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服薬指導に役立つ皮膚外用剤の基礎知識 No.1:臨床現場における基剤・剤形の考え方


多種類の基剤が用いられる皮膚外用剤は、使用目的に応じて選択されます。調剤や服薬指導も、それぞれの基剤の特徴を理解して対応することが重要です。

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キャラクター1

調剤時

(1)油脂性基剤は酸化される!

油脂性基剤は空気により酸化されます。500g容器などから取り出すときは空気に触れる面積を減らすために、平らに削り取るように心掛けます(写真3)。
一方、水溶性基剤は、酸化されないので、平らでなくても問題ありません。
軟膏壺に充填する際に、空気を抜くために容器をたたくことがあります。これも空気の混入による酸化を防ぐためであり、油脂性基剤では意味がありますが、重量が足りていれば、水溶性基剤では不必要な行為です。

写真3:基剤による削り方の違い
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基剤による削り方の違い

(2)軟膏壺への充填後は引き出しに

市販されている軟膏壺は遮光が十分でない場合が多いです。ワセリンは光酸化を受けることから、油脂性基剤の軟膏等を軟膏壺に小分けした場合、添付文書上は遮光の記載がなくても、室内に放置せずに、引き出しにしまうなど遮光するように説明することがより良い品質保持のためには大切です。
ワセリンを直射日光に曝した場合の色調変化を写真4に示します。

写真4:局方ワセリンを直射日光に曝した場合の色調変化
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局方ワセリンを直射日光に曝した場合の色調変化

日本薬局方白色ワセリンの性状は「本品は白色~微黄色の全質均等の軟膏様の物質で、におい及び味はない」と記載されている1)

赤羽喜文:Visual Dermatology,2017;16(5):423-426より抜粋,改変

(3)混合

患者さんのアドヒアランス向上などを目的として、軟膏やクリームを混合する場合、基剤や剤形の相性を考慮する必要があります。その場合、表1表2に示したように「水」と「油」に分けて考えるとよいでしょう。
「水」と「油」は基本的には混ざりませんが、肉眼では判りづらいです(写真5)。

写真5:混合前の10%尿素クリーム(ウレパールクリーム)と油脂性基剤のステロイド軟膏と混合した直後の10%尿素クリーム(ウレパールクリーム)
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混合前の10%尿素クリーム(ウレパールクリーム)と油脂性基剤のステロイド軟膏と混合した直後の10%尿素クリーム(ウレパールクリーム)

顕微鏡下でみると混合直後でも10%尿素クリーム(ウレパールクリーム)の乳化が破壊されている

服薬指導時

(1)患者さんからの聞き取りのポイント

皮膚外用剤の処方箋鑑査では、処方量やステロイド外用剤のランクが適正であるか確認するために、患部の炎症等の広さや程度を患者さんから聞き取ることが必要です。

(2)外用指導

ステロイド外用剤などは塗布量が十分でないと治療効果に影響を与えるため、塗布量に関する患者指導は重要です。
塗布量に関する指導では主として「FTU」を用いて説明されますが、日本のチューブの口径では0.5gになりません。そのため、ティッシュペーパーが付くくらい多めに塗るように指導したほうが望ましいでしょう。
症状が緩解してくると塗布量が少なくてもティッシュペーパーが付くようになるので、患者さんに皮膚の状態に応じて塗布量を加減してもらい、症状が悪化したら、元の量に戻すなどと説明します。

FTU=finger-tip unit

(3)アドヒアランス

皮膚外用剤は塗布量の増加に伴いアドヒアランスが低下します。1日塗布量が5gで約50%、10gで約15%にまで低下すると報告されています2)。保湿剤のように塗布量が多い薬では、使用済のチューブを持参してもらうなど、定期的な確認が必要です。

出典:
  1. 第十七改正日本薬局方,医薬品各条
  2. Zaghloul S S.et al. :Arch Dermatol,2004;140(4):408-414

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