このコンテンツは会員限定です。
マルホ会員に登録すると会員限定コンテンツをご覧いただけます。
生駒 晃彦
痒みは、アトピー性皮膚炎(AD)や皮脂欠乏症といった、身近な皮膚疾患でよくみられる症状です。実際、AD患者さんを対象としたインターネット調査では一番困っている症状として「痒み」が最も多い回答でした。現在、痒みの評価方法は、VASなどの自己評価方法が用いられていますが、睡眠中は評価できませんし、痒みの程度や治療効果を正確に把握するのが難しいため、より客観的な指標が望まれてきました。ご紹介する“Itch Tracker”はApple Watch用のアプリで、アプリをインストールしたApple Watchを腕に着けたまま眠るだけで、睡眠中の掻き動作を計測し痒みを「見える化」します。本アプリの活用により、患者さんや医療者が痒みの程度を簡便かつ客観的に知ることができるため、治療アドヒアランスの向上や、患者さんと医療者との円滑なコミュニケーションの促進が期待できます。既存の診療に上手く組み入れて頂き、先生方・患者さん、双方にお役立て頂けますと幸いです。
室田 浩之 先生
痒みは皮表に接する危機から逃れるための感覚です。それに引続く掻破行動は皮表に付着する物質の排除に役立つのです。さらなる脅威への暴露に備えるため、掻破の刺激を受けた表皮はdanger signalを介して個体が危険に晒されていることを免疫系に伝達します。それに伴い、遊走してきたTh2細胞に由来するIL-31やIL-4は神経に直接作用し痒みを誘発するのです。さらに患者の背景には痒み過敏があり、温熱、発汗、衣類による摩擦などで痒みが悪化します。この痒み過敏のメカニズムにドライスキンや炎症に伴う起痒物質、神経の形態変化、皮膚内分泌機能異常などが関わります。プロトピック軟膏は抗炎症作用、肥満細胞脱顆粒抑制、バリア機能の回復などを通して痒みを抑制します。本講では痒みのメカニズムに関する最近の話題とプロトピック軟膏の鎮痒作用について解説いたします。