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ぬり薬の蘊蓄 vol.3 皮膚の状態と経皮吸収性について:年齢による違い


小児の経皮吸収性

成人と比較して、小児の角質細胞は小さくて角質層の厚さも薄いなどの理由から、小児の経皮吸収性は一般的に成人よりも高いと考えられます。そのため、日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドライン(2009年)6)でも小児に適用するステロイドのランクは低く設定されています(参考)。

参考: 日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドライン(2009年)(一部抜粋)

乳幼児・小児:原則として、皮疹の重症度が重症あるいは中等症では、表1に示したよりも1ランク低いステロイド外用薬を使用する。ただし、効果が得られない場合は十分な管理下で高いランクのステロイド外用薬を使用する。

表1:皮疹の重症度とステロイド外用薬の選択

皮疹の重症度 外用薬の選択
重症 高度の腫脹/浮腫/浸潤ないし苔癬化を伴う紅斑、丘疹の多発、高度の鱗屑、痂皮の付着、小水疱、びらん、多数の掻破痕、痒疹結節などを主体とする 必要かつ十分な効果を有するベリーストロングないしストロングクラスのステロイド外用薬を第一選択とする。痒疹結節でベリーストロングクラスでも十分な効果が得られない場合は、その部位に限定してストロンゲストクラスを選択して使用することもある
中等症 中等度までの紅斑、鱗屑、少数の丘疹、掻破痕などを主体とする ストロングないしミディアムクラスのステロイド外用薬を第一選択とする
軽症 乾燥および軽度の紅斑、鱗屑などを主体とする ミディアムクラス以下のステロイド外用薬を第一選択とする
軽微 炎症症状に乏しく乾燥症状主体 ステロイドを含まない外用薬を選択する
引用文献:
  1. 日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドライン作成委員会, 日皮会誌, 119,1515-34,2009

高齢者の経皮吸収性

表2に示すように、非ステロイド系消炎鎮痛剤であるジクロフェナクナトリウムゲル軟膏では高齢者のAUCが成人の約5倍になっており、経皮吸収率が高いことが示されています7)

表2:ジクロフェナクナトリウムゲル軟膏塗布後の薬物動態7)

投与量 被験者
(被験者数)
t1/2
AUC
算出
例数*
薬物動態パラメータ
製剤(有効成分) Cmax
(ng/mL)
Tmax
(hr)
t1/2
(hr)
AUCO-∞
(ng・hr/mL)
2.5g(25mg) 成人(10) 4 1.3±1.1 9.2±2.9 4.8±3.0 13.7±10.2
5g(50mg) 成人(7) 3 1.6±0.9 12.6±2.5 6.6±1.6 24.1±10.6
7.5g(75mg) 成人(7) 4 1.1±0.6 14.6±6.2 8.5±5.8 20.0±6.6
7.5g(75mg) 高齢者(7) 4 2.4±1.5 22.6±7.4 39.0±24.8 108.1±58.2
ジクロフェナクナトリウム錠(25mg) 成人(10) 10 339.8±129.2 1.6±0.7 2.7±1.1 634.7±178.1

mean ± S.D.

*:血漿中濃度対数値-時間曲線の消失相の直線部分より、消失速度定数Kelを求めることができ、t1/2およびAUC0-∞が算出可能であった例数

しかし、一般的には高齢者のほうが経皮吸収性が低くなる場合が多いようです。図3に各種薬物を20~40代と60~80代の健康人の皮膚に適用したときの経皮吸収性を示します8)

図3:年齢と経皮吸収性の関係
記事/インライン画像
経皮吸収性

テストステロンやエストラジオールでは20~40代と60~80代の人で経皮吸収性に大きな差はありませんが、ヒドロコルチゾン、安息香酸、アセチルサリチル酸、カフェインでは60~80代で経皮吸収性が減少しました。これは、加齢にともない皮膚表面の皮脂や角層水分量が低下することが原因の1つとして考えられます。特に脂溶性が低い(オクタノール/水分配係数LogP*が低い)薬物で経皮吸収性が減少する傾向があり(表3)、角層水分量の減少が影響するものと考えられます。その他、加齢にともなって角質層の厚さは変化せず9)、角質細胞が大きくなる10, 11)という報告もあり、主薬の主な経皮吸収経路である細胞間隙が狭くなるために、高齢者では経皮吸収性が低下する可能性もあります。

表3:薬物とLogPの関係

薬物(LogP)
テストステロン(3.32) エストラジオール(4.01) ヒドロコルチゾン(1.61)
安息香酸(1.87) アセチルサリチル酸(1.19) カフェイン(-0.07)

*オクタノール/水分計数LogP:油水分配係数とも呼ばれます。オクタノール(油相)と水(水相)を入れたフラスコ中に薬物を添加後、振とうし、それぞれの相の薬物濃度から以下の式で算出します。
LogP=Log10(油相中濃度/水相中濃度)
油水分配係数が高いほど油相に溶解しやすい(脂溶性が高い)ことを示します。例えば、油水分配係数が3の場合は、油相の濃度が水相の濃度の1000倍となります。

引用文献:
  1. ボルタレンゲル1%インタビューフォーム
  2. Roskos KV, et al., J. Pharmacokinet. Biopharm., 17, 617-30, 1989
  3. Marks R, Br. J. Dermatol., 104, 627-33, 1981
  4. Grove GL, et al., J. Soc. Cosmet. Chem., 32, 15-26, 1981
  5. Plewig G, J. Invest. Dermatol., 54, 19-23, 1970

その他の注意点

経皮吸収性以外に小児に外用剤を適用する場合の注意点として、成人と比較して代謝能が異なること、体表面積に対する体重の割合(体重/体表面積)が小さいことなどがあります。加えて、小児では成人と比較して循環血液量が少ないため、例えば、片腕全体(小児、成人とも体表面積の約10%)に同じように外用剤を塗布しても、血液(血漿)中の主薬濃度が高くなることが考えられます。

高齢者で注意すべき点は、代謝能や排泄能が低下している可能性が高いことです。例えば、活性型ビタミンD3外用剤は主に腎臓から体外に排泄されますが、腎機能が低下すると容易に体内から排泄されず、高カルシウム血症などの副作用の発現につながります。

外用剤の服薬指導を行う上で、年齢による経皮吸収性の違いに加え、適用面積に対する体の大きさや体内に移行した後の薬物動態が重要です。このような点に留意することが副作用の軽減につながります。

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