

ステロイド外用薬は、アトピー性皮膚炎治療の基本となる薬剤です。治療効果を高める一方、副作用を防ぐためには適切に使用することが求められます。アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 20211)で紹介されているステロイド外用薬を使用する際の「留意点」「副作用」「不安への対処」についてお示しします。
ステロイド外用療法の留意点
高い薬剤吸収率を持つ部位(頬、頭部、頸部、陰囊)では、ステロイド外用薬による局所副作用の発生に特に注意が必要であり、長期間の連用は避けるようにします。顔には原則としてミディアム(IV群)以下のステロイド外用薬を使用します。しかし、重症の皮膚炎に対しては、重症度に応じたランクの薬剤を用いて速やかに寛解させた後、漸減あるいは間欠投与に移行します。さらに、タクロリムス軟膏やデルゴシチニブ軟膏の外用への移行に向けて努めます。
長期間にわたってステロイド外用薬を使用して炎症症状が鎮静した後は、急激に中止することなく、寛解を維持しながら漸減あるいは間欠投与を行います。可能であればステロイド外用を終了していきますが、再燃を繰り返す場合はプロアクティブ療法を検討します。
ステロイド外用薬の副作用
外用ステロイドの全身性副作用はステロイドのランク、塗布量、塗布期間などに依存し、ランクの高いステロイド外用薬を大量に、長期使用すると起こりやすくなります。また、紅皮症など皮膚バリアの低下した状態では経皮吸収が高いため起こりやすくなります。そして、小児は経皮吸収が高いことや体重に比して体表面積の占める割合が大きいので、全身性副作用を起こしやすくなります。
ステロイド外用薬の全身性副作用としては、視床下部―下垂体―副腎系の抑制、高血圧、高脂血症、糖尿病、満月様顔貌、クッシング症候群などがありますが、ステロイド外用薬を適切に使用すれば、日常診療における使用方法では全身性副作用は通常起こりにくいと考えられています。その理由のひとつとして、十分な量を使用すれば、湿疹病変は速やかにコントロールされ、ステロイド外用薬の塗布量や塗布範囲は速やかに減少し、ステロイドのランクも下げることができることが示されています。しかし、ステロイド外用薬を大量に長期使用する場合やバリアの低下した病変部に塗布する場合には、副腎機能抑制などの全身性副作用に対する十分な検査や対策が必要です。
ステロイドの有する免疫抑制作用、細胞増殖や間質産生抑制作用、ホルモン作用により、局所の副作用が起こり得ます。ステロイド外用薬の局所副作用として、毛細血管拡張、皮膚萎縮、皮膚線条(伸展性皮膚線条、線状皮膚萎縮症)、紫斑、酒皶様皮膚炎・口囲皮膚炎、多毛、色素脱失、創傷治癒遅延、接触皮膚炎、痤瘡・毛包炎や単純性疱疹、伝染性軟属腫、体部白癬、疥癬など細菌、真菌、ウイルスによる皮膚感染症などがあります。
一般に局所副作用はステロイドのランク、塗布期間、塗布部位、年齢に影響され、高いランクのステロイドを使用した場合、長期に使用した場合、顔面や陰部などの吸収率の高い部分に使用した場合、高齢者に使用した場合などに起こりやすくなります。また基剤にも影響され、軟膏よりクリームの方が経皮吸収が高くなります2)。多くの局所副作用は、ステロイド外用薬の中止または適切な処置により回復します。ただし、皮膚線条は不可逆的です。
ステロイド外用薬の局所副作用は、病変の皮疹の程度、部位、年齢を考慮して適切なランクを選択し、必要な期間に限定することによって頻度を下げることができます。皮疹が改善した際には、適切にランクダウンしたり、間欠的に使用したりすることもよいとされています。また、ステロイド外用薬で炎症を抑えた後、タクロリムス軟膏やデルゴシチニブ軟膏に移行することもよいと記載されています。局所副作用の発現に注意しつつも、必要なステロイド外用薬を適切に使用することが勧められます。
ランクの高いステロイドを頻回に外用した場合、白内障のリスクとなる可能性もありますが、むしろアトピー性皮膚炎自体が白内障のリスクであり、さらに顔面の皮疹と関連があり、眼を擦ったり搔破したりすることとの影響が考えられています。
一方、ステロイド外用薬による緑内障の症例報告は多く、ランクが高いステロイドを用いたり、塗布回数が多かったり、塗布期間が長くなったりすると、リスクが高くなります。眼周囲については、不要に強いランクのステロイドを用いない、漫然と長期使用しない、ステロイド外用薬で改善後はタクロリムス軟膏で維持することなどが勧められます。
ステロイドに対する不安への対処
ステロイド外用薬に対する誤解から、ステロイド外用薬への恐怖感や忌避が生じ、アドヒアランスの低下がしばしばみられます。たとえば、ステロイド内服薬による副作用との混同や、アトピー性皮膚炎そのものの悪化とステロイド外用薬の副作用との混同などから誤解が生まれます。使用方法を誤ることにより、効果を実感できず、ステロイド外用薬に対する不信感を抱くこともあります。
このような誤解を解くためには、十分な診察時間をかけて説明し指導することが必要です。また、診察の際にはステロイド外用薬による副作用の有無を丁寧に観察するとともに、症状に応じたステロイド外用薬の選択と外用頻度を指導し、医療従事者と患者間に信頼関係を築くことが大切です。
1) 公益社団法人日本皮膚科学会, 一般社団法人日本アレルギー学会, アトピー性皮膚炎診療ガイドライン作成委員会: 日皮会誌 2021; 131(13): 2691-2777.
2) Takeda K, et al: Drugs 1988; 36(Suppl 5): 15-23.
