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3.帯状疱疹の治療


    監修:
    • まりこの皮フ科 院長/東京慈恵会医科大学皮膚科 客員教授 本田 まりこ 先生

    帯状疱疹治療の基本となる抗ヘルペスウイルス薬について解説します。

    抗ヘルペスウイルス薬

    帯状疱疹は、多くの場合は無治療でも3週間程度で自然治癒しますが、症例によって経過や症状は異なり、なかには重症化して重篤な合併症がみられたり、皮疹消褪後も帯状疱疹後神経痛(PHN)として疼痛が残ることがあります。したがって、重症化や後遺症のリスクを低下させるためにも、できるだけ早期に抗ヘルペスウイルス薬を投与することが重要です。
    早期治療は、症状の進行抑制や痛みの軽減など、患者さんの負担軽減にも繋がります。

    抗ヘルペスウイルス薬

    (アメナメビル、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル)

    • 重症化の抑制
    • 病悩期間の短縮
    • 帯状疱疹関連痛の早期軽減
    文献1)より作図

    現在、臨床で使用されている抗ヘルペスウイルス薬は、作用機序により2種類に分けられます。一つは核酸と競合してウイルスDNA鎖に取り込まれることでウイルスDNAの複製を阻害する「核酸類似体」、もう一つはウイルスDNA複製に必須のヘリカーゼ・プライマーゼ複合体の酵素活性を阻害することで二本鎖DNAの開裂およびRNAプライマーの合成を抑制する「ヘリカーゼ・プライマーゼ複合体阻害剤」です()。

    図:抗ヘルペスウイルス薬の作用機序

    核酸類似体
    <アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル>
    記事/インライン画像
    核酸類似体

    核酸類似体は核酸と競合して合成中のウイルスDNA鎖に取り込まれることで、ウイルスのDNA複製を阻害します。

    ヘリカーゼ・プライマーゼ複合体阻害剤(非核酸類似体)
    <アメナメビル>
    記事/インライン画像
    ヘリカーゼ・プライマーゼ複合体阻害剤(非核酸類似体)

    ヘリカーゼ・プライマーゼ複合体阻害剤は、DNA複製の初期段階に関与するヘリカーゼ・プライマーゼ複合体という酵素のはたらきを阻害することにより、二本鎖DNAの開裂およびRNAプライマーの合成を阻害します。

    抗ヘルペスウイルス薬による治療のポイント

    タイミング
    • 皮疹出現後3日(72時間)以内が最も適した投与時期である。
    • 皮疹出現後5日以内に投与を開始することが望ましいとされているが、下記の症例では皮疹出現後5日を過ぎていても投与を検討すべきである。
      • ウイルス増殖が続いている(皮疹の新生が続いている)
      • 皮膚以外の合併症がある
      • PHN発症リスクが高い(50歳以上、皮膚病変が重篤で広範囲、帯状疱疹発症初期に強い痛みがある、など)
    投与期間
    • 原則として7日間継続投与する。ただし、重症例や免疫機能低下例では延長も検討する※1
    • 抗ヘルペスウイルス薬はウイルスの増殖を抑制する薬剤であるため、効果発現までに2~3日を要する。
    投与量
    • 各薬剤の用法・用量に従って投与する。
    • 核酸類似体の抗ヘルペスウイルス薬で治療する場合、腎機能低下例や高齢者(70歳以上)では腎機能※2に応じて減量投与を考慮する。
    合併症
    • 帯状疱疹の合併症には、中枢神経系、血管系、末梢神経系、眼科系、耳鼻科系のものがある()。
    • 合併症をきたした場合は、帯状疱疹治療と並行して、他科と連携して合併症の治療も行う。
    • ※1 保険上は原則7日間継続投与が認められている。
    • ※2 帯状疱疹治療に用いる抗ヘルペスウイルス薬の種類によっては、腎機能の程度によって減量投与する必要がある。そのため、これらの薬剤を腎機能障害がある患者や腎機能が低下している高齢者に使用する場合は、腎機能評価[クレアチニン・クリアランス(CLCr)]が必要になる場合がある。
    表:帯状疱疹の合併症2)、3)
    中枢神経系 脳炎、脳髄膜炎、脊髄炎
    血管系 脳血管障害
    末梢神経系 運動神経麻痺、PHN
    眼科系 眼瞼結膜炎、角膜炎、ぶどう膜炎、網膜炎
    耳鼻科系 耳鳴、めまい、顔面神経麻痺
    文献2)、3)より改変

    入院加療を考慮すべき症例

    帯状疱疹は高齢者に多くみられ、また、免疫機能低下によって発症することから、以下の症例では入院加療の検討が必要です。

    • 免疫力の低下を伴う基礎疾患がある
    • PHNの発症リスクが高い
    • 合併症として運動神経麻痺がある(ラムゼイ・ハント症候群、仙骨神経第3、4領域の帯状疱疹に伴う尿閉 など)
    • 三叉神経第1領域の帯状疱疹

    など

    1. 古賀 文二 ほか.:MB Derma, 255 : 39-43(2017)
    2. 新村 眞人 監修, 本田 まりこ 総編集:帯状疱疹・水痘 予防時代の診療戦略, Medical Tribune, :100-115(2016)
    3. 渡邉 大輔.:医事新報, 4672, 27-31(2013)

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