン画像
    アトピー性皮膚炎の診断基準
    (文献3より引用)

    *ネザートン症候群:曲折線状魚鱗癬に結節毛を伴う常染色体劣性遺伝病で、アトピー素因を有し、アミノ酸代謝異常や成長障害を伴うことがあります。皮膚バリア機能が低下し、薬剤の経皮吸収が大きく増加することが知られています2)

    1. 日本アレルギー学会:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021. アレルギー 70(10), pp1257-1342, 2021
    2. 落合慈之 監修、五十嵐敦之 編集:新版 皮膚科疾患ビジュアルブック, 学研メディカル秀潤社. pp32-33, 36, 2012
    3. 日本皮膚科学会:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018. 日皮会誌, 128, pp2431-2502, 2018

    アトピー性皮膚炎の診断や重症度の参考になるバイオマーカー

    • 血清IgE値
      血清総IgE値はアレルギー素因を反映していると考えられています1)
      アトピー性皮膚炎の短期的な病勢の変化は反映しませんが、長期管理の評価指標になりえます1)
    • 血清特異的IgE値
      アトピー性皮膚炎患者はダニ、ハウスダスト、花粉、真菌、食物など複数以上のアレルゲンに対して感作されていることが多く、血清特異的IgE抗体検査を行うことでアレルゲンを検出できます1)
      特異的IgE抗体陽性と症状の誘発に必ずしも因果関係があるとは限らないことに留意し、十分な問診を行うことが重要です1)
    • 末梢血好酸球数
      アトピー性皮膚炎では気管支喘息やアレルギー性鼻炎など他のアレルギー疾患よりも末梢血好酸球増多がより著しいことが多く、重症度に相関して増加するので、病勢のマーカーとなり得ます1)
    • 血清LDH(乳酸脱水素酵素)値
      皮膚の炎症による組織傷害を反映していると考えられています1)
      皮疹が軽快するとLDH値が正常値に回復しますが、低下しない場合は組織傷害を起こす他の疾患の合併や鑑別を考慮します1)
    • 血清TARC(Thymus and activation-regulated chemokine)値
      アトピー性皮膚炎の病勢を好酸球やLDHよりも鋭敏に反映し、アトピー性皮膚炎のマーカーとして保険適用されています1)。年齢別の基準値があります1)
    • 血清SCCA2(Squamous cell carcinoma antigen)値
      血清SCCA2は、アトピー性皮膚炎の病勢を鋭敏に反映します1)。2021年2月に小児(15歳以下)で保険適用となりました1)
    1. 日本アレルギー学会:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021. アレルギー 70(10), pp1257-1342, 2021

    アトピー性皮膚炎の重症度評価

    全体の重症度評価

    本項では、アトピー性皮膚炎の全体の重症度評価指標のうち、本邦で主に用いられているものを解説します。

    重症度のめやす

    厚生労働科学研究班が開発した「重症度のめやす」は、アトピー性皮膚炎の重症度評価の手法の中で最も簡便なものです1)
    皮疹の重症度を軽度の皮疹、強い炎症を伴う皮疹に分類し、それらの体表面積によって軽症、中等症、重症、最重症と判定します(表21)

    表2:アトピー性皮膚炎 重症度のめやす1)
    記事/インライン画像
    アトピー性皮膚炎 重症度のめやす

    SCORAD(Severity Scoring of Atopic Dermatitis)

    国際的によく用いられている評価方法の1つで、臨床研究や臨床試験で汎用されています1)
    皮疹の範囲(%)、皮疹の強さ(なし、軽症、中等症、重症)、患者の自覚症状(瘙痒、睡眠不足それぞれ0~10の11段階)を評価します1)
    SCORADは103点満点で、重症度が高いほど点数が高くなります1)

    EASI(Eczema Area and Severity Index)

    SCORADと同様、国際的によく用いられている評価方法の1つで、 臨床研究や臨床試験で汎用されています1)
    全身を頭頸部、体幹、上肢、下肢の4つの領域に分けて、各領域における皮疹の重症度、皮疹面積を評価します1)
    EASIは72点満点で、重症度が高いほど点数が高くなります1)

    EASIスコア計算シート(https://www.maruho.co.jp/medical/articles/mitchga/easiscoresheet/index.html)

    皮疹の重症度評価

    アトピー性皮膚炎の診断では全体の重症度評価が基本ですが、使用する外用薬を検討するうえで局所の皮疹の重症度評価を行います1)。皮疹の重症度は、全体の重症度評価指標を用いて3~4段階に分類して評価します1)

    瘙痒の評価

    瘙痒の評価には、 NRS(Numerical Rating Scale)やVAS(Visual Analogue Scale)等の主観的評価方法や、搔破行動の程度と瘙痒の程度を評価するBehavioral rating scale(川島の判定基準)等を用います1)
    より客観的な瘙痒の程度を評価する手法として、腕の動きを時系列に記録して夜間の瘙痒の程度を推察できる腕時計型加速度計(ActiGraph®等)や、Apple Watch®に内蔵の加速度計を利用して就寝中の搔破行動をモニターして夜間の瘙痒の程度を推測できるItch Tracker®があります1)

    患者による評価

    患者、または患者の保護者が記入する質問表には、POEM(The Patient Oriented Eczema Measure)が用いられます1)
    患者による評価は医師による評価と相関するため、患者と治療目標を共有するうえで有用です1)

    QOL評価

    アトピー性皮膚炎では痒み、外見の問題、治療負担などでQOLが低下しやすく、QOLに配慮した診療のためQOL評価質問紙が用いられます1)。成人では、QOL評価質問紙としてSkindex-16やDLQI(Dermatology Life Quality Index)が利用でき、小児に対しては、DLQIの小児用であるCDLQI(The Children's Dermatology Life Quality Index)が用いられます1)

    1. 日本アレルギー学会:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021. アレルギー 70(10), pp1257-1342, 2021

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