アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021 薬物療法 ステロイド外用薬1

アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021 薬物療法 ステロイド外用薬1

アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 20211)には「アトピー性皮膚炎の治療の最終目標(ゴール)は、症状がないか、あっても軽微で、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態に到達し、それを維持することである」と記載されています。アトピー性皮膚炎は、適切な治療によって炎症が抑えられ、安定した皮疹の状態が維持されれば寛解が期待される疾患です。炎症を十分に鎮静化することができ、現時点で有効性と安全性が多くの臨床研究で検討されている外用薬として、ステロイド外用薬、タクロリムス軟膏、デルゴシチニブ軟膏の3剤が紹介されています。

ステロイド外用薬の使用法

ステロイド外用薬は、抗炎症外用薬として第一選択薬で使用されることが多い薬剤です。アトピー性皮膚炎治療の基本となる薬剤であり、小児および成人を対象に使用されます。ステロイド外用薬の強さ(ランク)を把握し、個々の皮疹の重症度に応じた選択を行い、さらに病変の性状、部位により剤型を使い分け、炎症や痒みを速やかに軽減する寛解導入療法を行うことが推奨されています。

さらに保湿剤なども併用し、その寛解状態を維持していくことが治療として大事となります。また、アドヒアランスを上げるために、患者への十分な説明や指導を行うことも必要です。

ランクの選択

日本では一般的に、ステロイド外用薬のランクはストロンゲスト(I群)、ベリーストロング(II群)、ストロング(III群)、ミディアム(IV群)、ウィーク(V群)の5段階に分類されます。このランクを指標にして、個々の皮疹の重症度に見合ったランクの薬剤を適切に選択し、必要な量を必要な期間、的確に使用することが重要です。個々の皮疹の重症度に見合ったランクのステロイド外用薬として、下記のように推奨されています。

スライド1ルーペ

皮疹の重症度とステロイド外用薬の選択

重症

急性、進行性の高度の炎症病変がある場合や苔癬化、紅斑、丘疹の多発、多数の搔破痕、痒疹結節など難治性病変が主体の場合は、ベリーストロング(II群)が第一選択となります。それで十分な効果が得られない場合は、その部位に限定してストロンゲスト(I群)の使用を考慮します。

中等症

中等度までの紅斑、鱗屑、少数の丘疹などの炎症所見、搔破痕などを主体とする場合は、ストロング(III群)ないしミディアム(IV群)が第一選択となります。

軽症

乾燥および軽度の紅斑、鱗屑などを主体とする場合は、ミディアム(IV群)以下のステロイド外用薬が第一選択となります。特に乳幼児や小児において、年齢によってランクを下げる必要はありませんが、短期間で効果が表れやすいので使用期間に注意する必要があります。

剤型の選択

ステロイド外用薬の剤型(軟膏、クリーム、ローション、テープ剤など)は、病変の性状、部位などを考慮して選択されますが、乾燥を基盤とするアトピー性皮膚炎の治療には軟膏を選択することが基本となります。夏場には、使用感を優先してクリーム基剤を選択することもあります。また、頭部の病変にはローションの使用や、痒疹や苔癬化皮疹にはテープ剤の使用も考慮します。

投与方法

外用量

必要十分な量のステロイド外用薬を使用することが重要であり、皮膚がしっとりする程度の外用が必要です。使用量の目安としてFinger Tip Unit(FTU:フィンガーティップユニット)2)3)4)という単位が用いられます。

1FTUは成人の人差し指の先から第一関節まで薬を乗せた量で、チューブタイプ(口径が5mm程度)の軟膏やクリームでは約0.5gに相当し、大人の手のひら2枚分の面積(体表面積の約2%)に塗るのに適した分量となります。ただし、使用量は皮膚の状態や外用薬の基剤の種類などによっても変わることに留意する必要があります。

外用回数

急性増悪の場合には1日2回(朝,夕:入浴後)を原則とします。炎症が落ち着いてきたら1日1回に外用回数を減らし、寛解導入を目指します。一般的には1日1回の外用でも十分な効果があると考えられ、外用回数が少なければ、外用アドヒアランスが向上することも期待できるため、急性増悪した皮疹には1日2回外用させて早く軽快させ、軽快したら寛解を目指して1日1回外用させるようにするのがよいとされています。

1) 公益社団法人日本皮膚科学会, 一般社団法人日本アレルギー学会, アトピー性皮膚炎診療ガイドライン作成委員会: 日皮会誌 2021; 131(13): 2691-2777.
2) 公益社団法人日本皮膚科学会, 一般社団法人日本アレルギー学会, アトピー性皮膚炎診療ガイドライン作成委員会: 日皮会誌 2018; 128(12): 2431-2502.
3) Long CC, Finlay AY: Clin Exp Dermatol 1991; 16(6): 444-447.
4) Long CC, Finlay AY, Averill RW: Arch Dermatol 1992; 128(8): 1129-1130.

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