ドレッシング材は、滲出液をコントロールして創を適度な湿潤環境に整え、自然治癒力を発揮させ創治癒を促進させます。創の状態をアセスメントし、創の治癒過程に応じたドレッシング材を選択することが必要です。ドレッシング材を選択する場合、滲出液の量が多い、または少ないなど「滲出液の量」をアセスメントして、創傷治癒過程に応じて吸収力を考慮したドレッシング材を使用することが多いと思います。それぞれのドレッシング材は、滲出液の吸収力に違いがあります。滲出液が多ければ過剰な滲出液を吸収し、創周囲皮膚の浸軟を避ける、また、滲出液が少なければ創面の乾燥を避け、適度な湿潤環境を整える必要があります。滲出液の少ない創に吸水性の高いドレッシング材を選択すると、滲出液を吸収しすぎて創を乾燥させ、創治癒を遅らせることがあるので注意が必要です。
ドレッシング材は滲出液が染み出てくる状況を交換間隔の目安とします。交換間隔が1日に数回と頻繁となる場合は、滲出液の量に応じたドレッシング材選択を考慮する必要があります。頻回な交換は、剥離刺激により皮膚の二次損傷を引き起こします。また、過剰な滲出液が漏れ出したまま放置すると、創周囲皮膚が浸軟し創治癒遅延を引き起こします。滲出液の量や性状、創周囲皮膚、創の変化をよく観察し、適切なドレッシング材を選択します。
ドレッシング材は、①創面を閉鎖し湿潤環境を形成させる、②乾燥した創を湿潤させる、③滲出液を吸収し保持するという3つの機能に分類されます。以下は、滲出液の量を考慮したドレッシング材の選択です。
※滲出液が少ない場合
乾燥した壊死組織のある創に対しては、水分を供給し軟化させ、自己融解を促すハイドロジェル(製品例:グラニュゲル)を選択します。シート状とジェル状のタイプがあります。
創面に肉芽組織が形成され上皮化が進んでいる時期は、創面を閉鎖し湿潤環境を保持するハイドロコロイド(製品例:デュオアクティブCGF)や薄型のポリウレタンフォーム(製品例:ハイドロサイト薄型)を選択します。
※滲出液が多い場合
吸水性が高く、滲出液を保持し湿潤環境を保つポリウレタンフォーム(製品例:ハイドロサイトプラス標準型)、ハイドロファイバー(製品例:アクアセル)、アルギン酸塩(製品例:カルトスタット)、アルギン酸/CMC(製品例:アスキナソーブ)、ポリウレタンフォーム/ソフトシリコン(製品例:メピレックスボーダー)、アルギン酸フォーム(製品例:クラビオFG)、キチン(製品例:べスキチンW‐A)、ハイドロポリマー(製品例:ティエール)を選択します。シート状やリボン状、粘着性と非固着性、粘着剤の違いなどそれぞれ特徴がありますので、創の深さや創周囲皮膚の状況に合わせて選択しましょう。
※滲出液が少ない~多い場合
創接触部にハイドロファイバー、粘着部にハイドロコロイドを使用したドレッシング材(製品例:バーシバXC)があります。滲出液の吸収・保持、水蒸気透過性を低く抑えた外層で、滲出液が少量から多量な創まで対応します。
※感染が疑われる創に対する適用
感染や炎症がある場合は、毎日の洗浄が必要ですから、剥離刺激の少ない低粘着性のドレッシング材を使用します。ドレッシング材使用の基本は、「感染のない創」ですが、感染やクリティカルコロナイゼーション(臨界的定着)が疑われる場合は、抗菌効果のある銀含有ハイドロファイバー(製品例:アクアセルAg)やアルギン酸Ag(製品例:アルジサイト銀)を選択します。これらのドレッシング材は、滲出液を吸収・ゲル化し、銀イオンにより抗菌効果を発揮します。
発赤・腫脹・熱感・疼痛・膿性滲出液がみられる感染創に対して、ドレッシング材で密閉閉鎖環境に置くと細菌の繁殖が起こり感染を助長させます。つまり密閉閉鎖するドレッシング材の使用は、適さないということになります。また、多量の膿汁や悪臭がある場合は、ドレッシング材の使用は適さないので避けましょう。
※保険上使用できる期間
ドレッシング材は特定保険医療材料で、保険上の機能区分では「真皮に至る創傷用」「皮下組織に至る創傷用:標準型」「皮下組織に至る創傷用:異形型」「筋・骨に至る創傷用」に分類され、それぞれ償還価格が違います。保険適用期間は2週間と制限がありますが、特別な場合(主治医がさらに1週間の延長を必要とした場合)、3週間までを限度として算定できます。しかし、DPCを導入している病院施設では、保険適用されず入院治療として包括されます。ドレッシング材の単価は高価であるため、ランニングコストを考慮した創の状態に応じた適切なドレッシング材の選択使用が重要です。
機能区分 | 償還価格 |
---|---|
真皮に至る創傷用 | 7円/㎝2 |
皮下組織に至る創傷用:標準型 | 12円/㎝2 |
皮下組織に至る創傷用:異形型 | 36円/g |
筋・骨に至る創傷用 | 25円/㎝2 |
※貼る前
創周囲のスキンケアは、創傷治癒促進に関与しています。ドレッシング交換時には必ず洗浄剤を用いて、十分な量の微温湯で洗浄します。創周囲の洗浄は、ドレッシング材を貼付する範囲全体を行います。創周囲にはドレッシング材や滲出液による不溶性の蛋白質や脂質などの汚れが付着しているため、洗浄剤を泡立てて愛護的に洗浄します。洗浄剤を泡立てることにより、界面張力で汚れを浮き上がらせます。洗浄剤の残留は皮膚障害の要因となるため、十分な量の微温湯で洗い流し、洗浄剤の残留を減少させます。洗浄後は、物理的刺激を避けるよう柔らかいガーゼなどで押さえるように水分を拭き取ります。
皮膚が脆弱な場合、ドレッシング材貼付前に被膜剤を使用して創周囲皮膚を保護することがあります。またドライスキンの場合、物理的刺激を受けやすいため、ローションタイプの保湿剤の使用や保湿成分配合の洗浄剤の使用を考慮し、予防的スキンケアを行います。
褥瘡部位が排泄物で汚染される可能性がある場合は、排泄物の侵入を防ぐよう排泄物の管理やドレッシング材貼付時の工夫が必要です。
※剥がす時
ドレッシング材の交換時は、ドレッシング材のずれやよれ、滲出液の漏れがないかなどを観察します。適切なドレッシング材の貼付方法や選択のアセスメントとなります。ドレッシング材を剥がす時は、新生した組織を損傷しないよう、また二次損傷を起こさないようドレッシング材の種類に合わせた剥がし方を行います。それぞれのドレッシング材により、皮膚と平行に剥がすものや皮膚に対して120~150度の角度で剥がすものがありますので、皮膚を押さえながらゆっくりと慎重に剥がします。皮膚と垂直に上方向に剥がすと皮膚損傷の要因となりますので避けましょう。粘着力が強く剥がしにくい場合は、剥離剤を用いて剥がすようにしましょう。二次損傷の可能性が高い菲薄化した脆弱な皮膚の場合は、剥離刺激の少ないシリコンドレッシング材や低刺激性ドレッシング材の使用を考慮します。
●褥瘡一問一答 索引