メインコンテンツに移動

皮膚外用薬 レシピの特徴 Fishbone 特性要因図:④冷却条件


Fishbone 特性要因図の④冷却条件について紹介します。

Fishbone 特性要因図
記事/インライン画像
④冷却条件

冷却条件には、減圧、温度、撹拌する際のパドル回転数、および時間があります。冷却は、急冷する方法と徐冷する方法があります。どちらの製法を採用するかは製剤の処方や特性により異なります。撹拌速度は基剤の粘度に影響するため、冷却中も十分な速度で撹拌を続けます。一般的には、オリブ油などの脂肪酸含有量が多い基剤は撹拌速度の影響が大きいといわれています。

ワセリン軟膏のブリーディング~冷却方法・撹拌停止温度による影響~

ワセリン(白色ワセリン)を主な基剤とする、いわゆるワセリン軟膏では、撹拌停止温度により3次元網目構造の状態が変わり、分離や硬さおよび放出性に影響を及ぼすことが分かっています。
液状油である脂肪酸エステルを10%配合した65℃のワセリン軟膏を冷却した後、ある一定の温度で撹拌を停止させた場合のブリーディング状況を図5に示します。冷却方法を問わず、撹拌停止温度を25℃および30℃で製造した製剤は、35℃、40℃、50℃、65℃で製造した製剤よりも分離の程度が大きいことが分かりました。また、撹拌停止温度を50℃および65℃で製造した製剤は、徐冷で製造する方が急冷で製造するよりも分離の程度が大きいことが分かりました7)

図5 撹拌停止温度がワセリン軟膏のブリーディングに及ぼす影響(出典7より一部改変および作図)

記事/インライン画像
図5 撹拌停止温度がワセリン軟膏のブリーディングに及ぼす影響(出典7より一部改変および作図)
記事/インライン画像
図5 撹拌停止温度がワセリン軟膏のブリーディングに及ぼす影響(出典7より一部改変および作図)

〈 評価方法 〉
製剤の撹拌を65℃から開始し、急冷(a)または徐冷(b)し、50、40、35、30、25℃で撹拌を停止した。バイアル瓶に各製剤を約5g充填し、バイアル瓶下部に溜まった分離液の高さ(mm)を測定した。その後、25℃/60%RH条件下でサンプルを保管し、1日後に分離の程度を同様の方法で確認した(n=3)。

W/Oクリームの硬さ ~冷却時間による影響~

W/Oクリームにおいて、冷却時間の違いが物性に与える影響を検討しました。表4に示す通り、冷却時間が短いほど、製剤が硬い結果となりました8)

表4 冷却時間がW/Oクリームの硬さに及ぼす影響(出典8より一部改変)

減圧度(mmHG) 600 600 600
冷却時間(分) 8 25 80
針入度(X10-1mm) 304.0 310.8 340.7

〈 評価方法 〉
ホモミクサーを6500回転/分に設定し、60℃の乳化温度にて、試料(500gスケール)を20分間撹拌した。その後、8、25、80分で冷却を停止し、針入度計で各試料の硬さを計測した。

※針入度は、数値が高いほど柔らかいことを示している。

針入度計
記事/インライン画像
針入度計

④冷却条件<まとめ>

このように、冷却方法や撹拌停止温度、または冷却時間の違いによっても製剤の性質(ブリーディングや硬さ)に影響がでることが分かります。

おわりに

Fishbone 特性要因図にある①基剤、②添加方法、③撹拌条件、④冷却条件が製剤品質や特性に大きく影響することを事例を交えて紹介してきました。全体を通して、1つの皮膚外用薬が様々なプロセスを経て完成していること、また全く同じ特性の製剤を作るにはFishbone 特性要因図に示した条件を細部に亘り合わせることが必要であり、同一成分であってもつくり方(レシピ)によっては異なる製剤品質や特性になり得ること、併せて皮膚外用薬における基剤選択の重要性への理解を深めていただければ幸いです。

Fishbone 特性要因図
記事/インライン画像
Fishbone 特性要因図
出典:
  1. 社内資料 ワセリン軟膏のブリーディングに及ぼす製造条件の影響
  2. 社内資料 W/Oクリームの硬さに及ぼす製造条件の影響

お問い合わせ

お問い合わせの内容ごとに
専用の窓口を設けております。

各種お問い合わせ

Dermado デルマド 皮膚科学領域のお役立ち会員サイト

医学賞 マルホ研究賞 | Master of Dermatology(Maruho)

マルホLink

Web会員サービス

ページトップへ