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皮脂欠乏症の主な原因:透析


    監修:
    • 東京女子医科大学 名誉教授 川島 眞 先生

    乾燥が起きる機序

    透析患者では角層の水分保持機能は保たれているものの、恒常的に皮膚への水分供給が低下しており、これが角層水分量低下の原因と考えられます。さらに、長期にわたる透析期間に応じて皮脂腺や汗腺が萎縮して、皮脂や汗の分泌が低下することにより皮脂膜が十分に形成、機能できなくなります。それにより、特に皮膚表面の水分が減少し、粗造化を引き起こすと考えられます。このような変化が起こる疾患では、通常、経表皮水分蒸散量(TEWL)は皮膚バリア機能の低下を反映して上昇しますが、透析患者では変化が認められないか、健康成人に比べてむしろ低下しています。これは、透析患者では皮膚への水分の供給量が減少しているためと推察されます。

    経表皮水分蒸散量(Transepidermal water loss:TEWL):
    皮膚から蒸散する水分量であり、角層バリア機能の指標である。TEWLが高いほど皮膚バリア機能が低下していると考えられる。

    正常な皮膚

    透析患者の皮膚

    記事/インライン画像
    乾燥が起きる機序:正常な皮膚と透析患者の皮膚

    川島 眞 ら:腎と透析, 75(2), 275-281, 2013 より一部改変

    透析患者の皮膚の生理学的特徴

    角層水分量は乾燥皮膚の客観的指標の一つであり、乾燥症状と角層水分量は相関することが知られています。透析患者の全身の各部位の角層水分量は、痒みを有する透析患者のみならず痒みを有さない患者においても健康成人に比べて角層水分量が低下しています。特に、角層深層よりも角層表層の水分量低下が顕著です。

    試験概要

    対象
    健康成人10例(平均年齢55歳)、痒みを有する透析患者10例(平均年齢57歳)、痒みを有さない透析患者8例(平均年齢45歳)
    方法
    角層水分量を角層深層はCorneometer-820PC、角層表層はSkicon-200を用いて測定した。
    解析計画
    統計学的有意差検定は、Studentのt検定を行った。

    結果

    記事/インライン画像
    角層水分量

    Park TH et al.:Nephrol Dial Transplant, 10(12), 2269-2273, 1995

    特徴的な症状・疫学

    透析患者の皮膚症状としては、乾燥皮膚、色素沈着、そう痒、爪の異常などが認められ、特に、乾燥皮膚の発症頻度は90%以上と高く、湿度の低い冬季に悪化する傾向があります。
    一般的に、下肢から発現して、大腿部、背中、胸、上肢へ拡がります。患者が痒みによる掻破を繰り返すことにより、湿疹などの炎症症状につながることもあります。

    記事/インライン画像
    皮膚症状

    服部 瑛:皮膚病診療, 12(11), 1017-1024, 1990 より一部改変して作図

    痒みが起きる機序

    透析患者の主な皮膚症状である乾燥皮膚は痒みの原因の一つです。乾燥が進むと皮膚バリア機能の低下に伴い痒みを伝達する神経線維(C線維)が表皮まで伸長し、軽微な刺激でも痒みを感じやすくなります。

    正常な皮膚

    透析患者の皮膚

    記事/インライン画像
    痒みが起きる機序:正常な皮膚と透析患者の皮膚

    川島 眞 ら:腎と透析, 75(2), 275-281, 2013 より一部改変

    透析患者の保湿スキンケア

    透析患者の乾燥皮膚は、その特徴から皮脂欠乏症の一つである老人性乾皮症と類似しているため、皮脂欠乏症の一病型とみなしてよいと考えられます1)。したがって皮脂欠乏症に対する治療と同様に軽症のうちから保湿剤を塗布し、早期に症状を改善させることが重要です。

    1. 川島 眞 ら:腎と透析, 75(2), 275-281, 2013
    皮脂欠乏症とは(治療)

    乾燥皮膚は放置しても改善するものではなく、透析期間が長くなるにしたがって悪化します。乾燥皮膚を軽微な皮膚症状と捉えず、痒みや炎症を引き起こす原因となることを常に意識し、発症早期から保湿剤によるスキンケアを積極的に取り入れることが大切です。

    保湿スキンケアのポイント

    1.患者の皮膚をよく観察する

    患者の皮膚をよく観察し、乾燥している部位を確認します。

    記事/インライン画像
    患者の皮膚をよく観察する

    2.透析時に保湿剤塗布もあわせて行う

    患者が家で保湿剤を塗布できない場合、透析時に医療スタッフが保湿剤も塗布することも検討します。保湿剤は適正量を使用します。

    記事/インライン画像
    透析時に保湿剤塗布もあわせて行う

    3.保湿剤は広い範囲に塗布する

    保湿剤は広い範囲に、また体軸面に対して横方向に塗布します。

    記事/インライン画像
    広い範囲に塗布する

    4.シャント穿刺部位のケアを行う2)

    シャント穿刺部位は毎回の消毒、テープ剤による機械的刺激等に曝され、皮膚症状が発生しやすい状態です。シャント穿刺部位付近の皮膚状態の悪化はシャント感染の一因になる可能性があるため、皮膚状態を考慮した上でのケアが必要と思われます。

    5.足の観察およびフットケアを指導する3)

    透析患者の足部および下肢は、血流障害や皮膚の脆弱化、免疫能の低下などにより、受傷や感染のリスクがあり、難治性で重篤化しやすい傾向にあります。そのため入浴後など足を清潔にした後の保湿剤の塗布を習慣化させるようにします。皮膚の鱗屑が強い部分には保湿剤を適正量塗布するとともに乾燥しやすい爪甲も忘れずケアを行うように指導します。

    1. 小尾 学 ら:日血浄化技会誌, 18(3), 67-70, 2011
    2. 西田 壽代:日透析医会誌, 28(3), 458-463, 2013

    軽度の尿毒症性そう痒症に対する保湿剤を用いたスキンケアの影響 [参考情報]

    保湿剤を1日2回、2週間使用した群と使用しなかった群を比較したところ、保湿剤を使用しなかった群では変化がありませんが、使用した群は使用2週間後のそう痒と精神不安定の程度が保湿剤を使用しない群と比較し、有意差が認められました。(そう痒:p<0.01、精神不安定: p<0.05、いずれもWilcoxon t検定)

    試験概要

    対象
    血液透析患者20例(男性8例、女性12例、平均年齢67.2 ± 9.8歳、平均血液透析期間24.6 ± 5.6ヵ月)
    方法
    保湿剤を1日2回、2週間使用した群10例と使用しない群10例の使用前、使用2週間後、使用中止2週間後におけるそう痒と精神不安定の程度のVAS(visual analog scale)を測定した。
    解析計画
    すべての値は、平均値および標準誤差で表示した。そう痒と精神不安定の程度はWilcoxon t検定で分析された。

    結果

    図1:2群間におけるそう痒の程度の変化(VAS)
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    2群間におけるそう痒の程度の変化
    図2:2群間における精神不安定の程度の変化(VAS)
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    2群間における精神不安定の程度の変化

    Okada K et al.:Ther Apher Dial, 8(5), 419-422, 2004

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