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尋常性乾癬外用療法におけるマーデュオックス軟膏への期待


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    尋常性乾癬外用療法におけるマーデュオックス軟膏への期待
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    江藤隆史氏

    尋常性乾癬の外用療法には主にステロイド外用剤とビタミンD3外用剤が用いられる。効果増強、外用アドヒアランスの向上を期待して両薬剤の混合調剤が広く実践されているが、混合調剤には成分の安定性や経皮吸収性の低下といった課題があった。2016年6月、両薬剤の配合剤として登場したマーデュオックス軟膏はこれらの課題を克服する薬剤として注目されている。東京逓信病院皮膚科部長の江藤隆史氏に同薬剤の特徴や位置づけについて解説していただいた。

    尋常性乾癬外用療法の現状

    尋常性乾癬の治療の基本は外用療法です。近年、乾癬治療の領域では生物学的製剤が注目されていますが、生物学的製剤が適応となるのは内服療法など既存の全身療法を行っても効果不十分な場合であり、一般に治療は外用療法、光線療法を含む全身療法、生物学的製剤とステップアップしていきます。そのため、外用療法を適切に行い、低下しがちな外用アドヒアランスを高めることは重要な課題です。

    乾癬に対する外用療法では、ステロイドとビタミンD3(VD3)を症状や効果を見ながら使い分け、切り替えたり、併用したりします。実臨床における使用状況は、ステロイド単独が35.6%、VD3単独が14.2%、両薬剤の併用が27.3%、混合調剤が22.9%と報告されています1)
    乾癬の場合、乾癬の皮疹が消失しても治療を完全に中止すると再燃するリスクが高いので、治療のゴールはVD3単独での乾癬のコントロールです。

    混合調剤のメリット

    先ほど紹介したように、乾癬では外用療法例の約4分の1で、ステロイドとVD3の混合調剤が処方されています。混合調剤の一番のメリットは、外用アドヒアランスの向上です。外用剤の使用量が増えるほど、アドヒアランスは低下すると言われています。広範囲に数種類の外用剤を塗布する手間と時間を考えると、乾癬患者のアドヒアランスは大きく低下しがちであり、向上のための工夫が求められます。

    また、混合調剤による効果の増強も期待されます。混合調剤に関するエビデンスは極めて少ないのですが、混合調剤が定着していることの背景には、外用アドヒアランスの向上だけでなく、混合調剤の方が効果が高いという医師や患者の実感があると思います。

    混合調剤の課題2)

    しかし、混合調剤には課題もあります。まず各成分の安定性が保証されません。VD3は酸性環境では不安定なので、例えば基剤にクエン酸を含むステロイドはVD3との混合に適しません。また、VD3は光に不安定ですので、混合調剤を遮光されていないプラスチック容器に入れてしまうと、密閉した状態でもゆっくりと失活が進行してしまいます。一方、17位モノエステル型のステロイドは、基剤がアルカリ性に傾くとエステル転移を起こし、効果が減弱しますので、混合調剤ではpHの変化に注意しなければなりません。

    また、外用剤の効果には、有効成分の経皮吸収性もかかわってきます。混合により有効成分の濃度が不均一になったり、希釈されたりすると、経皮吸収性が変化します。注意しなければならないのは、希釈率と効果の変化が必ずしも比例関係にない点です。逆に副作用の軽減を目的に混合したとしても、想定ほどには副作用は軽減されない可能性もあります。

    有効成分の経皮吸収性は、基剤によっても大きく変わります。基剤には、油脂性、水溶性、油中水型、水中油型、ゲルなどのタイプがあり、組み合わせによって混合が可能であったり、不可であったりします。例えば、当然のように水と油は混ざりませんし、組み合わせによっては、乳化が破壊されてしまいます。乳化が破壊されるとステロイドの透過量は半減しますし3)、分離した水には防腐剤が移行しないため、細菌汚染のリスクが高まります。そのようなリスクがあるにもかかわらず、早期に使い切れば問題ないという見解のもと、混合不可の組み合わせの混合調剤が行われているケースもあるようです。これは外用アドヒアランスを少しでも高めたいという気持ちの表れであり、品質、有効性及び安全性が担保された配合剤が待ち望まれていました。

    マーデュオックス軟膏の利点と臨床的位置づけ

    臨床現場ではより高い効果が期待されている混合調剤ですが、先述したように有効成分の濃度や安定性に大きな課題がありました。そうした中で開発・発売されたマーデュオックス軟膏は、最も使用頻度の高いステロイド外用剤とVD3外用剤であるベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル(BBP)とマキサカルシトール(MCT)1)を有効成分とした配合外用剤で、それぞれの成分で単剤使用時と同様の経皮吸収性が、動物実験によって確認されています(図1)。また、基剤の工夫と遮光性のアルミチューブによって、保存期間30ヵ月の安定性が確認されています。マーデュオックス軟膏は、BBPとMCTの両成分の有効性と安定性を損なわないように基剤が厳密に選択、調整されているといえます。

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    マーデュオックス軟膏の皮膚中濃度

    第Ⅲ相臨床試験では、比較的重症度の高い(PSI合計スコアが15以上)尋常性乾癬患者に対してマーデュオックス軟膏(1日1回)、MCT軟膏(1日2回)、BBP軟膏(1日1回)のいずれかを塗布した結果、単剤群よりもマーデュオックス軟膏群で症状は有意に(p<0.01、反復測定分散分析)改善しました(図2)。マーデュオックス軟膏群の副作用発現率は5.4%であり主な副作用は血中コルチゾール減少(4件、2.4%)でした。

    また、同試験の結果で注目される点として、マーデュオックス軟膏の効き目の早さが挙げられます。治療開始1週後の時点でマーデュオックス軟膏群と単剤使用群で有意差が認められました(図2)。外用アドヒアランスを保つためには、患者が効果を実感することが非常に重要です。1週間の外用で効果が実感できれば、患者の治療に対するモチベーションが高まり、外用アドヒアランスが向上します。そのため、マーデュオックス軟膏を初期治療薬として使用することを考慮してもよいと私は思っています。

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    マーデュオックス軟膏の第Ⅲ相臨床試験

    マーデュオックス軟膏は混合調剤のメリットを保ちながら課題を解決した薬剤です。乾癬の初期治療に用いる薬剤として期待していますし、移行期や維持期においてもVD3と同時に処方し皮疹の重症度に応じて塗り分けることで、乾癬を長期にコントロールできると考えます。

    ただし、very strongのステロイドを含むため、長期の漫然とした使用は避けるべきです。紅斑が残存している場合でも皮疹をよく観察し、ステロイドの副作用でないか確認することを怠ってはいけないと思います。

    引用文献:
    1. 照井正ほか、臨床医薬 2014; 30: 279-85.
    2. 江藤隆史、MB Derma 2007; 132: 102-7.
    3. 大谷道輝、MB Derma 2006; 113: 71-4.
    マーデュオックスの詳細は添付文書をご覧ください

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