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ぬり薬の蘊蓄 vol.3 皮膚の状態と経皮吸収性について:皮膚疾患との関係


皮膚疾患と経皮吸収性

アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚では、角層水分量が低下し、直接的な皮膚バリア機能の指標であるTEWLは増加しています(図412)。この原因の1つとして、健康人と比較して保湿因子の1つであるセラミドが低下していることが考えられます(図513)

*セラミド:角質細胞と角質細胞の間にある脂質で、ラメラ構造という脂質二重層を形成し、水分の保持に寄与しています。その他の保湿因子として、皮脂や天然保湿因子などがあります。

図4:アトピー性皮膚炎患者と健康人の角層水分量(左図)およびTEWL(右図)(文献12 一部改変)
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アトピー性皮膚炎患者と健康人の角層水分量およびTEWL

コンダクタンスは皮膚に電気を流した場合の抵抗を表します。角層水分量が多いと電気が流れやすくなるため、コンダクタンスが高値になります。

このように、アトピー性皮膚炎の患者さんでは皮膚全体でバリア機能が低下している結果、健康人と比較して主薬の経皮吸収性が高まると考えられます。

一方、乾癬患者さんでは表皮が肥厚し、角質層が厚いことから、経皮吸収性が低下しているようにみえます。しかしながら、皮膚バリア機能の構築に必要な表皮角化細胞の分化が不完全であり、角層のバリア機能が十分に発揮されないため、むしろ経皮吸収性が高まっているという報告があります14)

図5:アトピー性皮膚炎患者と健康人のセラミド量(文献13 一部改変)
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図5:アトピー性皮膚炎患者と健康人のセラミド量(文献13 一部改変)

病態により経皮吸収性がどのように変化するかについては、重症度によっても変化するため正確には分かりませんが、最近開発された外用剤の中には、皮膚バリア機能を低下させた損傷皮膚の経皮吸収性も検討しているものがあります(図615)。このような検討結果は、バリア機能が低下した皮膚疾患患者さんにその薬剤を適用した場合、血液(血漿)中の薬物濃度が上昇する可能性があるかを知る上で重要な情報となります。

図6:マキサカルシトールの経皮吸収性
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マキサカルシトールの経皮吸収性
引用文献:
  1. 芋川玄爾, 日小皮会誌, 16, 87-99, 1997
  2. Imokawa G, et al., J. Invest. Dermatol., 96, 523-6, 1991
  3. Gould AR, et al., Arch. Dermatol. Res., 295, 249-54, 2003
  4. オキサロール軟膏25μg/g オキサロールローション25μg/gインタビューフォーム

創傷面と経皮吸収性

皮膚疾患によってバリア機能が低下している場合は経皮吸収性が高まることがありますが、これは皮膚に損傷などがあってバリア機能が低下している場合も同様です。そのため、経皮吸収量が多い全身作用型の外用剤では、全身性の副作用の発現が懸念されることから、添付文書の「適用上の注意」には創傷面などには適用しないことと記載されています(表4)。

表4:本邦における全身作用型外用剤の「適用上の注意」の記載内容

主薬 製品名 添付文書の「適用上の注意」(一部抜粋)
ツロブテロール ホクナリンテープ 動物実験(ラット)で損傷皮膚に貼付した場合、血中濃度の上昇が認められたので、創傷面に使用しないこと。
ニトログリセリン ミリステープ 創傷面に使用しないこと。
硝酸イソソルビド フランドルテープ 皮膚の損傷又は湿疹・皮膚炎等がみられる部位には貼付しないこと。
フェンタニル デュロテップMTパッチ 活動性皮膚疾患、創傷面等がみられる部位及び放射線照射部位は避けて貼付すること。

注:表4に挙げている薬剤以外は全て創傷面に使用できるというわけではありません。局所刺激が発生しやすいなどの理由から使用が制限されているものもありますので、詳しくは各薬剤の添付文書を参照下さい。

ここまで、部位、年齢、皮膚疾患によって経皮吸収性が変わることについて説明してきました。しかし、その他にも外用剤の主薬の特性や塗る時期(タイミング)などによって経皮吸収性が変わります。動物を用いた試験では皮膚バリア機能を低下させると、極性の問題を除き、脂溶性薬物よりも水溶性薬物では経皮吸収性が増加しやすい傾向であることが報告されています。これは、脂溶性薬物よりも水溶性薬物のほうが皮膚バリア機能によって経皮吸収性が抑えられているためです16)。つまり、皮膚バリア機能の影響を受けやすい主薬ほど、病態によって皮膚バリア機能が低下した場合、その経皮吸収性も大きく変化することが予想されます。

また、角質層の水和も経皮吸収に影響を与えます。角質層が水和すると薬物の経皮吸収性が増加することが報告されており17)、角質層に水分が十分に含まれている入浴後に外用剤を塗ると、主薬の経皮吸収は高まると考えられます。つまり、外用剤を塗る時期(タイミング)も経皮吸収性に影響を与えます。

*水和を本コンテンツでは角質層が水分を吸収することと定義します。

引用文献:
  1. Tsai JC, et al., J. Pharm. Sci., 90, 1242-54, 2001
  2. Wurster DE, et al., J. Pharm. Sci., 50, 288-93, 1961

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