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maruho square 保険薬局マネジメント:症例検討会の実施により見えてきたかかりつけ薬局・かかりつけ薬剤師への取り組み


株式会社大新堂フタツカ薬局グループ(本社:兵庫県神戸市)は、「人と幸福な未来をつなぐ暮らしの真ん中のコミュニティファーマシー」として、兵庫県下を中心に60店舗(2017年10月現在)の保険薬局を運営している。
高齢化が進む地域に位置するフタツカ薬局吹田竹見台店では、服薬上の問題を抱える患者さんの存在に着目。薬剤師によって異なる指導で患者さんを混乱させないよう、また、薬剤服用歴管理記録(以下、薬歴)だけでは伝わりきらない情報を共有できるよう症例検討会を実施し、かかりつけ薬局・かかりつけ薬剤師への取り組みにつなげている。そこで、薬局長の松浦千佳先生に、その経緯や現状、今後の展望などを伺った。

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株式会社大新堂 フタツカ薬局吹田竹見台店 薬局長 松浦 千佳 先生
  • 株式会社大新堂 フタツカ薬局吹田竹見台店 薬局長 松浦 千佳 先生

地域特性に応じた、服薬支援が必要な患者さんに対する症例検討会の実施

フタツカ薬局吹田竹見台店は、1960年代に開発された大阪府北部の住宅地、千里ニュータウン内に位置する。通院圏には大規模病院がいくつかあり、複数科の処方を応需する面分業型店舗である。周辺住民の高齢化に伴い、様々な疾患を併発して複数の医療機関・診療科を受診していることによる重複処方や多剤併用の懸念がある例や、独居や老老介護の状況下における認知症などコンプライアンス(CP)低下例も少なくない。
このような服薬上の問題を抱える患者さんに対して薬剤師は何ができるか考えたとき、「患者さんが抱える問題点を薬剤師間で共有し、一貫した服薬支援を行うことが必要である」との結論に至り、2014年11月より月1回1時間程度、店舗の薬剤師全員が集まり、服薬上の問題点を抱える患者さんの把握と情報共有および服薬支援計画の作成を目的とした症例検討会が実施されることになった。症例検討会では、服薬支援を要すると考えられる患者さんを各薬剤師が持ち回りで選出して対象患者の経過と問題点をまとめ、全員で服薬支援計画をPOS(Problem Oriented System)方式で作成した。服薬支援計画は薬歴に記載され、いずれの薬剤師もそれに則り服薬支援を実施した。

フタツカ薬局吹田竹見台店(吹田市竹見台4-2-3竹見台パークサイドビル1階)
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フタツカ薬局吹田竹見台店(吹田市竹見台4-2-3竹見台パークサイドビル1階)

服薬上の問題を解決するには、家族、医療・介護従事者との連携が必要

2015年11月までの1年間に症例検討の対象となった患者さんは10名で、その内訳は、CP不良6名、不眠症1名、心療内科不定愁訴1名、重複処方の可能性1名、在宅患者の日常生活動作(Activities of Daily Living :ADL)改善課題1名であった(図1)。

服薬支援計画に則って介入した結果、3名にCP改善などの成果が見られたほか、1名はほかの医療機関の介入によりCPが改善した(図1)。成果が見られた3名のうち2名は認知症によるCP低下であったが、松浦先生曰く「患者さん同意の下、自宅を訪問して残薬数を把握し、主治医にCPを改善する処方や一包化を提案したり、家族に声かけを依頼したり、服薬カレンダーや介護サービスの利用を勧めたりしたところ、処方の一包化、家族の声かけ、訪問介護の開始とヘルパーによる服薬カレンダーへの配薬・残薬確認などが実践された。その結果、CPが改善して残薬が減少するとともに、うち1名は検査値も改善した」とのこと。成果が見られた3名のうち残り1名は在宅医療を受けている患者さんで、一包化によるCPの改善とともに、ケアマネジャーとの連携によりADLの障害となっていた机と車椅子の高さが合わない環境を整備することで、ADLも改善したそうだ。松浦先生も「薬剤師が介入することによって、服薬上の問題だけでなく患者さんの生活そのものが向上することが嬉しかった」と話す。
一方で、改善が見られなかった患者さんや、来局が中断して介入困難となった患者さんも存在する(図1)。「CP改善が見られた患者さんはいずれも、家族や医師・介護従事者との連携が取れたケース。しかし現実には、例え同居の家族がいても何らかの理由で協力を得られないケースのほか、一包化や服薬カレンダーの利用など新しい管理法の提案になじめないケースや、介護サービスの利用を拒否するケースなどもあり、CPの改善が難しい場合も少なくない」と、松浦先生は苦しい胸の内を明かす。

図1:症例検討
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症例検討

地域包括ケアにおいて必要に応じた医療・介護導入をサポート

今後、独居老人や老老介護の世帯が増える中、家族との連携が取りにくいケースはますます増加すると考えられる。松浦先生は、そのようなケースに対峙するこれからの薬剤師の役割として、「服薬上の問題を解決するだけでなく、介護サービスが必要となる前段階から薬物治療のパートナーとして介在し、患者さん同意の下に地域の医療・介護と連携を図りつつ、然るべきタイミングで介護サービスや在宅医療の導入を働きかけること(=かかりつけ)」を掲げる。

実際、図1でCP改善が見られなかった4名に対してはその後、かかりつけ薬局・かかりつけ薬剤師として服薬支援を継続しているという。例えば図2の症例では、患者さんから「薬が1日分足りない」との電話連絡が続くことから、症例検討を実施した。ところが、処方薬を一包化し、服薬カレンダーの利用を勧めるもCPは改善しなかった。さらに、同居家族(夫)にも認知機能の低下が認められ、服薬支援を依頼するのが難しい状況だったことから「かかりつけ薬剤師制度」の利用を提案したところ、夫婦での契約に至った。現在は、担当薬剤師による一貫したフォローを行い、必要に応じて患者さん宅を訪問し、服薬管理をサポートしているという。
2017年10月現在、フタツカ薬局吹田竹見台店では2名の薬剤師が37名の患者さんの「かかりつけ薬剤師」として、対応にあたっている。症例検討会は2015年12月以降、毎月の店舗ミーティングにおける不定期の議題に形を変えたが、症例検討会を介し、点で集めた情報を線でつなぎ、面にして患者さんをサポートする大切さを実感したことから、店舗ミーティングでは薬剤師だけでなく事務職員からも情報を収集し、かかりつけ薬剤師を必要としている患者さんを見つけ出すそうだ。松浦先生は「今後は近隣の大規模病院の退院時カンファレンスに参画するなど、患者さんに関わる全ての医療・介護従事者と連携を深め、情報を共有し、地域包括ケアにおけるかかりつけ薬局・かかりつけ薬剤師の役割を確立していきたい」と、結んだ。

図2:家族による支援が得られない例への介入
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症例検討

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