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皮脂欠乏症の主な原因:加齢


    監修:
    • 東京女子医科大学 名誉教授 川島 眞 先生

    乾燥が起きる機序

    高齢者の皮膚では皮脂、角質細胞間脂質(セラミドなど)、天然保湿因子(アミノ酸や塩類など)の減少により水分保持能が低下しているため、乾燥しやすくなっています。乾燥がひどくなると表皮にひび割れを起こし、皮膚バリア機能が低下します。そのため痒みを伝達する神経線維(C線維)が表皮まで伸長し、痒みを感じやすくなります。
    女性は男性よりやや早い年代から皮脂の減少が始まる傾向にあります

    *Nazzaro-Porro M et al.: J Invest Dermatol, 73(1), 112-117, 1979

    一般的な若年者の皮膚

    一般的な高齢者の皮膚

    記事/インライン画像
    図:一般的な若年者の皮膚、一般的な高齢者の皮膚

    皮膚表面は皮脂で覆われ、角質細胞の隙間を角質細胞間脂質が埋めている。
    天然保湿因子も十分に存在し、水分が保持されている。

    年齢別皮脂量

    胸部における皮脂量を年齢別に調べた結果です。180例の胸部を脱脂した後の24時間後の皮脂産生量は、思春期から成人にかけて増加し、その後は加齢に伴って減少しています。また、女性は男性よりも早期から皮脂量が減少し始めることが示されました。

    図:皮脂産生量の年齢による変化
    記事/インライン画像
    皮脂産生量の年齢による変化

    対象:5歳以上のボランティア男女各90例(各年代の男女10例ずつ)
    方法:胸部を脱脂した後の24時間後の皮脂産生量を測定

    Nazzaro-Porro M et al.: J Invest Dermatol, 73(1), 112-117, 1979 より一部改変

    その他の発症原因

    季節
    外気の乾燥、気温低下により発汗量が減少する秋~冬
    (空気が乾燥することで皮膚の水分が蒸散し、気温の低下によって血行不良が生じると、皮脂の分泌量が減少して乾燥につながる)
    生活習慣
    体の洗いすぎ
    (ナイロンタオルなどで体を強く擦ると、皮膚を刺激したり、皮脂を過剰に取りすぎてしまう)
    過度な冷暖房の使用
    (室内の空気が乾燥して皮膚の水分が蒸散し乾燥する)
    原疾患
    アトピー性皮膚炎などの乾燥を伴う皮膚疾患、糖尿病などの内臓疾患
    乾燥を悪化させる治療
    血液透析や一部の抗がん剤治療など

    特徴的な症状

    はじまり
    記事/インライン画像
    はじまり

    皮脂欠乏症の初期では、皮膚表面がざらつき、白い粉をふいたような鱗屑がみられる。また、痒みに敏感になる。

    悪化すると
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    悪化すると

    亀甲状に皮膚がひび割れを生じる上、痒みが強くなる。

    さらに悪化すると
    記事/インライン画像
    さらに悪化すると

    さらに進行して炎症(湿疹)を伴うようになると皮脂欠乏性湿疹に至る。夜眠れないほどの痒みを伴う場合もある。

    写真提供:東京女子医科大学 名誉教授 川島 眞 先生

    好発部位

    下腿や大腿、腰回り、わき腹などに好発します。

    疫学

    東京都の練馬区と大島町の老人保健施設、特別養護老人ホームの入所者を対象に皮脂欠乏症の発症率を調べた報告です。皮脂欠乏症は、老人保健施設では70.5%、特別養護老人ホームでは94.1%の高齢者で認められました。
    このように、高齢者の多くが皮脂欠乏症を発症しています。

    表:高齢者の皮膚の乾燥実態

    例 (%)

    皮脂欠乏症の発症部位 老人保健施設 特別養護老人ホーム
    0 (0.0) 0 (0.0)
    体幹 4 (6.6) 5 (14.7)
    上肢 11 (18.0) 14 (41.1)
    大腿 41 (67.2) 30 (88.2)
    下腿 43 (70.5) 30 (88.2)
    背中 6 (9.8) 11 (32.4)
    足背 5 (8.2) 1 (2.9)
    総計 43 (70.5) 32 (94.1)

    老人保健施設
    対象:61例(男性16例、女性45例)
    平均年齢:85.0 ± 9.7歳

    特別養護老人ホーム
    対象:34例(男性4例、女性30例)
    平均年齢:86.8 ± 7.2歳

    Kimura N et al.: J Dermatol, 40(9), 770-771, 2013 より一部改変

    対策

    治療の基本は保湿です。軽症の頃から保湿剤の塗布で症状の悪化を防ぐとともに生活指導を行い、早期に症状を改善させることが重要です。

    薬物療法

    • 皮脂欠乏性湿疹になった場合
      悪化して炎症(湿疹)を伴う場合は、ステロイド外用薬で炎症を抑えます。
    • 痒みが強い場合
      掻破により症状が悪化するため、痒みが強い場合は、経口の抗ヒスタミン薬を投与します。
    記事/インライン画像
    薬物療法
    • 高齢者に薬物治療を行う際の注意点

    ①皮膚は加齢とともに萎縮し、軽い外力によっても紫斑が生じやすくなります。

    ②安易にストロング以上のステロイド外用薬を長期間にわたって外用し続けると、ステロイド外用薬の副作用が生じる可能性があります。

    ステロイド外用薬の主な副作用

    • ステロイド紫斑
    • 皮膚の萎縮
    • 毛細血管拡張
    • 細菌感染
    • ステロイド潮紅
    • 多毛など

    ③症状に応じてステロイド外用薬を使用することは必要ですが、皮脂欠乏性湿疹へ移行する前に、保湿剤で皮脂欠乏症を改善することが大切です。

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