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maruho square チーム医療と薬剤師:保険薬局における抗がん剤副作用評価の標準化をめざした薬薬連携の取り組み~手足症候群対策フローの作成


外来で化学療法を受ける患者さんが増えている昨今、抗がん剤の副作用モニタリング・コントロールは保険薬局薬剤師の重要な業務の1つになっている。しかし、副作用が疑われた場合、「その症状が疑義照会の必要なほど緊急性のあるものなのか/経過観察でよいのか」を限られた時間の中で適切に判断し、対応することは容易ではない。手稲渓仁会病院薬剤部と株式会社フロンティア フロンティアていね薬局(本社:大阪府大阪市、千葉県千葉市、全国で保険調剤薬局、福祉用具のレンタルを中心に事業展開)を含む近隣4薬局は、薬薬連携ワーキンググループを発足させ、病院との情報共有を図っている。今回は、その実際と成果および今後の展望について圓藤先生にお話を伺った。

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株式会社フロンティア フロンティアていね薬局薬剤師 圓藤 晶子 先生
  • 株式会社フロンティア フロンティアていね薬局 薬剤師 圓藤 晶子 先生

良好なコントロールにより治療継続が可能となる手足症候群に着目し、薬薬連携で介入することに

薬薬連携ワーキンググループ(WG)発足の経緯、メンバー、活動について教えて下さい。
【圓藤】がん化学療法においては、副作用の軽減をめざした予防策や治療(支持療法)が実施されます。支持療法薬の中には、適応外処方が少なからずあります。昨今ではがん化学療法を外来で行うケースが増え、保険薬局でも支持療法薬について服薬指導を行う機会が増えていますが、それを薬局薬剤師が把握できず、支持療法薬としてではない服薬指導をしたり、適応外処方として疑義照会を行ったりすることがしばしばありました。こうした状況下で、手稲渓仁会病院の薬剤部から、その主たる応需先である当薬局などに対して、「支持療法を含めて、がん化学療法に関する指導内容の統一をめざした取り組みを行いたい」というお話をいただいたのをきっかけに薬薬連携WGが発足しました。
発足当初のメンバーは、病院のがん専門の方を含めた、がん関係を主に担当されている薬剤師数名と、周囲の薬局薬剤師数名だと聞いています。現在は病院から、がん、腎専門の薬剤師(各1名)やDI関係の薬剤師、加えて近隣4店舗から各2名の薬局薬剤師で構成されています。発足当時より、定期的に薬薬連携会議を開催し、会議終了後には持ち回りで議事録を作成し、必要があれば参考資料などを添付してメーリングリストで情報共有するとともに、メンバー以外の薬剤師とも情報共有を図っています。

フロンティアていね薬局(札幌市手稲区前田一条12-1-43)

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フロンティアていね薬局(札幌市手稲区前田一条12-1-43)
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フロンティアていね薬局(札幌市手稲区前田一条12-1-43)
手足症候群対策フロー(以下、フロー)を作成されたのはなぜですか?
【圓藤】薬薬連携会議を重ねていく中、薬局薬剤師らが「病院から情報をもらうばかりではなく、薬局からフィードバックできることはないか」と模索し始めました。まずは、何か1つの副作用症状に特化して、薬局薬剤師が評価・対応し、それを病院にフィードバックすることで安全かつ効果的な治療の継続に繋げていこうと考え、着目したのが「手足症候群」でした。手足症候群は、生命を直接脅かす副作用ではありませんが、患者さんのQOLを著しく低下させ、抗がん剤の減量や休薬の要因になるからです。

手足症候群をCTCAEのGradeで評価し対応病院との情報共有で副作用軽減をめざす

フローの内容と、活用の成果について教えて下さい。
【圓藤】フロー(図1)を作成するにあたり、薬局薬剤師が副作用の重症度を判断しても良いのか、そもそも判断できるのかといったところから議論を始め、最終的には、CTCAE(Common Terminology Criteria for AdverseEvents)v4.0のGradeをもとに作成しました。
具体的には、病院の採用薬の中で手足症候群が生じる可能性のある抗がん剤23種類のいずれかが投薬されている患者さんを対象に、投薬時に手足症候群の重症度評価を行い、皮膚障害がない場合はGrade0、皮膚障害があり、痛みがない場合はGrade1、痛みがある場合はGrade2以上とします。Grade別の対応の詳細は図1をご参照下さい。
2015年4月~2018年3月の3年間に、薬剤部に手足症候群として報告した件数は52件で、うち運用ルール適応外と評価前に治療終了した12件を除いた40件で解析したところ、Grade1が37件(93%)、Grade2が2件、Grade3が1件でした。Grade2、3の3例はいずれも医師のチェックがあり、疑義照会はせず、患者さんにはステロイド外用剤の使い方や皮膚症状増悪時の対応を伝え、薬剤部にはステロイドのランクアップ推奨を含めて状況を報告しました。処方変更の有無および有無別の症状評価は図2のとおりです。
図1:手足症候群対策フロー
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図1.手足症候群対策フロー
図2:FAX報告後の処方変更の有無とその後の症状評価
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図2.FAX報告後の処方変更の有無とその後の症状評価
薬剤部への報告が処方変更につながっていますね。
【圓藤】私たち薬局薬剤師からの提案を踏まえて、経験豊富ながん専門薬剤師をはじめとする病院薬剤師が適切な薬の提案や対応をして下さることにより、医師への説得力が高くなっているためであると思います。また、薬局からの報告に対して、病院薬剤師から「医師にはこのように伝えています」「次の診察では処方内容が変更になりました」「このような治療経過なので、ここに注意して様子をみて下さい」などの返信が必ず届きます。こうしたことから、薬局薬剤師が病院薬剤師と繋がっていることは患者さんにとって非常にメリットがあると感じています。
抗がん剤の副作用対応において薬薬連携で大切なことは何ですか?
【圓藤】保険薬局でみかけることの多いGrade1の副作用について、患者さんが「小さなことだから」と病院では伝えられなかったケースが多いことから、そこを薬局薬剤師が拾い上げ、病院薬剤師と連携しながら、しっかり指導・対応して重症化させないようにすることが、安全で効果的な治療を継続するうえで大切であると思います。また、本来、抗がん剤が休薬・減量となるGrade2、3の重い副作用も、保険薬局に漏れ出ることがあるので、病院薬剤師のみならず、薬局薬剤師が踏み込んだ症状評価と休薬指示を踏まえた疑義照会を行ってダブルチェック体制をとることも重要です。
最近では、手足症候群対策フローをきっかけに薬薬連携が深まったことにより、抗がん剤以外の薬剤についても、病院薬剤師に直接電話をかけて相談にのっていただくことが増えています。こうした薬薬連携により、抗がん剤のみならず、あらゆる薬物療法の副作用を減らせるのではないかと考えています。

抗がん剤の副作用すべてに対応安全で効果的な治療の継続めざす

今後の展望をお聞かせ下さい。
【圓藤】外来化学療法を受ける患者さんに対して、副作用のフォローが途絶えるこのとのないよう、担当薬剤師を決めることも検討しています。また手足症候群以外の副作用についても、トレーシングレポートを活用するなど介入していきたいと考えています。現在、当薬局では、抗がん剤の主な副作用に関して、投薬台・監査台にCTCAE ver.4から抜粋したGradeの一覧表を設置し、すぐに確認できるようにしています。やはり、患者さんが安全に効果的に治療を継続できるようにするのが薬局薬剤師の使命であると思いますので、これからも薬薬連携のもと抗がん剤の副作用全般のコントロールに努めてまいります。
ありがとうございました。

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